取り敢えずお話を進めてみた(現実世界の部)
私の小説内のキャラである女神様たちに話の続きを書けと迫られた後、気が付いたら自室のベッドに寝ていた時は状況を理解するのに少々時間を要した。
「私、異世界転生した訳じゃ無かったんだ…」
その事が残念なような、ホッとしたような…
自分が作った世界に入り込むなど予想外にも程がある。
大体異世界転生、というかこの場合は異世界転移か?って、自分が何らかの理由で死んじゃった時に神様が大好きなゲームや小説の中に転移指せてくれるものじゃないのか?
そんな事をツラツラと思いながら、女神たちに与えられたミッションを考える。
「穴だらけの設定を埋める、ねぇ…」
思わず溜め息が出る。
「んな事いきなり言われてもさぁ…」
そんなボヤきも出てくるというものだ。
“癒やしのミナティリア”は私の願望や妄想が詰まった物語だが、大層な構想がある訳じゃない。大まかな筋はあるものの、基本的にはその時の思いつきを文字にしている。だから設定なんかは書きながら考えているのだ。
「はあ…」
またもや溜め息が出てくる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
早速行き詰まった私は、取り敢えず今漠然と考えている設定を整理してみる事にした。
この世界の背景として、まず西の大陸·東の大陸というものを考えている。西の大陸はヨーロッパ風の国が幾つか存在し、ギリシャ·ローマ風やロココ調、大英帝国風とか色んな時代や文化がゴチャゴチャ混在したら面白いかな?と考えていた所だ。
東の大陸は和風と中華風を考えている。こちらも時代や文化をゴチャ混ぜにしたらどうかな?と。尤もこちらは余裕があれば描写していこうと思っているので、今のところ出番は無い予定だ。
さて、我らがミナティリアは西の大陸最大の王国である。そして最も大事な設定はこの国は女性優位だということ。子を産む属性は偉大なのである。当然ながら女王制で、仕える臣下たちも全員女性だ。
そしてこの世界は既に四柱の女神様が登場した事で分かるように多神教である。というか八百万の神々と言った方が的確かも知れない。これもその時の話の流れと私の気分次第でどんどん増えていく予定である。
神々の御使として精霊様も入れちゃおっかな~とも考え中。
今のところ考えているのはこんな所である。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「う~~ん」
私は思わず唸る。何処からどう手を付けたものか…
「本当、どうしよう…」
大体からして、こんなド素人の小説が何だってまた“悪意ある侵略者”とやらの侵略対象になったのやら。もっと洗練された良い作品は幾らでもあるだろうに。
繰り返すが私の小説“癒やしのミナティリア”はひたすらほのぼの話が続く、作者である私以外に需要があるとは思えない内容だ。勇者や聖女、魔王なんかは登場しないし、胸躍る冒険譚なんかも特に無い。強いて言えばプロローグにあたるミナティと仲間たちの話が冒険譚と言えるかもだが…
まあそんな事を考えても仕方無いので、取り敢えず話を進ませるべく頭を悩ます。
「ていうか、具体的にどう侵略されてる訳?」
私はふと思った。一応女神様たちからは奴らは悪意をばら撒きあちこちで争いを引き起こしていると聞いたが、具体的な争いの内容が分からない。そもそもばら撒いている悪意って具体的にどんな悪意?私はここで行き詰まった。それが分からない事にはどうゆう設定にしたらいいか、どう話を展開したら良いか分からないじゃないか…
「女神様~、その辺の説明もちゃんとやってよ~!」
ここに思い至った私はヤル気も集中力も途切れてしまい、一旦休憩を挟む事にした。
コーヒーとお気に入りのクッキーで一息ついた私の脳裏を駆け巡るのはやはり小説の事だ。
“私、こんなに真面目だったっけ?”
