女神様たちにもアイテムを授ける事になった
公園でのんびりした後、私たちは神殿へと戻った。
「楽しかった~!」
私は大満足だ。ようやく、ほんの少しだけど自分の世界をこの目で見る事が出来た事に。
「あ!そうだ!」
私はこの感動を忘れない内に書き記しておこうと、早速あのノートに書き込む事にした。
あの後、色々考えてノートは一応ブローチとして身に付ける事にしたのだ。
アクセサリーにするとして、何にしようか迷いに迷ったんだけど…取り敢えずブローチを試す事にしたんだ。
髪飾りやネックレス、ブレスレットなんかも考えたんだけどね。どれも良いようで何か決め手に欠けるというか…あれこれ試して、一番良いと思った物にしようか、と。いよいよになったら、その時の気分と状況で変幻自在にしちゃってもいいかな?とか考えている。
という訳で、女神様スタイルに戻った私は早速ノートを呼び出そうとパン!と手を打った。これで顕現する設定にしたけど…上手く行くかな?
「ミナティ様?」
いきなり私が手を打ったので驚いたらしい。女神様たちは目を丸くして私を見つめている。
「お!やった!」
ノートは見事に私の手に現れた。しかも私が思い描いた通りの装飾が施された、ザ·女神様仕様のノートが。
「ミナティ様。それはな~に?」
フィーンが興味深そうにノートを覗き込んでくる。
「これ?これはこっちの世界でもお話が進められるように作った、私のアイテムよ。」
私はちょっと得意げにフィーンにノートを見せてやる。
「うわぁ~!格好いい!いいな~!私も欲しい~!」
フィーンにおねだりされた。
「え?」
私は目を丸くしてフィーンを見つめる。この子もこのノートが欲しい、と?
「私にも何かアイテム頂戴~~~!!」
…つまりフィーンは別にこのノートがご所望という訳では無く、自分にも何か良いアイテムが欲しい、と。そういう事?
「ふ、フィーンはどんなアイテムが欲しいの?」
何はともあれフィーンの要望を聞いてみる。
「えっとねぇ~、私の力がうんと強くなる奴!」
…何とも抽象的で良く分からない。
「それは、風を起こす力を強くするって事?」
「というか~、扱える風を増やしたい!」
「?」
私がフィーンの発言の意味を掴みかねていると
「ミナティ様、フィーン様は恐らく現状ではまだ扱えぬ技を使えるようにしたいという事かと。」
クレメンティアがそう捕捉してくれた。だがしかし
「…私は具体的にどうしたらいいの?」
私はどうしたらいいのか、皆目見当が付かない。
「そうなの~!クレっち!分かってるぅ~」
く、クレっち!?
「フィーン様。いくら女神様と云えど、礼儀は弁えて下さいませ。」
すかさずクレメンティアはフィーンを窘める。
「ええ~?何で~~~?」
フィーンは膨れっ面である。
「そのようなお顔をなさっても、駄目なものは駄目でございます!」
クレメンティアは一切動じず、冷静に対応している。
“ふわぁ…クレメンティア、流石!”
私はクレメンティアの凛とした態度に惚れそうだ。だって、今時分こんなにしっかり注意出来る大人なんていないよ?
「むぅ~~!」
フィーンはむくれているが、これはクレメンティアが正しい。
「で、フィーン。貴女は具体的に何が欲しいの?」
取り敢えずフィーンに聞いてみる。
「えっとねぇ~、強い風を吹かせるようになりたい!後は、色んな風を自由自在に扱えるようになりたい!!」
「………」
それは自分がしっかりと修行すれば、手に入れられるのではないだろうか?
「私だって修行はしっかりやってるよ~?でもさ、どんなに努力したって、なんにもならない事だってあるでしょう?」
「そうなの?」
確かに人間なら努力が報われない、なんてよくあるけど…神様にもそんな事があるの?
「ミナティ様。この世界の神はね、完璧じゃないの。神だからって何でも出来る訳じゃないのよ?」
フィーンは悲しそうな表情でそう言う。
「は?どゆ事?」
と、言いつつ私には薄っすらと心当たりがあった。それは書き始めた当初、この世界の神々は元人間。一定以上の功徳を積んだ人がその後、神になるという設定をした事があった。で、神様になった元人間は修行を重ね、更に高位を目指して行く、って風に。しかし色々設定の辻褄を考えるのが面倒になって、没になったアイデアなんだけどな、それ?
正式に採用した設定ではなく、私が没にしたアイデアがこうも適用されているとか…本当、どうなってんの?
私は溜め息しか出てこない。
「神も代替わりするのです。それで、フィーン様はつい半年ほど前に風の神を引き継いだばかり。まだまだ力は安定しきっていないのです。」
クレメンティアはそう捕捉する。
「はあ…」
私は何とも言えない気持ちになる。
「代替わりって事は、何処か神様養成所みたいなのがあるの?」
私はふと疑問に思った。
いくら何でも全く素質も知識もない人が神様に選ばれる訳がない。その前段階として神様候補としての教育が行われている筈だと思ったのだ。が、そう尋ねた瞬間その答えが分かった気がした。そう、神殿だ。
「その通りでございます。」
クレメンティアが頷く。え?私、まだ口に出して無かったよね?
「結論を申しますと、この総合神殿の神官たちは皆、神と成り得る候補なのでございます。」
「………」
…そういえば、そんな設定を考えた事があったよ……
思い返してみれば、これまで散々驚かされた予想外の展開は、私が何処かでふと思い付いては没にしてきたアイデアばかりだ。
ようやくそれに気づいた私は、一度自分が思い付いては却下してきたアイデアを掘り起こしてみようと思った。そうすれば、この後の展開を予想する事が出来そう。
一人、そうブツブツ呟いていると
「ねぇ、ミナティ様~。駄目~~?」
フィーンに身体を揺すられた。
そうだった。フィーンにアイテムをおねだりされていたんだった!
「そうだね。何か考えてみるよ。」
まあ確かに女神様に何かシンボルになるようなアイテムを持たせるのは有りだよね?…女神様の数が多いから一人一人に考えてるのは大変だけど。これは本人の意見を聞きながら作っていけばいいか。第一、皆が皆アイテムを欲しがるとは限らないし。
「フィーンには何か考えるとして。貴女たちはどう?アイテム欲しい?」
念のために確認する。要らない物を貰ったって困るもんね?
「勿論でございます!」
意外にもベレンガリアが真っ先に食いついた。その横でリュンヌも大きく頷いている。
「そ、そっか…分かった。」
予想外に反応が良かった事に面食らいながらも、私は承諾した。
「ミナティ様。当然、私たちにもありますよねぇ?」
フレデリカがニ~~ッコリと、妙に威圧を感じる笑顔で私を見つめている。
「う、うん。」
私はしどろもどろになりながら返事を返す。
「良かった~!私、杖が欲しい!何と言っても私、大魔法使い様だもん!」
そりゃそうだね。ついでにマリエルにも持たせよう。そんな描写、特にしてなかった筈だし。
「やった~~~!やっぱりミナティ様、話が分かるぅ~!」
大喜びのフレデリカを見ていると、こっちまで嬉しくなる。
「ミナティ様。私にも何かございますか?」
お?クレメンティアもアイテムが欲しい、と。
「いいよ。クレメンティアは何がいいの?」
「私は……」
こうして、女神様全員と主要キャラにシンボルアイテムを持たせる事が決まった。