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シンシアちゃんとの語り合い2

「えっ、と…?美奈子、シンシア(の前世)と知り合いだったの?」

 一人置いてきぼりのロザリーちゃんは、状況がよく飲み込めないといった表情でソロソロと尋ねる。

「あ…」

 思わず二人の世界に入ってしまっていた私とシンシアちゃんは慌てて説明する。

「へぇ、そうだったんだ。」

 ロザリーちゃんは納得してくれた。



「という訳で、三人ともあっちの世界から来た異世界転生者って事が判明したのね。」

「…私は転生してないけどね。」

 ロザリーちゃんの発言を私は一部訂正する。

「まあまあ。でも、転生した二人が美奈子ちゃんと仲が良いって、凄い偶然ね。」

 シンシアちゃんはニコニコ顔で言う。…偶然?

「偶然にしては、何か出来過ぎな気がするけど?」

 私がそう言うと

「まだ二例だけだから何とも言えないけど…確かに引っ掛かるものはあるわよね。」

 ロザリーちゃんも同意見のようだ。

「だったら、数を当たってみたらどうかしら?」

 シンシアちゃんが提案する。

「数を当たってみる?」

 私とロザリーちゃんが首を傾げていると

「そう。断罪被害に遭った、私たちの知り合いの令嬢たちに。」

「でも…数が多すぎるよ〜!」

 ロザリーちゃんがボヤく。まあ気持ちは分かる。何と言っても断罪被害者は数百に及ぶらしいし、手当り次第にやっていたらどれだけ時間が掛かるやら。

「だったら、条件を見積もって絞り込めばいいじゃない。」

 相変わらずニコニコ顔のシンシアちゃん。

「? どういう事?」

「よく考えてみて。断罪被害に遭った令嬢の対応は大きく分けて二種類あったと思わない?」

「?」

「その場になって取り乱して半狂乱になった方と、冷静に対処した方。」

 何となくシンシアちゃんの言いたい事が分かって来た。

「私達のように前世の記憶がある方は、予め自分が断罪されるという事が分かっていた筈よ。まあ、この世界ではお決まりの卒業パーティーでは無く、いつ発生するか予測がつかないけれど。」

 言われてみれば確かにその通りだ。

「だったら、まずはどうにか回避するよう動く筈よね?それが無理ならなるべくその時に少しでも有利になるよう行動し、準備をする筈。」 

 私とロザリーちゃんは頷く。

「実際、私は可能な限り準備を整えてその場に臨んだわ。…ロザリーもそうでしょう?」

 ロザリーちゃんは頷く。

「だったら、他の方も同じだと思うわ。だから、あの場で冷静に対応なさった方をお訪ねすると良いと思うの。」

 おお〜、良い案だと思うよ。

「だとしたら、まずは私とシンシアでその方にお会いして、転生者だと確定したら美奈子に会って貰うのが良さそうね。」

 ロザリーちゃんの言葉にシンシアちゃんも同意する。

「え、何で?」 

「美奈子、貴女は創造神。それを説明せずにいきなり見知らぬ令嬢に会ったら、色々ややこしいの。」

 ロザリーちゃん。端的に説明してくれてありがとう。

「という訳で、ひとまずこの件は私とシンシアで動くから。いい?」

 はい、承知しました。


   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「でさ。あの馬鹿たちは結局どうなったの?」

 私は聞こうかどうか散々迷ったけれど、結局怖いもの見たさで尋ねる。

「ああ。」

 するとロザリーちゃんとシンシアちゃん。二人揃ってすんごく良い笑顔になる。

「?」

 これはもしや、開けてはならぬ扉を開けてしまったか…?

「よくぞ聞いてくれました!」

 二人はとても嬉しそうである。…一体何があった?

 私は戦々恐々としながら二人の言葉を待つ。

「まず、“あのお二人”は両親承認の元、晴れて夫婦になられたわ。」

 ほお。めでたしめでたし、てか?それにしては二人の笑顔は何処かドロドロした雰囲気だけど…?

「お二人は両親の目の前で、どんなに辛く苦しい事があっても手と手を取り合って乗り越えて行くという宣言をした後、婚姻証明書にサインするの。」

 ほうほう。それで?

「因みにその証明書には、この先何があろうとも離婚は不可だという事が明記されているわ。これを破った場合は厳罰が下される、という事もね。」

 おう、何だか奴らの末路が薄っすらと見えてきたかも…

「その上で貴族としての身分を剥奪。そこからはケースバイケースね。」

 ロザリーちゃんはニッコリ笑う。

「因みにオーガストの馬鹿夫婦は、キャンベル邸で下男・下女として扱き使われているらしいわ。」

 おお〜。何とも相応しい末路。けど、何故ロザリーちゃんがそれを知ってる?

「リリー様から直接伺ったのよ。だから安心して日々をお過ごし下さい、って。」

 なる程。奴の性根なら絶対ロザリーちゃんに付き纏うよな。自分は騙されていたんだ〜とか言って、自分とロザリーちゃんは婚約者だろう?とかほざいてさ。

 けど、念には念を入れて警戒した方が良くない?悪役令嬢物の落ちぶれ元婚約者は相当ウザいよ?どんな手段を使ってか、元婚約者の令嬢の前に現れてストーカー行為の挙げ句に令嬢を害するとか、割とテンプレじゃない?何かあってからじゃ遅いよ?

「なる程。ミナティ様のご懸念はもっともだ。」

 ここでサラマンディアが発言する。

 いきなりのサラマンディアの言葉に、私たちは驚き肩が跳ねる。

「申し訳ない。驚かせるつもりは無かった。」

 サラマンディアはすまなそうに頭を下げる。おう、女神様に頭を下げられてロザリーちゃんもシンシアちゃんも固まっちゃったよ…

「サラマンディア、気にしてないから大丈夫だよ。」

 私はニッコリとサラマンディアに笑い掛ける。

「で、どうしたの?」

 私はサラマンディアに尋ねる。ここで発言したって事は、何か提案があったんだろうから。

「うむ。良ければ断罪被害に遭った令嬢方の護衛として、我が神殿の神官たちを差し向けてはどうだろうか?」

 サラマンディアの提案に私たちは顔を見合わせる。

「そんな事して大丈夫?」

「何がだろうか?この話は元々女王から打診されていた。これまでは状況がよく分からなかった故に返事を保留していたのだ。」

 あ、そういう事なら問題無いよね?

「うむ。許可を頂けるならば、早速女王に返答に行っても良いだろうか?」

 私は二人の顔をチラッと見てから

「うん、お願い。」

 と答える。

「承知した。では、御前失礼致す。」

 そう言ってサラマンディアの姿は溶けるように消えた。

「これで、万一令嬢たちが馬鹿どもに付き纏われても大丈夫ね。」

 そう言って微笑う私に

「美奈子、ありがとう。」 

 そんな私にロザリーちゃんとシンシアちゃんは淑女の礼を取る。


   



 

 


 











 

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