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シンシアちゃんとの語り合い1

「それで、何をお聞きになりたいのでしょうか?」

 シンシアちゃんは穏やかに尋ねる。

「あのね。シンシアちゃんにはとても辛い事を聞きたいんだ。」

「はい。」

 シンシアちゃんは静かに頷く。

「学園で婚約者に断罪された時の事なんだけど…」

 私は躊躇いがちに切り出す。

「はい。ロザリーから伺っております。何でもお聞き下さいませ。」

「ありがとう。で、その事を聞く前に、話しておきたい事があるんだ。とても信じられない話しだけど、紛れのない事実だから。」

「まあ、何でございましょう?」

 シンシアちゃんは首を傾げる。

「あのね。私は、この世界では創造神って言われているけど…こことは別の世界では普通の人間として生きているの。」

「………」

 シンシアちゃんはポカンとした表情になっている。

「あっちの世界での私の名前は高木美奈子。大手の工場でパートとして働いているの。で、趣味でこの世界を舞台にした小説を書いていてね。だから私は創造神っていわれているの。」

「まあ。」

 ここで私はロザリーちゃんをチラッと見る。ロザリーちゃんはコクンと頷いた。 

「ここにいるロザリーちゃんも、元はあっちの世界で生きていたの。あっちの世界で事故に巻き込まれて命を落として、こっちの世界に生まれ変わったんだよ。」

「え?」

 シンシアちゃんは驚いてロザリーちゃんの方を見る。

「ロザリーちゃんの前世の名前は小島沙織。私とは仲が良かったの。」

「そうでしたか。」

 シンシアちゃんはちょっと呆然としているみたい。

「で。ある時、私はいきなりこの世界に呼ばれてこの世界を救ってくれって、女神様たちにお願いされて。それからあっちの世界とこっちの世界を行き来してる。」

「え?」

 この言葉にロザリーちゃんとシンシアちゃんが驚く。

「美奈子、こっちに転生したんじゃないの?」

 ロザリーちゃんの声が幾分震えている。

「そう。私はあっちの世界でもしっかり生きてるよ。」

「………」

 それを聞いた二人は、ポカンとした表情を浮かべていた。あれ?私、この前ロザリーちゃんに話さなかったっけ?それが顔に出ていたのか、ロザリーちゃんはその事を思い出したようで、ちょっと顔が紅くなっている。


   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「なる程。ミナティ様がお聞きになりたい事が分かりました。」 

 シンシアちゃんは軽く息を吐く。 

「ミナティ様は、私もその生まれ変わりではないのか、という事をお聞きになりたいのですね?」

「うん。」

 私は頷く。

「………」

 シンシアちゃんは呼吸を整え、意を決したように語り出す。

「ミナティ様のご推察通り、私は、いえ、私も別の世界から生まれ変わった転生者です。」

「………」

 私とロザリーちゃんは内心固唾を飲む。

「前世での私の名前は藤野朝香。十八歳でした。」

 藤野朝香?何処かで聞き覚えが…?

「私は大学に入学して間もなく、通学途中で事故に遭い…」

 シンシアちゃんは口籠る。まあ、自分の死の瞬間を思い出すのは辛いよね。

「私は中学生の時にイジメに遭い、不登校でした。」

 イジメかぁ…

「その為に友人は少なかったのですが、その時一人だけ気楽に話せる子がいました。」 

 へぇ。

「その子もイジメに遭った事があるとかで、とても親身になって私の話しを聞いてくれました。」

 ああ、それは嬉しいよね。分かるなぁ~

「私はその子が大好きになってアドレス交換して、時々近況報告し合っていました。」

 う〜ん、何〜か聞いた事があるような…

「それは大学に入るまで続いたのですが…」

 なる程。事故に遭って命を落としたから、そのままご無沙汰になっちゃった、と。…ん? 

「その事は、記憶を取り戻してからずっと心残りだったのですが…」

 シンシアちゃんは、私にニッコリと笑い掛ける。

「まさかこちらの世界に生まれ変わってから、それが叶うとは思ってもみませんでした。」

 え?…って事は?

「あの時はありがとう、美奈子ちゃん。」

 うわぁ…、何て事だよぉ…

「え?あーちゃん?シンシアちゃんはあーちゃんなの?」

 話を聞いて私も思い出した。

 シンシアちゃんこと藤野朝香ちゃんとは、中学の頃に偶然知り合ったんだ。

 状況はよく覚えてないけど、母親を待ってベンチに座っていた朝香ちゃんの隣に腰掛けたのが始まり。

 お互い手持ち無沙汰でどちらからともなく話し掛け、お互いイジメに苦しんでいるって事で意気投合したんだ。

 それからずっと連絡を取り合っていたんだけど、ある時から返事が返って来なくなっちゃった。 

 しばらく連絡をいれていたけど一向に返信が無いから、そのまま忘れてしまっていたな…

 まさか、こんな所でまた会えるなんて思ってもみなかったよ…

「うん、そうだよ。…久しぶりだね。」

「うん…、久しぶり。」

 私とシンシアちゃんは思いがけない再会に涙した。

 

 


 



 




 



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