ロザリーちゃんと語り合う
「いやぁ~、吃驚した~!」
「私こそ吃驚だよ!」
何がといえば、私とロザリー=エメット侯爵令嬢が実は知り合いだった事である。
正確には、ロザリーちゃんの前世が私の大学時代の知り合いだったという事が判明したのだ。
という事で、私とロザリーちゃんでついついあっちの世界の話しで盛り上がってしまった。ロザリーちゃんは前世の記憶を取り戻してから何だかんだで寂しい思いをしていたみたいで、話しが止まらない止まらない。
「あの…ミナティ様とエメット侯爵令嬢。そろそろ私どもにも、ご説明頂けないでしょうか?」
頃合いを見て女王様が声を掛けてきた。
「あ…ごめんなさい。」
私とロザリーちゃんは慌てて皆に向き直る。うわぁ~、気まずいなぁ。
「なる程。お二人はあちらの世界でお友達同士だったという事ですね。」
女王様が納得した表情で頷く。
私とロザリーちゃんが必死にあっちの世界での事を代わる代わる説明して、ようやく理解して貰えた。ふう、大変だったぜ。
「分かってくれて嬉しいよ。」
私は安堵の息をつく。ロザリーちゃんがいてくれて助かった。説明の凡そ三分の二はロザリーちゃんがしてくれた。万年ボッチには人に分かり易く説明するっていう難題はハードルが高いんだよ、本当。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ところでさ、沙織。」
私はふと思いついてロザリーちゃんに顔を向ける。
「何?」
「今まで断罪された令嬢ってどれくらいいるの?」
「そうね~」
ロザリーちゃんはしばらく考えて
「一日にニ~五·六件くらい発生しているみたいだから~」
ロザリーちゃんは少し躊躇ってから
「下手したら数百超えるかもね…」
うへぇ~、そんなに?
「それ…もう全校生徒レベルじゃない?」
「そうでもないよ。」
ロザリーちゃんは澄ました表情で答える。
「何だかんだ言って生徒数は多いから。他国からの留学生もいるし、庶民街から来ている特に優秀な生徒もそれなりに在籍しているし。」
ん?庶民街からも来ている?貴族学校じゃなかったの?
「そうなんだけど。庶民でも特に裕福な家とか、貧しくても特に才能が認められた場合は特例で入学が許される場合があるのよ。主に行儀見習いが目的でね。」
へぇ~
「でも、それがどうかした?」
「いやぁ~、ふとした思いつきなんだけどさ…」
想定外に多過ぎた断罪イベント被害者の数に、口にしようかどうしようか悩みが生じた。
「彼女たち…揃って異世界転生者とかじゃないよね?ヒロイン側も含めて。」
「………」
ロザリーちゃんたちはポカンとした表情を浮かべている。まあ、流石に荒唐無稽過ぎるか。
「それ…今の今まで考えた事無かった!」
…あれ?
「私がそうなんだから…考えてみれば、その可能性は大いにあるわ!」
まあ、それは一理あるよね。
「美奈子だってこうして転生してきているんだもの!間違い無くそうだわ!」
あらら、ちょっと誤解されてる。
「沙織。あのね。私、この世界に転生した訳じゃないんだ。」
若干気まずいが、これはきちんと説明しとかなきゃいけないね。
「え?」
ロザリーちゃんはキョトンとする。
「私、あっちの世界で生きてるよ。」
「は?え?」
ロザリーちゃんは目を丸くする。
「私、あっちの世界でこの世界の小説を書いてるんだ。だから創造神なの。」
「…美奈子、作家になったんだ。」
「うんにゃ、大手工場のパート。」
「………」
ロザリーちゃん、目を白黒させている。美少女はそんな表情も様になる事。
「小説を書いているのに、パート勤務?」
「そう。」
私は頷く。
「…でもどうやって?」
作品を公開しているのかって?
「投稿サイトで。」
「あ、そういう事。」
ロザリーちゃんは納得したようだ。