現実世界で情報を整理する
私は自室のベッドの上で目を覚ました。
「………」
今回は色々と情報過多だ。
まずあの世界で、よりによって悪役令嬢が大量発生していたとか…想定外にも程がある。そして何より…
“沙織が…あの世界に転生していたなんて…”
そう思うと、じんわりと涙が滲み出る。
“沙織が…生きていた!”
勿論私が本来生まれ育った世界では無く、まさかの自分が作り上げた世界に生まれ変わったとか…予想しろと言う方が無理なんだよ。
あの世界の沙織はロザリー=エメットという侯爵令嬢である。その姿は正にフランス人形。
しかし、見た目は完全無欠のフランス人形であっても、その仕草の端々に小島沙織が息づいていた。
“沙織が貴族令嬢やってるなんて吃驚だけど…また一緒にいれるのは嬉しい。”
自分の小説の世界に入り込んで、自分が作ったキャラたちと交わるなんて珍妙な現象にただ戸惑っていたけど、この現象に初めて感謝した。
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今日も仕事を終え、早々に帰宅した私は早速小説の続きを書き始める。
王都での悪役令嬢騒動。主人公は当然ロザリーちゃんだ。
これまで王都編は女神様が散策する形で描写していて特にキャラを設定していなかったんだ。別に設定必要無かったからね。
ロザリーちゃんが体験した悪役令嬢騒動を皮切りに、ロザリーちゃんの視点で王都編は進めていこうと思っている。え?アプリコットちゃんとミィムちゃん?あの子たちはポーラ村で生活しているから、出したくても出せないんだ。
そんな訳で王都編の主人公をロザリーちゃんに定めて話しを進めていこう。
まずはばっちり目撃した断罪イベント。ロザリーちゃんは終始冷静で立派だったなぁ。
その後馬鹿男とヒロインの末路と、この馬鹿げた悪役令嬢騒動を収めるべく立ち上がるロザリーちゃん。その手始めに自分の他に断罪された令嬢たちに話しを聞いて回る、という感じで進めていくつもりだ。
で、まずは次あの世界に行った時に会う予定のシンシア=ディレノス公爵令嬢。彼女とロザリーちゃんはいわゆる幼馴染なんだって。
ロザリーちゃんから聞いた彼女の断罪状況。幼い頃からの婚約者パトリック=リンデル公爵令息はアグネス=ハリソン男爵令嬢を伴って、突如衆目の前で婚約破棄を言い渡し、国外追放を高らかに宣告したらしい。
因みに馬鹿がその時上げた“罪状”は他の断罪被害者とほぼ変わらない。つまりヒロインへの嫌がらせね。
シンシアちゃんはロザリーちゃんと同じように冷静に対処したらしいけど、やはりかなり傷ついた様子だったそう。
けど…私、思うんだけどさ。ロザリーちゃんは日に二~五、六件断罪イベントが発生しているって言ってたよね?んで、それが数ヶ月間。そこまで上位貴族の令嬢が下位貴族の令嬢に嫌がらせをしていたら、普通に問題にならない?幾ら身分の隔たりがあると言ったってさ。この時点で色々可怪しいよね?
まあそれはさておき、シンシアちゃんは現在傷心の為登校していないそうだ。そりゃ、そんな謂れのない屈辱を受けたのなら仕方無いよね。
因みに学園側もそんな事情を配慮して、在宅受講を認めているんだって。
尚、馬鹿をやらかした方の処分は、私はまだ聞いていない。
その辺もシンシアちゃんに会った時に話してくれるんだって。…楽しみなような、怖いような
それからしばらく話を進めて私はベッドに入り、程なく夢の世界へと向かっていった