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勇者・聖女が会いに来た!

「…はい?」

 私はこの世界に来た早々、目が点になってしまった。

「あの…、女王様?今、何とおっしゃいました?」

 私はオズオズと聞き返す。

「ですから…」

 ミナティリア王国のサフィニア=アルヴィス=ミナティリア女王陛下はニッコリと微笑まれ、信じられない事を私に告げる。

「エスターシェンにて召喚された勇者、マコト・サトウ様と聖女、トモコ・マツオ様がミナティ様に会いに来られるそうです。」

「…何で?」

 私は心底意味が分からず、天を仰ぐ。




 女王様の話しによると、エスターシェンで召喚された勇者・聖女は各三名ずつ、計六名が召喚されたらしい。そして、その六名は何れも高飛車な態度で真面目に訓練を受けず、ただ我儘放題だという事は聞いていたが…

 しかし数ヶ月前にその六人をダンジョン探索に派遣した所、案の定ものの役に立たず六人の鼻っ柱は見事に圧し折られたらしい。




 そこで、このままではいけない!と一念発起したのが勇者の佐藤誠と聖女の松尾朋子だった。この二人は完璧に心を入れ替え、例のダンジョン探索以来真剣に訓練を重ねてこの度に改めてダンジョン探索に赴き、見事に成果を上げた、と。

 そこでエスターシェン国王のアルベルト=クロウ=エスターシェンは、この機に二人を私に会わせ勇者・聖女の有用性を認めさせようという事らしい。




「はあ…」

 何ともかんともな理由に思わず溜め息が出る。

「別に私に許可を貰わなくたって、好きにすればいいのに…」

 私はポツリと呟く。

 正直、今でも勇者・聖女は必要無いとは思うよ?けどさ、もう召喚儀式をやっちゃって勇者も聖女も召喚されちゃったんでしょう?召喚してしまったのなら最後まで責任持って、自分らで面倒見なよ?

 私はまた一つ溜め息を吐く。

 


 それにしても…サトウ・マコトにマツオ・トモコ、ねぇ…

 私はこの名前も二人に会うのが憂鬱になる理由の一つだったりする。 

 どちらもありふれた名前ではあるから、同姓同名の他人という可能性も無きにしも…ではあるけど。

 けど、これまでこの世界で出会った転生者たちは皆、元の世界で懇意にしていた人たちばかりだった。なので勇者・聖女として召喚された人たちも、私と接点があった人たちだと思っていた方がいいと思う。

 それを思うとどうしても溜め息が出てしまう。



 そんな事を思いつつ迎えた今日。遂にエスターシェンで召喚された勇者・聖女が私に会いに来る。

「はあ…」

 私は憂鬱な気分で、勇者・聖女の到着を待っている。

「美奈子、大丈夫?」

 ロザリーちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

「あんまり大丈夫じゃない…」

 私が不貞腐れ気味に言うと

「まあ、気持ちは分かるけどね。」

 シンシアちゃんは苦笑いでそう言う。



 この二人は、私がエスターシェンで召喚された勇者・聖女と会う事を耳にしその名を聞いたら同席を申し出てくれたのだ。非常に有り難い。

 というのも、ロザリーちゃんとシンシアちゃんは元の世界での私の最近の事情を知っている。それを言うならソニア様も該当するのだが、今日は家の用事でどうしても都合がつかず今回は断念せざるを得ない!と、非常に悔しげに言っていた。

 という訳で、現在王都は総合神殿にて勇者・聖女の到着を待っているのだ。




「ミナティ様。エスターシェンより勇者様と聖女様がお越しになりました。」

 クレメンティアが勇者と聖女を連れて、私とロザリーちゃん、シンシアちゃんが待つ部屋に入って来た。

「…ありがとう、クレメンティア。」

 そう答えた直後、この場に緊張が走る。いよいよご対面だ…



 

「お初にお目にかかります、創造神様。」

「創造神様に於かれては、ご機嫌麗しく。」

 勇者と聖女は恭しく跪き、頭を垂れ挨拶を述べる。

「………」

 しかし私は反応出来なかった。何故なら…

 “やっぱり……。何でこいつらが勇者に聖女なのよ!?”

 私は愕然として二人を見つめる。

 “美奈子。”

 “美奈子ちゃん。”

 ロザリーちゃんとシンシアちゃんは心配げに私の肩に触れる。

 私はそっと溜め息を吐く。

 この勇者と聖女。かつて私をイビってくれた憎きイジメの主犯たちだった。




 

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