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ダンジョン探索を終えて

「良くやったな、お前たち。見直したぞ!」

 王宮に戻り、誠と朋子はマルティーヌにそう告げられた。

「ありがとうございます。」

「うむ。前回とは雲泥の差だ。自信を持って良いぞ。」

「はい。」

 二人は嬉しそうに笑う。

 二人は前回のエム・カズミ遺跡での失態から一念発起し、必死に訓練を受けて来た。その努力が目に見える形で報われた瞬間だった。

「しかし。」

 マルティーヌは改まって真剣な表情になると

「お前たちはまだまだ未熟だ。これからも慢心せず精進しろよ。」

「はい!」

 二人も真剣な表情で返事を返す。




「え?」

 ダンジョン探索の成果報告の為、国王に謁見した二人は思わず聞き返す。

「あの、陛下?今、何とおっしゃいましたか?」

 誠と朋子はポカンとした表情でエスターシェン国王アルベルトを見つめる。

「うむ。そなたたち二人にはミナティリア王国に赴き、創造神に挨拶してきて欲しいのだ。」

「……」

 誠と朋子は何とも言えない表情になる。

 国王に目通りしダンジョン探索の労いを受けた後、いきなりミナティリアとかいう王国に行き創造神とやらに挨拶して来いとは…話しが突飛過ぎて頭がついていかない。

 



「…つまり、俺たちの召喚は創造神の意図したものでは無くこの国の独断で行ったものの為、俺たちが直接創造神に会って俺たちの存在意義を示して来い、と。」

 国王の説明を聞き誠は渋い表情で確認する。

「まあ、そういう事だ。どうか頼めないか…サトウ殿、マツオ殿。」

 誠と朋子は呆れ顔になる。自分たちがこの世界に呼ばれたのは、このエスターシェンという国が勝手にやった事で創造神の預かり知らぬ事だというのも驚きだが…そもそも創造神なんて存在に、そんなホイホイ会えるものなのか?というかこの世界、神という存在がやたらと身近過ぎるよな…国王の話しを聞きながら、こっそりそう思う誠と朋子だった。




 謁見時に色々問答した末、結局十日後にミナティリアに向け出発する事を承諾した誠と朋子。

「はあ〜、疲れた~!」

 朋子は王宮に用意されている勇者・聖女専用団欒室のソファにバフン!と倒れ込む。

「ううぅ〜、癒やされる〜!」

 このソファは肌触りが最高で絶妙な堅さだ。ここに座っているといつの間にか眠っている事がよくある。なので訓練や探索で疲れた後、このソファに飛び込むのがここ最近の朋子のお気に入りだったりする。

 しばらくそうして癒やされていると




「ま〜た、だらしなくソファに寝転んで!みっともないわね。」

 香織だ。

「いいじゃない。ダンジョン探索で疲れたんだもん。」

 朋子がそう返すと 

「ふん。どうせ大して役に立たなかったんでしょうに。大袈裟ね。」

 香織は鼻で嗤う。

「え〜!私、すっごく頑張ったんだけど?」

 正直、香織の相手は非常に面倒かつ億劫だが…だからと言って無視すると更に五月蝿い。

「ふ〜ん。まあ、いい気になっていられるのも今の内だけよ。私、すぐにあんたを追い抜いてやるから!」

 そう言って香織はスタスタと立ち去って行った。




「…何なの、あれ?」

 朋子は首を傾げる。別にいい気になっていたつもりは無いが…今回、ダンジョン探索に行けなかったのが悔しいのだろうか?

「まぁいっか!」

 今日は疲れた。ダンジョン探索の後に国王との謁見。そこで急遽告げられたミナティリア訪問。

「けど。あの分じゃ、私と誠がミナティリアへ創造神に挨拶しに行く事は知らないみたいね。」

 それを知っていればその事も僻んでいただろう。

「だったら、自分も訓練を真面目に頑張ればいいのに。」

 朋子はボソリと呟く。あの時以来香織も訓練を受けてはいるが、正直香織は訓練を真剣に受けているようには見えない。魔法や護身術の訓練の時も、この世界の教養を身に付ける時間の時も、何処か真剣味を感じないのだ。




 朋子でさえそう感じる程だ。自分たちの教官を努める騎士たちや魔術師たちは更にはっきり感じ取っているだろう。

 それが積もりに積もり、誠・朋子と香織の間に実力の差が開いたのは当然の帰結であった。

 そして、その評価が今回の選抜に影響を与えたのだろうに。しかし、香織はそれが気に入らないらしい。

 はっきり言って面倒臭い。が、とは言っても未だに落ち込んで蹲ったままの和美や明彦、哲郎よりは遥かにマシだが。




 何はともあれ、十日後には誠と自分、そして護衛騎士と共にミナティリアという国に行く事になる。

 それを知った時の香織たちの反応がウザいが、別の国に行けるという期待感もある。

 期待と不安を胸に抱きつつ、朋子はお気に入りのソファに寝そべってウトウトと微睡む。


 


 




 


 

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