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アレはやっぱりアレだった!

 私とセーラちゃんは呆然と洞窟を見つめる。

 “ただの土の壁にいきなり洞窟が出来たって…”

 んな馬鹿な。洞窟って、何千年とか掛かって少しずつゆっくり出来るものだよね?

「…念の為に聞くけど…最後に土の壁を見てから洞窟が出来てる事に気付くまで、何日くらい掛かってる?」

 私は恐る恐る尋ねる。

「…一日。」

「………」

 有り得ない。絶対に、有り得ない!!

「…桃恵ちゃんを疑う訳じゃ無いけど…間違いない?」

「ええ、間違いないわ。だってこの道、私の日課の散策コースよ。」  

 そりゃ間違いないね、うん。

 この洞窟、道を歩いていたら気づかない訳が無い。この洞窟がある場所は道が丁度カーブになっていて、突如として目の前にドドン!と洞窟が目の前に出現するのだ。

 ましてや毎日見ていたのなら気づかない方が可怪しい。



「で、どうする?中、入ってみる?」

 セーラちゃんが尋ねる。私としては正直御免被りたい。が、そんな訳にもいかないと私の中の何かが訴えてくる。

「でも、危なくない?」

 私が及び腰でそう言うと

「え?洞窟探検だよ?ワクワクしない?」 

 セーラちゃん。貴女、意外に怖いもの知らずだね。正直私はこんな怪しさ満点の洞窟探検は遠慮したい。

「どうするにせよ一度お屋敷に戻って、装備と人数を揃えてからの方がいいんじゃない?」

 私がそう提案すると、セーラちゃんも頷いた。



 という訳で、一旦お屋敷に戻りお姉様たちに報告。

 で、再度洞窟に向かい中を探索するという話しになった時にお姉様たちから待ったがかかった。

 当然ながら危険が伴うという事で、セーラちゃんが同行するのを反対されたのである。 

 まあそうだよね。セーラちゃん、歴とした伯爵令嬢だし。そんなお方が普通洞窟探検なんぞに駆り出される筈など無いのだ。しかし…

「姉様。私も伯爵家の一員です。皆様のお役に立ちたいのです。」

 と懇願しているが、当然そんな事で絆されるお姉様たちでは無い。

 しかしセーラちゃんも粘りに粘って、絶対に護衛から離れない、探索する騎士たちの指示に絶対に従うという条件で難攻不落のお姉様たちから首尾よく許可をもぎ取っていた。



「いざ!洞窟探検に出発!!」

 セーラちゃん、滅茶苦茶張り切ってるなぁ。

 …そういえば桃恵ちゃんって、冒険物の漫画とか◯◯探検隊とか好きだったよな……



「足元にお気をつけ下さい。」

 護衛のサリーさんに注意を受けながら、慎重に先へ先へと進んで行く。

 しかし、魔法って便利だね。今、洞窟内を進んで行くのに松明じゃなく光魔法で、まるで昼間のように周囲が明るい。文明の利器、懐中電灯だって太刀打ち出来ないよ。 

「それにしても、結構進んだよね。」

 正直、私は暗くて狭い所は苦手なタイプだ。昔、悪戯でロッカーに閉じ込められた事があってさ。あの時は本当に怖かった。だから今でも苦手。

 こういう洞窟でもちょっと拒否感あるんだけど、今は我慢だ。

 私がへっぴり腰になっている他は特に問題も無く、洞窟探検はどんどん進んで行く。



 それからしばらく進んだ時、先導している騎士が

「下へ降りていく階段があるぞ。」

 と報告する声が聞こえた。

 はい?洞窟に階段ですか?

 もう、これは、ほぼ確定でしょうか…?

 いや、でも、まだ分からないよね…?



「何があるか分かりませんので、お二人とも私どもから決して離れないで下さい。」 

 やけに綺麗に整備された階段を降り、緊張した面持ちのサリーさんとフェリスさんに言われ、私とセーラちゃんは護衛二人の背中にピタリと付いてゆく。

 私は階段を降りてから少し息苦しく感じているが、セーラちゃんや他の皆は平気なんだろうか?

 それからしばらく歩いた時

「グルルル………」

 …何か、聞こえた…

 その次の瞬間

「来るぞ!!気をつけろ!!」

 騎士たちの鋭い声が響く。

 え?何が来るの!?

「セーラ様、ナミ様!こちらへ!!」

 サリーさんとフェリスさんの背に庇われ、二人は厳しい表情を浮かべ剣を抜く。

 その先には物凄い数の得体の知れない獣?が敵意と牙を剥き出しにしてこちらに迫って来ている。

 え?ここって、やっぱりダンジョンという奴だったのーーー!?



「え?え?」

 私とセーラちゃんは手を取り合って息を潜める。

「グオオオオーーー!!」

 何か獣の咆哮と騎士や護衛たちの剣戟の音が鋭く交錯する中、私は悔しかった。

 自分はこの世界では女神なのだ。しかも最高位の創造神。なのに、こんな場面で何一つ出来ないの?何の力にもなれないの?

 これじゃ、ただの役立たずだ!!

 獣の声も騎士たちの怒号も、剣戟の声も増々激しさを増すばかり。

 こちらの戦況は芳しくないようだ。戦闘音に引き寄せられ獣はどんどん増えているのに対し、こちらは疲労と負傷でどんどん戦力が削られて言っているようだ。このままではいずれジリ貧になって壊滅してしまう!



 そんな時、私は一柱の女神を思い浮かべた。

 この戦況を覆せるかも知れない女神。

「サラ、マン…ディア……」

 私は無意識に呟いていた。

「助けて、サラマンディア!」

 すると、奇跡は起きた。

「私を呼んだか、ミナティ様。」

 突然の眩い光と共に、武芸の女神サラマンディアが、部下と思われる女神を数柱を供に連れその姿を現した。

 


 

  



 





 

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