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女神様たちのアイテム

 現実世界に戻った私は、早速女神様たちのアイテムを考えながら仕事をしている。

 うちの工場は二十四時間稼働で、パートは三勤一休が基本で土日は関係無い。勿論忙しい時期はその限りでは無いが。とはいえ、うちは元々二十四時間稼働だから余り残業や休日出勤を打診される事は無い。言われる人は言われるみたいだけど、それはよっぽど気に入られた人か、逆に面倒を押し付けられた人が殆どだ。

 幸い私は特に気に入られている訳でも、面倒を押し付けられる程嫌われている訳でも無い。残業や休日出勤を打診されても、お金を稼ぎたければ承諾するし、嫌なら断る。

 まあ残業は兎も角、休日出勤って平日より人が少ないから実は嫌いじゃない。時給も平日よりちょっとだけ上乗せされるしね。その上、休日出勤したら代休だって貰えちゃうし。

 そんな事を考えながら作業をしていたら

「高木っち~」

 不意に声を掛けられた。

「田中さん。」

 声を掛けてきたのは、私の作業場で一番若い田中綾乃。私、とある理由からコイツは大嫌いだ。

「高木っち。休憩行こ!」

 と、実に珍しく誘って来た。

「…これのキリがついたら行くから先に行ってて。」

 私はそう言って視線を手元に戻す。

「ええ~?高木っち、冷た~い!」

 …人の耳元でガタガタ騒がないで欲しい。第一、いつもはコイツが休憩に誘ってくるなどまず無いのだ。これは絶対に何かある、と私の中でしきりに警報が鳴り響いている。

「ほら、行こ~!」

 と、無理矢理私を引っ張ろうとする。

「分かった、分かった!」

 私は田中綾乃の横暴に止む無く屈した。…また後で仕事を途中で放り投げた!と吉井さんに怒鳴られる事を思い、憂鬱になる。



「ねえ高木っち。明日お休みなんでしょ?」

 ほら来た。やっぱりそうか。

「そうだけど?」

 私はそっと溜め息を吐く。

「お休み、代わってくれない?」

「駄目。」

 私はにべもなく断る。

「え?今、何か言った?」

 田中はニコニコと威圧してくる。

「私、明日は用事があるから。」

「え~、何の用事?他の日に回せないの~?」

「貴女に言う必要ある?」

 私がそう言うと

「私が休みたいって言っているんだから~、いいでしょ~?」

「………」

 こいつ、いつもこうなんだよな。

 この田中綾乃。吉井さんと齢が近いからか、妙に仲が良いんだ。そして吉井さん、もう吉井でいいか。吉井はやたらと田中に甘い。吉井はこいつの子分なのか?と思うくらい、こいつの言いなりである。

「兎に角、休みは代わらない。」

「何でよ!?」

 田中は熱り立っているが…当たり前だっつーの!

「話しはそれだけ?」

 そう言って私は立ち上がった。

「待ちなさいよ!まだ話しは終わって…」

 田中がそう言い掛けた時

「あ、高木ちゃん。ここにいたの?職長が探していたわよ。」

 と、声を掛けられた。

「あ、松本さん。」

 その人は松本理恵さん。私がこの工場に来たときに仕事を丁寧に教えてくれた先輩で今でも何かと気に掛けてくれる、私の数少ない信頼出来る人だ。

「早く行きなよ。職長、急いでるみたい。」

「はい。ありがとうございます、松本さん。」

 そう言うなり、私は脇目も振らずその場を後にした。


   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


「はあ~」

 今日も何とか無事に仕事が終わった。

 あの後、職長の所に行ったら特に用事は無かった。どうやら私が田中に強引に引っ張られて行ったのを職長がたまたま目撃したらしい。

 田中と吉井の事は職長も苦々しく思っているようで、何かと気に掛けてくれる。

 というのも昔、娘さんが酷いイジメに遭って自殺を企てた事があり、それが物凄くショックだったらしい。なので、そういう状況を見て見ぬ振りは出来ないと以前言っていた。

 まあ、あの二人を密かに嫌う人は大勢いるみたいだけどね。

 それがあるお陰で、私はあの工場を辞めずにいられるのだ。本当に感謝。



 さて、自室に戻ったので早速女神様たちのアイテムを考えていこう!

 先ずはフィーンのからね。フィーンの要望は自由自在に風を操りたいって事だよね、要するに。

 だったら扇なんてどうかな?舞いながら扇を振って自在に風を操るって、何かいい感じじゃない?

 団扇でもいいけど、ギリシャ神話の女神様に団扇って何かイメージがチグハグだよね?まあ、フィーンは見た目十歳だから…案外違和感は無いかも知れない。これは本人の意見を聞いて最終的に決めればいいかな?

 お次はしっかりしたリクエストが出たフレデリカ。彼女は魔法使いの杖がご所望だ。

 魔法使いの杖って言ったらやっぱりアレだよね?あの枝が絡み合ったような奴。何か呼び名があるのかどうかは知らないけど。

 んで、大体肩くらいの長さで大きな宝石が付いてる感じかな?

 杖の素材になる木は特別な方法、例えば魔力をふんだんに与えられて育ったとか、特別な場所で育てられるとか、そういった条件が色々ありそうだよね?そういうのはどうしようかな?

 で、杖に付ける宝石は魔法使いによって変わってくるとかありそう。宝石って、本来魔除けの為に身に付けるらしいし。

 デザインとかは…フレデリカと一緒に考えよう。彼女、そういった事は拘りが凄そうだし。

 後はベレンガリアやリュンヌの分だけど…彼女たち、特にリクエストがなかったんだよね。どうしようかな?

 取り敢えず、女神様たちには私と同じようなノートを授けてもいいかな?と思ってるんだ。彼女たちには小説を書き込む機能こそ必要は無いけど、検索機能とかマップ機能とか普通に重宝しそうだし。

 そんな事を考えつつ、いつの間にか眠りについていた私だった。


 


 




 

 


  

  

 

 

 

 

 






 



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