気がつけば異世界人が召喚されていた!
「何か分かった?」
私はこの世界にやって来て早々、女神様たちに尋ねる。
何をって?そりゃ勿論、例のダンジョンらしき洞窟の事である。
「いえ。申し訳ございません。」
と頭を下げるのはリブラ。サラマンディアはあの後出現したダンジョン(仮)の調査に出向いて不在との事。
「ううん。ありがとう。皆、苦労かけてごめんね。」
私は何とも申し訳無い思いがしてそう言うと
「滅相もございません!」
と返された。
ん〜、でもさ。いきなりこんな状況になったのは私がしっかりこの世界の設定を定めなかったせいなんじゃないかな…?そう思うとね。何だか居たたまれないというか、申し訳無い気持ちが頭をもたげてくるんだよね。
「あの後、急にあちこちで見つかったんでしょ?」
私はそう確認を取ると、リブラの他に大地の女神テルフィラと後は初めましての女神様二柱が神妙な面持ちで頷く。
初めましての女神様は光の女神様で名前はルクシアナ。眩い金髪に金の瞳、白い肌は紛うことなき光の女神である。何だったら肌も白というより薄っすら金色に輝いて見える。
もう一柱の女神様は森の女神フォレスティアラ。淡い緑の髪は優しく波打っていて、瞳は深い緑。肌はいわゆる肌色。平均的な日本人が持つ色合いだ。
さて。光の女神様と森の女神様が来たのは、やはり今回のダンジョン(仮)騒動と関係あるんだろうなぁ〜と思っていたら案の定だった。
彼女たち曰く、ダンジョン(仮)はある時突如出現したのだそう。
その時感じた力は非常に禍々しく、悪意に満ちているように感じた、という事だ。
う〜む…
これは、やはり“悪意ある侵略者”の仕業だと思っていいんじゃないだろうか?
「まあ、これが“悪意ある侵略者”の仕業だったとして…一帯何がしたいんだろうね?」
私は首を傾げる。最初の異変が悪役令嬢で、その次がダンジョン?脈絡が無いにも程がある。
だって。方向性がまるで違うくない?悪役令嬢は恋愛物で、ダンジョンは冒険物。繫がりが全く見えないよ。
「いやぁ~、こうなってくるとマジで魔王やら勇者、聖女が湧いて出てきそうだわ…」
そう言いながら私は頭を抱える。しかもこの分だとどこかの国が異世界人の召喚をやらかし、出てくるのが下衆勇者や俗物聖女とかいうオチになりそうだ。
マジいらね〜!!
大体、この世界で勇者にしろ聖女にしろ出番はあるかね?
おおよその設定として勇者にしろ聖女にしろ、召喚の際、何らかの神にその力を授かって…というものだと思うが、この世界にはその神がゴロゴロいるのだ。
わざわざ勇者や聖女に頼らずとも、当の女神が動けばいいだけである。女神が不都合ならば女神予備軍の神官たちがいる。そして女神に何か不足があれば、私が何時でもどこでも幾らでも補填出来るのである。
百万歩譲って勇者はまだ存在する余地が無くはないが、聖女は完璧に無用の長物にしかなるまい。
とか何とか思っていたら、ルクシアナとフォレスティアラが何か言い辛そうに私を見つめている。
…え、まさか。…嘘だよね?
心の底からそう願う私。
「あの…ミナティ様。」
はい、何でしょう?
「先日、エスターシェンでとある儀式が行われました。」
…儀式?エスターシェンって…名前からしてエスターシャを信仰している国とか?
「はい。エスターシェンはここ最近のダンジョン騒動を憂い、古の禁術である異世界人を召喚する儀式を行ったのです。」
「………」
おいこら。何、勝手な真似してんだ!
「異世界人の召喚、って事は…勇者か聖女を召喚するつもりだったと考えていいのかな?で、それは成功したの?」
私の声は震えている。何だか、猛烈に嫌な予感がする。
「はい。儀式は成功し、男性と女性が各々数名召喚されたそうです。」
うわぁ~!
「しかし…」
女神様?何故そこで言い淀む?
「こう言っては何ですが…召喚されたどの方も、何と言いますか…勇者や聖女とはとても思えぬ振る舞いをなさる、と…」
「…具体的には?」
私は恐る恐る尋ねる。
「一言で申せば、傍若無人…ですわね。」
問われた女神様も口にしたくないご様子だ。
「………」
うわぁ~、下衆&俗物確定か?頭痛ぇ〜!
私はこれからの厄介事を考え、頭を抱えるのだった。