私たち、復学しました!
「いよいよ今日からね。」
美奈子との会合の後、ロザリー・シンシア・ハルモニア・アンジェラ・ソニア・カトレア・フローレ・マリーゼの八人は話し合い、全員一斉に復学する事で合意した。
自分たち断罪被害者の他にも自分たちの仲間がいるかも知れないという事で、なるべく早く復学しようと全員一致での合意である。
それと並行して別口で各々の伝手を使い探すという事にも合意を得た。
八人が一斉に復学というのも作為的では?という意見も上がったが、そこはどうとでも理由は付けられる。
という事で各家の両親の協力を得て晴れて本日、八人は復学する運びとなった。
「久しぶりね。」
ロザリーはポツリと呟く。
自分が“断罪”されてから一ヶ月程が経つが、断罪イベントは相も変わらず起こっているらしい。
「はあ…」
思わず溜め息が溢れる。約一ヶ月振りの登校という事で緊張しているのかも知れない。
しばらく校舎を眺め、意を決したように勢い良く、しかし優雅に校内へ足を進める。
「皆様、ようこそお戻り下さいました。」
学園長のレイシー=ブリュンは声を掛ける。
学園長室には、ロザリーたち八人が勢揃いしている。
「お話しは陛下より伺っております。」
レイシーはにこやかに告げる。
実は、美奈子から女王と学園長は全ての事情を知っているから、何かあったら洗いざらい話して大丈夫だと聞いていたので、早速マリーゼが伯母である女王に事情を話し、全面協力の確約をもぎ取って来た。
元より休学していた学生が復学したいという相談だ。女王や各両親にしたって拒む理由は皆無だ。
「皆様は創造神様の本来の世界であの方とお知り合いだった、と伺っております。」
「はい。」
代表してハルモニアが答える。
「要約すると、他にもあちらの世界から転生した方がいらっしゃる可能性があるので、探す為に私たちに協力して欲しい、と。」
レイシーは八人見回す。
「はい。このような事を学園長にお願いするのは無礼な事であるのは承知しております。しかし、事は美な…ミナティ様のお務めに関わることです。どうかご協力をお願い致します!」
ハルモニアを筆頭に頭を下げる。
「分かっておりますよ。そもそもこの一連の案件は私から陛下を通じて創造神様にご依頼申し上げた案件ですし。」
レイシーはニッコリ微笑う。
「ですので心配は御無用です。こちらも全力で協力致します。貴女方はまずは勉学に励まれますよう。」
「はい。ありがとうございます。」
「まあ!ロザリー様、シンシア様!」
「マリーゼ様!」
「ソニア様!もうお加減はよろしいのですか?」
「は…ハルモニア様…」
「アンジェラ様、カトレア様…良かった…」
「フローレ様!お帰りなさいませ!」
学園長室を出て教室に足を向けると、八人に気づいた学生たちが騒然となる。
驚いた顔の者、八人が戻って来た事を大喜びする者、嬉しさの余り泣き出す者など、反応は実に様々だ。何しろ、断罪被害を受けた学生の中で復学したのはこの八人が初めてなのだ。
「皆様、ごきげんよう。」
「お久しぶりですわ。」
沢山の学生に囲まれながら八人は少々困りつつも、とても嬉しい。
自分たちは謂れのない断罪を受け、その後屋敷に閉じ籠もり彼ら彼女らとは接していなかった。
けれど、戻って来たらこうして皆に歓迎されているのを受けて、八人は胸がじんわりと暖かくなるのだった。