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７

「宮森。……大切な話があるんだ」

　花村咲はあらたまって実を見るとそう言った。

「その話はもう終わっただろ？」

　実は言う。

「違う。その話じゃなくて、今度のはまた、別の、……いや、別じゃないんだけど、違う話」と少し恥ずかしそうにしながら咲は言う。

「別じゃない違う話ってなに？」実は言う。（実はそろそろ家に帰りたくて仕方がなくなっていた）

「えっと、……それは、その……」咲は言う。

　そんな風に言葉を言いよどんでいる咲を見て、「俺、そろそろ帰るよ。相談には乗ったしもういいだろ？」と言って、実はカバンを持って、自分の席から立ち上がろうとした。

　すると、「待って！！」と予想以上に大きい声で咲が実のことを止めた。

　咲は声だけではなくて、その手を伸ばして、実の学生服の端っこを手でつかんで、実をどこにも行かせないようにしていた。

　咲はひどく真剣な表情をしている。

　そんな咲を見て、「……わかったよ。そんなに大きな声出さなくてもいいだろ」と言って実は自分の席に再び座った。

「……ごめん」咲は小さな声で言った。

「いや、別にいいけどさ」実は言う。

　それから、二人は少しの間、沈黙した。

　実は咲が黙っている間、窓の外に咲く満開の桜の姿をじっと見ていた。……それから少しして、ようやく咲が再びその口を開いた。

「……宮森。私」

　咲はじっと実の顔を見つめる。

　咲の目はなんだか少しだけ潤んでいるように見えた。

　……花村。泣いている？

　そんな花村の顔を見て、実は少し（いや、かなり）動揺した。