断罪イベントのその後~馬鹿男&ヒロインver.3ー1
「マリーゼ=オルゴット伯爵令嬢!今日をもって貴様との婚約を破棄する!!」
「!!」
その時、その場が凍り付いた。
午前中の授業を終え、皆が食堂で優雅にランチをしていたその時。突如として始まった断罪イベントに皆が驚き、発言者の方へ視線を向ける。
すると、優雅に食事をしていたマリーゼに向かって馬鹿男が一人の令嬢の腰を抱き、マリーゼの真向かいに仁王立ちしていた。
「あら、そうですの?」
しかしマリーゼはゆっくりとナイフとフォークを置き、馬鹿たちを見つめる。
「貴様!この状況が分かっているのか!?」
馬鹿男は顔を真っ赤にして怒鳴り上げる。
「勿論ですわ。ルーカス=オルトラン侯爵令息殿は私との婚約を破棄し、そちらのグロリア=シモンズ男爵令嬢と真実の愛で結ばれた、という事ですわね。」
淡々と告げるマリーゼに馬鹿男、ルーカスは鼻を鳴らす。
「ふん。分かっているではないか。ならば、貴様はグロリアへの罪滅ぼしに国外追放だ!」
この瞬間、水を打ったように静まり返っていた周囲が騒然となる。
「左様でございますか。ならば、まずは確認を取った後に対応を決めさせて頂きますわ。」
そう言ってマリーゼは静かに立ち上がる。
「貴様は何を言っている?」
ルーカスは首を捻る。
「では、ごきげんよう。」
マリーゼは一礼し、馬鹿たちには目もくれずその場を後にする。
馬鹿ップルは、ただ呆然としてマリーゼの背中を見送った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おい!一体何なんだ!?」
騒然とする食堂でルーカスとグロリアは怪訝な顔をする。こいつらは一体何を騒いでいるんだ?
最初は自分たちを祝福しているのかと思ったが、どうも様子がおかしい。感じる視線も好意的なものでは無く、非難・軽蔑…そういったものが含まれているように思う。
“本当に、一体何なんだ?”
訳が分からない状況にルーカスは苛立ち始める。
それからしばらく経って騎士団が食堂に押し入って来て、ルーカスとグロリアは拘束された。
「おい!離せ!グロリアに何をする!?」
馬鹿ルーカスは必死に可愛いグロリアを庇おうとするが、屈強な騎士団に叶う筈もなくルーカス自身も敢え無く拘束され、何処かへ引き立てられて行く。
「………」
二人は見窄らしい馬車に放り込まれると、馬車は勢いよく走り出す。
「………!」
激しく揺られ、あちこち身体をぶつけながら二人は不安に襲われ、懸命に身体を寄せ合う。
どれくらい馬車に揺られたか、ようやく目的地に着いたらしく馬車が止まった。
乗せられた時と同じように乱暴に降ろされた二人は、そこが何処なのかを認識した途端絶句する。
何故なら、そこは紛れもない王宮だった。
それから二人は質素な部屋に通された。
「ルーカス様…」
グロリアは不安そうにルーカスを見つめる。
「大丈夫。大丈夫だよ、グロリア。」
ルーカスは必死に可愛い恋人を力づける。
一体何が起こっているのかルーカスにも分からない。しかし…ルーカスにはある淡い期待があった。
“もしや、女王陛下はグロリアとの結婚を後押しして下さるのかも知れない。”
もしそうならば、何と素晴らしい事だ!
ルーカスは内心ほくそ笑んでいた。
それから数時間程待たされ、ようやく騎士が二人を呼びに来た。
“来た!”
不安そうなグロリアとは対象的にルーカスは一人ニヤついている。
そして通された謁見の間。そこには女王を始め、各重臣たち、ルーカスとグロリアの両親、学園での“友人たち”、大魔法使いフレデリカ=リッツ、何故か調停の女神リブラ。そして…
「マリーゼ…」
今日、ルーカスが婚約破棄と国外追放を言い渡したマリーゼ=オルゴットが揃っていた。