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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満


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95. ロバートの憂鬱

※ ロバートの心情が中心です。

※ 2025/5/21 修正済み

※ ※ ※ ※



このところロバートは戸惑っていた。


間者から、最近のマーガレット王太子妃の動向がおかしいと、度々連絡が入っていたからだ。


一応ロバートは、王太子として後宮の王妃の宮殿以外、各宮に密かに間者を忍ばせていた。



ロバートは元々神経質過ぎるきらいがあった。


特に女性同士の繋争(けいそう)に過敏だ。

多分、物心ついた時から母親のメルフィーナ王妃と側妃の諍いを、絶えず見聞きしてきたせいでもある。



肝心の父親のライナス国王はというと、温厚で寛容な性格だった。


夫人同士の些細な争いも超然(ちょうぜん)として我関せずといったところだ

国王は後宮内に間者スパイなどつけたことがない。


逆にライナス国王の目線は、国の首都、王都市街地とその周辺に多くの間者をつけていた。


国王は常に王都民の暮らしの動向を意識していた。



彼の考え方は非常にシンプルで、地方の領民は貴族の領主が責任を持って統治する。


王族は臣下が管理する領地は緊急時や大きな問題がない限りは黙って見守ればよい。



先ずは、自分らの眼が行き届く所領である、王都民の生活を重視するという考え方だ。


それだけクリソプレーズ王国は、多少の差はあれど肥沃な土地と豊かな森と水に恵まれた豊国であった。

さらに多種多様の宝石が採掘される鉱山も全国の各領地にある。その為、他の国との貿易も盛んで友好国も多い。


万が一、戦争になったとしても、隣国とは深い森と切り立った崖に囲まれた地形は他国からも攻めづらかった。



(まこと)にクリソプレーズ王国は、天上の神によって贈られた緑の女神が生まれた土地なのである。


クリソプレーズに住む、王侯貴族とその臣下を含めて長年、内政に不穏な動きは殆んどない。

国王は何よりも国を守る臣下たちを信頼している証だった。



だが、息子のロバートは違った。


どうやら王宮内、特に後宮の女性たちにどうしても目を向けてしまう。




※ ※



『また昨日も王太子妃はアドリア宮に行ったのか?』


『はい、それも最近は頻繁で、侍女も付けずに一人でアドリア宮に行かれております、何やら手には紙袋をよくお持ちです』


『その中身は何だ──?』


『そこまではわかりませんでした。アドリア妃と王太子妃はいつも寝室にある小部屋でお話をしていて、そこはアドリア妃のメイドや侍従もおいそれとは入れません』


『何と──分かった、ご苦労。今後も注視してくれ』


『はいかしこまりました──』


間者は顔を見せずに、ロバート王太子の執務室で内密に会話がなされていた。



ロバート王子は机の前でうろうろと歩きながら、何やら考え込んでしまう。



──なんだ、王太子妃はどうしたんだ?


これまでアドリア妃とは挨拶程度で、話なんかしたことすらなかったろう。


母上とアドリア妃が敵対してるのは、マリーも理解しているはずではないか。



一体なぜ? 何故だ──?


ロバート王太子は思案した。


先日、母上のメルフィーナ王妃から今夏までに公妾を作れと命令されたばかりだ。


王妃である母上の長年の怒りが爆発したような叱責だった。



まあ無理もない、マーガレット王太子妃が従順なのをいいことに、この3,4年程は俺は寝室は別にした。


娼婦館通いを含めて何人かと愛人は作るものの、母上から再三いわれていた側妃は面倒で決めずにいたのだ。



ロバートは、けっしてマーガレットを愛していないわけではなかった。


初めてデビュタントでマーガレット嬢を見た時、他の派手な貴族令嬢にはない、なんとも儚げな清らかさにロバートは惹かれたのだ、



もちろん王太子妃に決めた大きな要因は()()()()()()()という打算もあった。



王妃のいう通り、あの頃は自分に付きまとうエリザベスに報復したい一心で、マーガレットを利用したといわれても仕方がない。


だが、ロバートなりにマーガレット王太子妃を可愛がっているつもりだった。



しかし、肝心の夫婦の営みをロバートはおそろかにした。



理由は、マーガレットが酷く病弱で抱きしめると折れそうなくらい痩せていたこともある。

身勝手な言い分だが、ロバート王太子は、女との情事くらいは、気を使いたくなかった。



──母の話では、公妾の候補にエリザベスがいるという。


これも困ったなあ。


確かに俺はエリザベスに未練はまだある。

あるが、エリザベスは従兄弟エドワードの妻だ。


それに幼い娘もいる。


別居はしていてもエドワードは、未だエリザベスにぞっこんだ。



それに考えてもみろ!

エリザベスはあの気障だ。

妹のマリーの下に就くのは、エリザベスの矜持が許さないだろう。


それにだ、万が一公妾にエリザベスがなったら、今度はマリーはどうなる?


たぶん母上は、王太子妃の位を解いた後バレンホイム家に戻すか、慰謝料として年金や所領を与えるつもりだろうが、あいつは心底俺を愛しているからな。



もしかしたら、マリーは俺がいなければ生きていけないかもしれん。



ロバートは公務をしていても、マーガレット王太子妃の動向が気になって仕方がなかった。





※ 先日誤字報告してくれた方ありがとうございました。この場を借りてお礼致します。<(_ _)>


※ロバートは余りにも妻を子供扱いしてマリーの矜持すら気づこうとはしていません。

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