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皆、仲間だった!

「私には、ソニア=スピレイとは別の人生の記憶があるのです。」

 ソニアが意を決して告白したその時、場は水を打ったように静まり返った。

「到底信じられる事ではございませんよね?ですが、紛れもない歴とした事実なのです。」

 ソニアは困ったような表情で告げる。

「それは、いわゆる前世の記憶です。前世で私はこの世界とは別の世界で生きておりました。」

「………」

 皆、微動だにせずソニアの話しに聞き入る。

「その時の私の名は岡島佐保。仕事は…」

 ソニアが続けようとすると

「え?佐保さん?」

 ロザリーが素っ頓狂な声を上げる。

「? ロザリー様?」

 ソニアは首を傾げる。

「佐保さん!佐保さんなの? 私!小島沙織!!」

「え?沙織…ちゃん?」

 ソニアはマジマジとロザリーの顔を見つめ

「本当に沙織ちゃんなの…?」

 と呟く。その声は心なしか震えていた。


   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「え?ちょっと、どういう事ですの?」

 アンジェラが怪訝な表情で問い掛ける。

「あ…えっと…」

 ロザリーが言い淀んでいると

「つまり、ソニア様もロザリー様も“あちらの世界”から転生してきた方だという事でしょう。」

 ハルモニアが至極冷静にアンジェラに答える。

「…私たち以外にもいたの?」

 アンジェラの発言に、今度はロザリー・シンシアが驚く。

「…え?ハルモニア様?」

 目をパチパチ瞬かせながらハルモニアとアンジェラを見つめる。

「貴女たちが思っている通りよ。」

 ハルモニアは苦笑を浮かべる。

「私とアンジェラも、あちらの世界から転生してきたの。」

「はあ。」

「因みに私は浅川葉月という名で、アンジェラは工藤真知子という名だったわ。」

「………」

 ロザリーとシンシアはポカンとなる。

「何だ、皆同じだったのね。」

 と嬉しそうに笑うフローレ。

「え?フローレ様も?」

「ええ。私は梅田弥生っていったのよ。」

「あらあら。じゃあ、私も自己紹介しなきゃね。」

「マリーゼ様?」

「うふふ。私の名は有本桜よ。」

「私が最後になってしまったわ。私は石崎智恵乃よ。」

 カトレアは悪戯っぽく名乗る。

 ロザリーとシンシアは絶句する。まさかたった一回の会合で、ここまで成果が出るとか思いもしなかった…

「で、貴女たちは?」

 ハルモニアに促され、慌てて前世の名を名乗るロザリーとシンシアだった。


   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「ところで佐保さん。断罪されるのが分かっていたって…」

 ロザリーがソニアに尋ねる。何故知っていたのかは自分たちだって知ってはいるが、これは必要な事だろう。

「ああ。それはね…」

「乙女ゲームにハマっていた?」

 アンジェラが茶化すように割って入って来る。

「ご明察。」

 お互い前世の記憶持ちである事が判明した後、このメンバーだけの時は貴族令嬢の仮面を外す事で合意した。なので、今は気安くタメ口を利きあって息抜きしている。前世の記憶を持っていると、貴族令嬢という立場は非常に窮屈なのだ。

「で、私はそのハマっていた乙女ゲームの悪役令嬢と同じ名前でしょ?その上ヒロインの名前も同じで、攻略対象も揃っている。これはネット小説でよく読んだゲーム世界に転生したんだ!って思ったわよ。」

 ソニアの言葉にロザリーとシンシアは顔を見合わせる。実際はこの世界は乙女ゲームの世界では無く、自分たちの友人である高木美奈子が小説として作り上げた世界だ。

 しかし、今それを証明出来ないので黙っている事にする。どうせ美奈子に会えば分かる事だ。

 と、いう事で…

「ねえ、皆。ちょっと確認したい事があるんだけど?」

 頃合いを見てロザリーが切り出す。

「この中で高木美奈子を知っている人は?」

 美奈子と別れた後、ロザリーとシンシアは一つの仮説を立てていた。

 即ちあっちの世界から転生してきた人は、前世で美奈子と何かしら接点があるのではないか、と。

 今現在は自分たち二例しかないが、だからと言って偶然とは言い切れない予感がするのだ。

 その根拠として、この世界は美奈子が作り上げた世界だという事が上げられる。どんな思惑で自分たちがこの世界に転生したのかは分からないが、彼女と接点がある方がこの世界と波長が合うとかいう理屈なのでは?と思うのだ。

 それは追々確認しようと思っていたのだが、思いもかけず一遍に六人も記憶持ちが見つかったので絶好の機会だと踏んだ。そして

「え?美奈子ちゃん…?」

 ハルモニアが呟く。 

「知っているの?」

 ロザリーは重ねて問う。

「ええ、知っているわ…」

「私も知っているよ。」

「私も…」

 結果、六人全員が美奈子を知っていて、尚且つ好印象を持っているという事が判明した。







 

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