96. ロバートの欲情
※ 今回は少々、性交のシーンがありますので苦手な方は読み飛ばしてください。<(_ _)>
※ 2025/5/21 修正済み
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ロバートは週末の夜は、たいていは市街地区の娼婦館ラピス・ルージュ・ラズリの娼婦のエバの所へ行く。
だが、先日の王妃の拝顔で王太子には厳しい監視がついた。
このまま娼館に行けば、自分はともかくエバまでお咎めを受けるやもしれん。
ロバートとエバとの関係は長い。既に2~3年くらいは続いている。
ロバートはエバといる一時は、王子の地位も立場も忘れて数少ない癒やしの場になっていた。
いまだにロバートは“フレディ”としてエバの前で気軽にボンクラ子爵を演じているのは、とても心地よかったのだ。
これもエバが余計な詮索もせず、常にロバートに肉体の歓びだけを与えることに徹してきたからだ。
異国の奴隷で売られてきた彼女は若いが、色々と苦労しているのであろう。
将来、ロバートはエバを平民にして、人並みの生活を与える段取りも考慮していた。
奴隷を平民にするのは、王侯貴族でもなかなか簡単ではない。それなりの対応が必要となってくる。
ロバートは、王宮内の側妃は無理だとしても、王都にこじんまりとした別邸に住まわせようと、自分なりにエバを大切にしようと考えていたのだ。
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ふと周りをみると、どうやら王妃の配下の侍女が見ていた。
──ふん仕方がない、当分は大人しくしよう
ロバートは、夕食を終えて一服すると、護衛騎士を下がらせて一人自分の寝室へと向う。
寝室内に入ると侍従や侍女が誰一人いない。
部屋も明かりが薄暗く、奥の天蓋ベッドの両サイドテーブルの、ランプの灯りしかついていなかった。
『ん……?』
何か変だとロバートは感じた。
『おい、誰もいないのか?』と叫んだが、返事はなかった。
だが──誰かがいる気配がする。
ロバートはじっと止まった。
──まさか、刺客か?
ロバートは一目散に壁に掛かってた飾り用の剣に近づき、その金色の鞘から素早く剣を抜いた。
そして右手で光る剣を持ち身構えた。
『誰だ、そこにいるのか!』
誰も答えない、し〜んとしている室内だが、天蓋ベッドからは人の気配がした。
ロバートはベッドにそっと近づき、カーテンをバッと開けた!
『曲者、何奴だ──!』
『ひぃ……!』
『!?』
ロバートの突き出した、鋭い剣の刃先には女の顔が──
『マリー!』
大声をあげるロバート。
『ロバート殿下……』
そこには露わなネグリジェ姿の、マーガレットがベッドの上に座っていた。
長いブラウンの髪を腰までたらして、いつもとはずいぶん纏った雰囲気が違う。
だが、紛れもなく妻のマーガレットだ。
呆気にとられながら、ロバートは持っていた剣を下した。
『!! どうした、何故ここにいる?』
『殿下……』
マーガレットは泣き出しそうな顔をしていた。
それでもベッドから立ち上がり、そのままよろよろと震えながらロバートに抱きつく。
『お、おい……マーガレット?』
ロバートはびっくりして、持っていた剣を落とした。
『殿下、抱いてください……』
『な……!』
『お願い、わたしを抱いて!』
悲痛なくらいのマーガレットの弱々しい叫び。
それでもマーガレットは、ロバートの広い背中に細い腕をまわして、ギュッと自分の身体をつけて離そうとはしない。
『マリー、お前は……?』
ようやくロバートもマーガレットの行動を理解した。
まさか、大人しいマリーがこんな大胆な夜這いをするなんて、初めてのことだった。
驚きとともにロバートは、何か新鮮な妻の行動に嬉しさも感じた。
ロバートはマーガレットを抱き返した。
『あぁ…殿下……』
『マリー、俺に顔をよくみせろ…』
マーガレットの顎を手でくいっとあげた。
薄明かりの中、浮かび上がるマーガレットの顔は、いつもより念入りな化粧でやたらと唇が赤い。
目元の周りに銀色のアイシャドウをつけてるのか、キラキラと輝き瞳が潤んでいてとても美しい。
いつもの、幼い顔に似合った薄化粧とは違う、妖艶さがそこにはあった。
『とても綺麗だ……』
思わずロバートはマーガレットに口づけをした。
『うっ──!?』
ロバートはマーガレットと口づけながら、自分の体が何か異質なものが駆け巡るのを感じた。
気づくとマーガレットから、不思議な香りがする。
彼女の口や髪、抱いてる華奢な身体から全て漂ってくる。
──なんだ、とても甘くムスクに似たような、とても悩ましい香り。
やたらと下半身がなにやら疼いてくる。
──ああ、この香りは何処かで……そうだあれだ!
ロバートは娼婦館の似た香りを思い出した。
だが、もっと強い──。
目の前に女人がいれば、男は性欲を刺激されて、先ず逆らえない匂いだ。
『マリー、まさかお前、媚薬を……?』
ロバートは、マーガレットが媚薬を使用してることに気がついた。
『ああ、もう何もおっしゃらないで、ロバート様、私を抱いて…』
『分かった…⋯抱いてやる……』
ロバートは、そのままマーガレットを軽々と抱きあげてベッドになだれ込む。
『あ……』
エドワードに倒されたマーガレット、
彼女の瞳は歓びに打ちひしがれた。
まだ今宵は始まったばかり。
ロバートはこの夜、久方ぶりにマーガレットを抱いたのだった。




