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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満


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97. ロバートVSマーガレット

2025/5/21 タイトル変更、加筆修正済み

※ ※ ※ ※




翌朝──。


翌朝といっても、もうだいぶ太陽が窓の天井くらいの高さにあった。

壁時計の針をみると既に11時半となっている。


ようやくロバート王太子が目を覚ました。



『痛っ!』


起き上がりに頭を押さえるロバート。ズキズキと頭痛が酷い。


ロバートは気分がとても悪そうだ。


横には妻のマーガレットが寝ていた。

すやすやと寝息を立てている。


ロバートはそのままベッドから起き上がり、テーブルの水を飲んで口をゆすいだ。


用を足し、風呂場についているシャワーを浴びる。



王宮殿内は、各部屋に風呂とシャワーが付いている。

蛇口を捻るとお湯が出た。


電気石(トルオルマリン)の給湯器のおかげで、王族たちも従者や使用人まで恩恵を受けている。


シャーシャーと、シャワーのお湯を出しっぱなしにして、ロバートは石鹸を身体につけて泡だらけにする。


そのまま、頭からざっぷりとシャワーを被る。



──だめだ、いくら石鹸で洗っても、()()()()が落ちない、とても気持ちが悪い。



ロバートはなぜか、無性に苛々が募って仕方がない。


昨日の夜はあれほど嗅いでいて心地よい衝動で、自分の理性を失うほど気持ち良かったのに⋯⋯。


今はなぜか身体に纏わりつく匂いに嫌悪感を感じてしまう。



──これは何だ?


昨日、俺は何をした。


マリーは、俺に黙って一体、何を使ったのだ。



シャワーを浴びながらロバートの意識は、ようやくはっきりとしてきた。

そして増々匂いへの嫌悪感は酷くなり、マーガレットに対しても同じように怒りが込み上げてきた。



この匂い……多分、媚薬だ。


こんな強烈な媚薬……マーガレットは、一体どこで手に入れたんだ。



そうか、俺はあの媚薬に酔いしれてマリーを抱いたのか。


我を忘れるくらいの()()()()だった。


あんな凄いものは、クリソプレーズにはない。


一体、どこでマリーは手に入れたんだ。



『あ!』


ロバートは(ひらめ)いた。


すぐさまシャワーの蛇口を止めて、脱衣所からバスタオルだけを腰に巻いて、シャワー室から出てきた。




ベッドにはまだ、マーガレットが寝ていた。

まだすやすやと寝息を立てている。



『起きろ、マリー!』


ロバートは、無理やりマーガレットの毛布を剥ぎ取る!



『キャッ!』



『うっ!?』


マーガレットの裸体に驚くロバート。


彼女の裸体は全身、赤いキスマークだらけであった。


明らかに昨夜、ロバートが無理やりつけたものだ。

その余りの痛々しさに、ロバートは思わず顔をそむけた。



『殿下………』


マーガレットはまだ夢見心地のようにまどろんだ声で返事をした。



『起きろ、もう昼だぞ!』


ロバートは椅子に掛けていたガウンを裸のマーガレットに放り投げる。



──なんてことだ、あの体中のマークは俺がつけたのか!


俺はなんて馬鹿なことをした、なんとも愚かな──。



『殿下、おはよう……ございます……私、とても疲れてしまってとても身体が重い……』



『ああ、だろうな。まず水を飲め!』


とロバートは苦々しげにいって、水差しの水をグラスにつぎ、マーガレットに渡した。



水を飲むマーガレット。


『目が覚めたか』


『はい、ありがとうございます』


『いいから俺のガウンを羽織れ、目のやり場に困る』


マーガレットは言われたままにガウンを羽織り前をぎこちなく紐で結ぶ。




『マリー、正直に答えてくれ』


『はい……』


『あの媚薬は何処から手に入れた?』


『あ……それはその──』とても困った顔をするマーガレット。


『アドリア妃──だよな』


『……』


『図星か……』


『はい、そうです……』


『なぜ、黙って使った。そんなに俺と寝たかったら素直に言えばよかったのに』


『無理です……とてもそんなはしたないこと……いえません』


マーガレットは酷く狼狽えた。


彼女はようやく目覚めたようで、自分を見つめるロバートの表情が酷く強張っているのに気が付いた。



──ああ、殿下はそうとう媚薬に怒っていなさるわ。やはり昨日、私が話せば良かった。


だが淑女たるもの夫と寝たい……などといえるものではなかった。


そんなはしたない教育は、マーガレットは母親から受けてはいない。



『はは……良く言うわ。はしたないなど──媚薬を使うお前が偉そうに言えるのか? 呆れたな……』


とロバートは下半身に巻いていたタオルを外して、無造作に下着に履き替える。



『キャッ!』思わず、マーガレットは目をそむける。


『なにがキャッ!だ、裸よりはましだろうが……俺たちは夫婦だぞ、アホか!』


ロバートは醒めた目をして、どんどん衣服に着替えていく。



──アホか。 え、今私にいったの?


