フローレ&マリーゼとの会合
「という訳ですわ。」
ニコニコとマリーゼが締める。
「まあ。それからどうなったんですの?」
ロザリーが興味津々といった表情で身を乗り出す。
「そこからはまだ審議中ですわ。」
マリーゼはパチンと悪戯っぽくウインクする。
「まあ~、結果が楽しみですわね〜!」
本日はオルゴット邸にてロザリー・シンシア・フローレ・マリーゼが集まりお茶会を開いており、今はマリーゼが事の顚末を面白可笑しく話して聞かせている所だ。
現在四人とも断罪被害者である為、学園はお休み中だ。そこで四人は結託して各両親に気晴らしの為のお茶会を開きたいとおねだりした所、どの両親も快諾してくれた。しかも定期的にお茶会を開いて良いという、中々太っ腹な許可を首尾よくもぎ取る事に成功した。
今回は初会合という事で、当たり障りの無い近況報告からのスタートである。
各断罪イベントの経過から今、どうやって時間を過ごしているのか?という話しが主に交わされている。
その中でやはり一番大掛かりで興味深いのがマリーゼの一件である。何と言っても王宮が絡み、その場には女王も大魔法使いも重臣たちも馬鹿たちの両親も、更には女神様まで立ち会ったと言うのだから。因みに学園長は馬鹿たちがやらかした後始末の為、あの場には出席出来なかったが、判決が下される時には出席するらしい。
「それにしても…オルトラン侯爵令息って、何処まで阿呆ですの?」
フローレが呆れた表情で呟く。
王宮に拘束を受けて引き立てられるというだけでも異常事態だというのに、更に女王陛下の御前でそこまで横柄な態度を取れるとは…通常の神経では、とても考えられない。
「私の元婚約者も中々阿呆でしたけれど…。彼はあの阿呆たちを遥かに凌駕しますわね。」
フローレはしみじみと評する。
フローレ=カニンガム伯爵令嬢は、幼馴染であったヴィクター=ボールドウィン伯爵令息と婚約していた。しかし、ヴィクターは突然現れたカザリン=モートン子爵令嬢との真実の愛を貫き、意気揚々と婚約破棄&断罪イベントをやらかしたのだ。
その後の奴らの末路についてフローレは詳しく聞かされていないが、どうやら何処かの神殿送りになったらしい。そこで下働きをしながら神の教えを叩き込まれているという。
「そういえば、次のお茶会にはソニア様とハルモニア様も参加なさりたいそうよ。」
ふと思い出したようにマリーゼが告げる。
「どうかしら?」
「勿論構わないわ。けれど…大丈夫なのかしら?」
シンシアが心配そうに言う。
「ご本人が大丈夫だと仰っておられるから問題無いんじゃないかしら?もし当日になって不都合が生じたらご連絡下さるでしょうし。」
「それはそうね。」
シンシアは納得した。
「それに…もしかしたらソニア様もハルモニア様も誰かに思いっきり愚痴りたいのかも知れないしね。」
淑女たる者、人の陰口をたたくべからず。実際はそんな事は全く無いが、淑女の嗜みとしてそれは厳しく叩き込まれる。
しかし、淑女だって人間だ。常に冷静で穏やかではいられない。あくまで相手に気取られないよう、感情を抑えるという事を躾けられるのである。
なので、当然ながら何処かに捌け口が必要だ。そして大抵の場合、親しい者だけで集まるお茶会で発散させるのである。
つまり、ソニアもハルモニアも傷はまだまだ深いが、誰かに話して鬱憤を晴らしたいという事だろう。
「そういう事なら、他の方々にも頃合いを見てお誘いした方がいいかも知れないわね。」
この会合の本来の目的からは逸脱してしまうが、これはこれで必要な事ではないか、とロザリーもシンシアも了承する。
それに、想定していない令嬢が目的の人物である可能性だって充分あるのだ。ならばやらない手は無い。
取り敢えず、ロザリーとシンシアはいつ二人に前世の話しを切り出そうかとさりげなく、虎視眈々と機会を狙うのだった。