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エスターシェンの誤算と策謀

「………」

 エスターシェン国王アルベルト=クロウ=エスターシェンは頭を抱えていた。

 この世界にダンジョンという未知の迷宮が突如として出現し、どうしたものかと四方八方手を尽くして調査を行い、その解決策として古の禁術である異世界召喚を独断で行った。



 その結果、無事に勇者・聖女が各3名ずつ召喚されたのは良かったのだが…彼らは非常に横柄で傍若無人、我儘放題という問題だらけの勇者・聖女だったのだ。



 それでも何とか使命を果たして貰おうと、とにかく訓練カリキュラムを組んだが、当初彼らの誰一人としてまともに訓練を受けようとしなかった。



 そんな時、彼らがどうしても五月蝿いから彼らでも何とか対処出来るだろうと思われたダンジョンを見繕い探索をさせたが、結果は惨憺たるものであった。



 その直後彼らは一様に落ち込んでいたが、逸早く立ち上がり奮起したのは勇者佐藤誠、次いで聖女松尾朋子だった。

 この二人は心を入れ替え、それまでとは打って変わって訓練に励み着実に力を付けていった。

 そして改めてダンジョン探索をさせた所、見事に成果を上げた。



 そこで自分たちは、この機に創造神に勇者・聖女の有用性を理解して貰う事にし、創造神の拠点ミナティリアに佐藤誠と松尾朋子を派遣したのだ。

 


 創造神は勇者・聖女の存在を快く思っていない事は事前に把握していたので、かねてより彼らの存在意義を認めて貰うべく機を見ていたのだ。

 創造神に勇者・聖女の有用性を認めて貰えれば、その後の召喚儀式がやり易くなるだろう、という見込みだったのだが…



 実際には創造神と謁見は出来たものの、どうやら彼らと創造神は元の世界で顔見知りだったらしい。

 だが、何を思ったか誠も朋子も創造神が顔見知りだと認識するなり横柄な態度を取ったらしい。



 その為創造神と傍らに控えていた公爵・侯爵令嬢の怒りを買ってしまった。既に召喚された者たちに関しては関与しないが、これ以上勇者・聖女は不要だと言い渡されたという。



 ここに来て、自分たちの計画が大いに狂ってしまった。

 創造神に勇者・聖女の有用性を認めさせた後、更なる召喚儀式を行い戦力を増やす心積もりだったのだ。

 そしてそれを前提に外交を推し進めており、既にサラマンドロスには色好い返事を受け取っていたというのに。



 “使えない奴らめ……”

 思わず愚痴が溢れそうになるアルベルト国王。

 “いずれにせよ、計画を練り直す他はあるまい。”

 改めてのサラマンドロス国王との会談は億劫ではあるが、こうなってしまっては仕方無い。



 “しかし…奴らと創造神は顔見知りなのか…”

 ふとそう思った。

 “サトウとマツオが顔見知りならば、他の奴らはどうなんだ?”

 アルベルトはこの事が思わぬ突破口になるかも知れない、という予感がした。


 

 “そもそもサトウとマツオは何故創造神に横柄な態度を取ったんだ?”

 ふとそう疑問が浮かんだ。

 誠と朋子に同行した部下の話しでは、最初はきちんと礼節を持って謁見に臨んだ。しかし、顔見知りだと分かった途端に創造神に向かい罵詈雑言の数々を投げつけ、(あまつさ)え分不相応な要求を次々に突きつけたという。



 ここから考えうるに、元の世界において創造神と派遣した二人は折り合いが悪かったのではないだろうか?そう考えれば一通り辻褄は合う。

 “要するに人選が悪かったのか。”

 原因が分かれば何という事はなかった。



 “ならば、他の奴らと創造神の関係はどうだろうか?”

 今回、召喚された残り4人の中に創造神と懇意な人物がいればいいが…どうだろうか?

 可能性は無くは無いが、余り期待しない方が良さそうだ。

 “いずれにせよ調査しなければな。”



 それと平行して改めて召喚儀式を執り行う準備と、念の為彼らの他に召喚者がいないかの調査も行うべきだろう。その中に創造神と懇意にしていた者がいるかも知れない。



 “フフフ、段々と光明が見えてきたな。”

 エスターシェン国王アルベルトは僅かに手応えを感じ、黒い笑みを浮かべる。






 

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