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召喚された勇者・聖女の冒険開始!

「はぁ~、やっとかよ〜!」

「ようやく、私たちの輝かしい人生の開幕ですね!」

 今日は、いよいよ召喚された勇者・聖女たちがダンジョン(仮)に挑戦するのだ。



 エスターシェンの王や騎士たちはまだ早い!と散々止めたのだが…全く聞く耳を持たず、余りにもヤイヤイ煩いので渋々一度ダンジョン探索に同行させる事になったのだ。



 そして選ばれたダンジョン(仮)は、エスターシェン国内にある日突然出現した得体の知れない古代遺跡風のダンジョンである。

 ここは既にエスターシェンの王立騎士団によって調査を終えており、その時に余り危険な魔物が棲息していない事が確認されている。 

 調査を終えても定期的に安全確認の為に騎士団が中に入るのだ。それに今回勇者・聖女らを同行させる、という訳だ。

 勿論、この処置には召喚された勇者・聖女がどの程度の力を発揮するのかを見る目的もある。



 そのダンジョンの名はエ厶・カズミ遺跡。

「エム・カズミ遺跡?これはもう、私の為に存在すると言っても過言じゃないわよね?」

 と、聖女の一人中尾和美が大はしゃぎだ。

「あんた、馬鹿じゃないの?」

 呆れた声を出すのは、同じ聖女の平山香織。

「何、浮かれた声出してんのよ?ここはダンジョンなのよ?恐ろしい魔物がセーソクする危険な場所なの。そんな浮かれた気持ちでこのダンジョンに入って足を引っ張られたら迷惑だわ!」

 と、怒った顔で怒鳴るのは松尾朋子。

 …聖女たちは余り仲がよろしくないようである。



「オメーら、うるっせーぞ!!」

 聖女たちの横で顔を顰めるのは勇者の一人、清水明彦。

「そんなに騒ぐならテメーらは帰れ!!」

 と谷川哲郎も同意。

 そんな険悪な空気の中

「その辺にしろよ、皆。」

 と取り持つのは佐藤誠。彼はこの勇者・聖女たちのリーダーだと自負しており、自分がしっかりとこの勇者・聖女たちを纏めていかなければと気負っている。

「んだと、佐藤!」

「そうだ!この冒険にこいつらは必要無いだろう!」

 清水明彦と谷川哲郎は佐藤誠に食ってかかる。

「いい加減にしろ!俺たちはこれから力を合わせて、この世界に蔓延る邪悪と戦わなければならないんだぞ!今、ここで俺たちが争っている暇は無い!」

 真顔かつ何処か恍惚とした表情で決める佐藤誠。それにハッ!とする清水明彦と谷川哲郎。対する女子たちは何処か白けた表情だ。

「うっわ!ウッゼェ…」

「あいつ、何リーダー風吹かしてんの?」

「ヤダ〜、何か一人で盛り上がっちゃってる〜」


 この六人のやり取りを見て、騎士たちは深く深く溜め息を吐く。



「では参りますよ。」

 騎士たちの先導で、エム・カズミ遺跡に入って行く勇者・聖女たち。

「うわぁ~、真っ暗〜!」

「これじゃ、何にも見えな〜い!ねえ、明かりは無いの〜?」

 平山香織と松尾朋子がブーブー文句を垂れる。

「光魔法で周囲を照らす事は可能ですが…」 

 騎士の一人がそう告げると

「ならさっさとやりなさいよ!もう!気が利かないんだから!!」

 中尾和美が金切り声を出す。

「申し訳ありませんが、我々の中に光魔法が使える者がおりません。お手数ですが、勇者様聖女様にお願いする他ございません。」

 小隊副隊長のマルティーヌ=グレダが素っ気なく返す。

「そ、そうなの?だったら早く言いなさいよ!」

 そうグチグチ文句を言いながら光魔法を使おうとしたが…果たして“誰が”使うのかというところでまたも揉めだす六人。

 その間、騎士団は知らん顔でさっさと歩を進めていた。



「ここからが本番ですよ。気を引き締めて下さい。」

 隊長のシモン=ヴェールが如何にも怪しげな扉の前で厳かに告げる。

「………」

 いよいよ魔物と遭遇するのかと思うと緊張する。このダンジョンの魔物は然程強くないという。そんな所の魔物を倒したって自慢にならない!と大いに不満な六人だが、確かに最初から強い魔物とあたるのも不自然だろうと、ここは言う通りにしておく。

 ここの魔物が弱すぎて勇者・聖女の相手にならないと分かれば、自ずと自分たちに相応しい大物を見繕う筈なのだから。



「では、開けますよ。」

 シモンが重そうな扉を押し開け、中に入って行く。

「では、お気をつけて。」

 マルティーヌが無表情で勇者・聖女を促す。

「………」

 流石に緊張してきた。ここからだ。ここから、自分たちの華々しい人生が始まるのだと思うと、胸がドキドキする。

 そんな思いを抱いて、いざ潜入!



「何にも出てこないな。」

 清水明彦が拍子抜けしたように呟く。

「もしかして、私たちの神々しさに恐れをなして逃げちゃったとか?」

 お気楽にそう言うのは平山香織。

「え〜?そんなんあり?」

 中尾和美がボヤく。

「皆、気を抜くな!まだそうと決まった訳じゃない。」

 佐藤誠がそう窘める。

「え〜?でもさ〜。この遺跡に入ってから、どんだけ歩いたの?」

 膨れっ面で主張する中尾和美に佐藤誠は言葉に詰まる。確かに、この遺跡に入ってからかなり経つ。体感時間でもう、一時間近く経っているのではないだろうか?

 そんな事を考えた次の瞬間

「グゥァアアアーーー!!」

 突然、獣が唸るような音がした。

「!」

 気がつけば自分たちの周囲に狼のような獣が無数に取囲み、唸り声を上げていた。



 

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