その口調は今までマーガレットがロバートから聞いた事のない、冷ややかな物言いであった。



まるで()()()()()のような……そんなずさんな扱い方だとマーガレットは感じた。



──ロバート殿下がこんな風に私をじゃけんに扱うなんて初めて。媚薬を使ったのがよほどお気に障ったのね。


ようやくマーガレットは、自分が大変なことをしたのだと自覚した。



『マリー、俺が心底腹を立てているのが分からないのか? 夫を騙すなんて……妻にあるまじき卑怯なやり方だ!』


『殿下、ごめんなさい……勝手に媚薬を使用したことは謝ります。けれどこうでもしないと殿下は……私とは……』


マーガレットは、自分でも何をいって良いやら泣きそうになった。


『いいか、マリー! アドリアは敵だ、あの女は母上と対立してる。お前はまんまと騙されたんだ。俺は自分の妻があの女狐に夫婦の寝屋事まで相談していたと思うだけで虫唾が走る!』



『あ、では殿下は私がアドリア様から、媚薬をもらったから怒ってますの?』


『そうだ、それ以外何がある?』



『お言葉ですが……アドリア様は私の悩みに親身になって聞いてくれたのです。私はどうしても殿下の御子が欲しいって……媚薬だって私から無理にアドリア様からお願いしたのです。そんな言い方はアドリア様に対して失礼だわ……』


珍しくマーガレットがロバートに反論した。



ロバートはマーガレットが、口応えするとは思わなかったので、酷く腹が立った。


『マリー、俺に口答えするのか? お前は政治(まつりごと)を知らないからそんな呑気なことが云えるんだ。──いいか、アドリアは自分の息子を国王にしたいと思ってる女だ。王太子のお前を丸め込んで、何かしようとしているに決まってるんだ!』



『でしたらおかしいですわ。彼女は私が殿下の御子を産みたいといったら、直ぐに媚薬をくれました。もし自分の王子を国王にしたいなら、王太子妃の子作りなど協力しないでしょう!』



『だから、それが罠だといってるんだよ! あの女狐は何か良からぬことを企んでいるに間違いない、お前は騙されてるんだ!』



マーガレットはカッチンときた。



──まあ……なにが罠よ、王太子妃の御子に協力してくれる恩人を罠だっていうの!


そもそもあなたは何年も私と寝ようともしなかったじゃないの!


おまけに今だって街の下賤な娼婦たちを、その胸に抱いてるくせに!


王宮の人間は、家令は、ほとんどあなたの愛人たちのことを知ってるのよ!


私がどんな思いで彼等の嘲笑を受け止めているか、あなたは夢にも思わないでしょう。



マーガレットは無性に腹立たしくなってきた。


そして、今までずっと我慢していた不満が一気に堰を切った。



『酷いのは殿下ですわ。そして王妃様も……2人共、王太子妃の私を見捨てなさったではないですか! しかもあろうことか、私の姉を公妾にして私をお払い箱にしたいくせに!!』


『……マリー、お前なぜそれを?』


『全て知ってますわ殿下。私を王太子妃に選んだのも、子どもの頃、殿下がエリザベス姉さまに振られた腹いせだってことも! 利用したのはそっちじゃないの!!』


『お前……』ロバートはみるみる顔が真っ青になった。



『今だって外で女を買い続けて、正妻の私をほったらかして、あなたは悪魔よ、人でなしよ!──私の前から消えていなくなれ~、殿下の顔なんて見たくないわわあっ、うううう……』


マーガレットは、ヒステリックに叫んで突っ伏して、そのまま大泣きした。



『……マリー?』


ロバートは茫然となった。



──なんだ、この目の前にいる女は?


これは俺の知っているあのマリーなのか?



そこにはロバートが良く知っている、しおらしく儚げなマリーの姿はどこにもなかった。




※ マーガレットが初めてロバート王太子に反抗する気持ちは同情します。

  ロバート殿下は自分を棚に上げて勝手なことをいってるなと書いてて思いました。

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