自分でも不思議に思う程考える事といえば自分の小説の事ばかりだ。
“何だかんだでやっぱり気になるんだよね…”
自分の妄想をふんだんに盛り込んだ私の世界。鬱屈だらけの現実世界から逃避する為に作り上げた私だけの理想郷。そんな他愛無い物語をぶち壊す存在って一体何なんだ?そんな事をして奴らに何のメリットがあるのやら。本当、全くもって意味不明だ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それはさておき、私はひとまず設定云々は横に置いて話を進めようと頭を捻る。
実際のストーリーはちょっと神話っぽいプロローグから、とある小さな村で繰り広げられるほのぼの日常風景をツラツラと書き綴っている所である。
その小さな村の名はポーラ村。そこに住む二人の少女、アプリコットちゃんとミィムちゃんを中心に話は進んでいる。
この世界には、どんな小さな村にも神々を祀る神殿が一つは存在する。丁度日本の神社みたいな感覚かな?一柱の神様を祀っている場合もあれば、複数の神様を祀っている場合もある。
ポーラ村の場合は一柱の神様で、祀られているのは医療の女神ヨーティアである。
医療の女神様を祀っている神殿は病院としての役割もあり、ヨーティア神殿の神官たちは医者としての資格をも有する。
ポーラ村も例外ではない。そしてポーラ村はハーブが特産品だったりして、特に医療に精通している村としても密やかに知れ渡っていたりするのだ。
アプリコットちゃんとミィムちゃんは、ポーラ村の神殿で医療を学んでいる見習い神官“候補”だ。
何故“候補”なのかというと、正式に見習い神官となるには神官に適性があるかどうかが第一の関門となる。その為には村の少女たちは、全員数年の間神殿で奉公する事が義務付けられている。アプリコットちゃんとミィムちゃんは現在その審査中なのだ。
そして見事神官に適性有りと見做されたら、最寄りの都市のヨーティア神殿で修行する事になる。そこで優秀な成績を修めた者は王都のヨーティア神殿に招かれ、そこで更なる高みを目指すという訳だ。
大体ここまでの内容を書いているのだが…
「さて、ここからどうしよう…」
色々考えてみるが、どれもこれも何だかしっくり来ない。
この世界にも魔法は立派に存在する。というか、日常生活においては神殿や神々よりも魔法が身近である。ポーラ村にも魔法を教えてくれる所はある。大体、神官候補から脱落した少女たちの受け皿として機能している面も多々ある、有り難くも何となく不名誉な場所だという認識を持たれていたりする。
「あ!そうだ!」
私は閃いた。魔法が不名誉なんてとんでもない!神官も魔法使いも同列にするべきだ!
そう思った私は早速ポーラ村に隠居している大魔法使いマリエルを作り上げた。
マリエルは嘗てミナティリア中に名を轟かせた魔法使いで、大賢者とも呼ばれた偉大なお方だ。
時の女王の覚えも目出度く、長い間女王の右腕として活躍していた。そして女王が代替わりしたのを機に、大魔法使いの地位を一番弟子に譲り自分は生まれ故郷のポーラ村に帰郷し、子どもたちに魔法を教えながらのんびりと暮らしているのだ。
「魔法使いだけじゃなく、他にもいた方がいいかな?」
例えば超能力者とか、霊能力者とか。仙人なんかも登場させたら面白いか?
「うはぁ~、本当に何でもありだわ。」
絶対に収拾がつかなくなる。その辺りは追い追い取り入れるとして、まずは神官様と魔法使いの区別である。
「そういえば、神官様の御力って何だ?」
魔法と区別する以上、それは別物だ。
では神官様の御力は…神通力か?
「超能力と区別つかなくね?」
私はここでまたもや行き詰まる。
「神官って…神託ってイメージ、かなぁ。」
いや、それは巫女か?
私は思いっきり迷走している。この世界の場合、神官と巫女はもう同一でいいんじゃないだろうか?
「もう神官=巫女でいっか。必要ならそこに序列をつければいいかな?神官>巫女っな感じで。」
何となくイメージが纏まってきた。それならば神官様の御力はご神託、或いは預言者って事で。神通力も捨て難いが、今はそこまで組み込むと私が管理出来なくなってしまう…
「これで神官様はOK!後は魔法使いだ!」
これはそんなに難しく無いように思った。だがしかしこれがまた中々の強敵であった。
「神官様は宗教のトップで、魔法使いは学問のトップって感じ?」
何となくだが魔法使いって科学者ってイメージなんだよね。学者って言ってもいいかも。
「んじゃあ。子どもたちは神殿か魔法使いの元か、どちらか選べるようにした方がいいよね。」
それを文字にして打ち込む。
「よし!」
今日書き上げた文章を読み返してみる。
まだまだしっくりこない感じはするものの、ひとまずいいかも?と思える内容に仕上がっている。
「んじゃ、投稿するべ。」
そして私はこの内容を投稿したのである。