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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満


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81. アーサーとリリアンヌ(1)

2025/5/17 一部修正済み

※ ※ ※ ※



5月の晴れた日の午後。

ローズ公爵家では、青々とした芝生の広い庭園で茶会が行われていた。


今日は、ローズ公爵家嫡男アーサーの11歳の誕生日祝いである。

親戚と友人のみの簡素な茶会という割には、招待客がとても多かった。


特に子供の数がやたらと多い。

ゲーリー公爵の6人娘の子供や孫、グレースの実家の兄6人。その子供まで集まった。

下は4歳から上は18歳まで。子女は16歳までと。凄い人数である。


ゲーリーの先妻の6人娘の子は、またも全員女で、グレースの兄6人の子供もまたも全員男だった。


これは血筋なのか?

どこまでも双方の家系は女系と男系と二手に分かれていくのだろうか。



子供達の高い声が響く喧騒すら気にせずに、ゲーリー公爵が挨拶の後、乾杯の音頭を取って全員で乾杯した。

子息令嬢はジュースや炭酸水、紳士淑女はシャンパンだ。


その後は、招待客の各家族の代表が、アーサー子息にプレゼントを渡したりと、滞りなくイベントは続いた。



※ ※


式典の内容も終わり、今は楽しく懇談タイムになった。


父親のゲーリー公爵夫妻が、アーサー少年を連れて各招待客のテーブルを回っている。エリザベス夫妻のテーブル席にもやってきた。


ゲーリー・ローズ公爵がにこやかに言った。


『ルービンシュタイン夫妻、本日は息子の誕生日祝いに来て下さり、ありがとうございます。家内のグレース共々に感謝致します』


『とんでもない、こちらこそお招き頂きありがとうございます。妻と娘もグレース夫人には日頃から、いろいろお世話になり感謝しております』


エドワードも、深々と挨拶をしていた。



還暦手前のローズ公と、若いエドワードでは、親子ほどの年の差はあっても、この国の双璧をなす公爵領主だ。その二人が初めて相対(あいたい)した。

これまで二人は、王室行事や高位貴族の集会などでたまに見かける程度だった。

彼等は日頃、自身の領地経営に引っ込んでいる事もあり、王都にいる期間は少ない。


ただローズ公は最近変ってきた。

彼はエドワードと違い近隣領主なので、この王都の別邸に日帰りで帰宅できる距離でもある。


社交界の噂では「息子のアーサーが誕生されてからゲーリー公はとても若返ったな。嫡男が出来て嬉しいんだろう」と息子を溺愛しているとよく聞かれた。


ローズ公爵は初老とはいえ、いぶし銀の貴公子といってよい。

長身ですっとしており、黒いスーツが良く似合う。

髪は茶色で白髪は混じっていても、まだまだ豊かな髪。

瞳は淡い水色で端正な顔立ちに、口髭をはやしていた。


ローズ公が還暦近いと知るや、まず誰もが驚嘆する。ぱっと見40歳くらいといってもおかしくはない。


若い妻のグレースは、白のジャケットと銀色のタイトなアフタヌーンドレスを纏った姿。


夫妻が並ぶと年齢差など気にならない、とてもお似合いの夫婦に見えた。



『エリザベス、今日は来てくださってありがとう、息子のアーサーを紹介するわ』


『グレース、こちらこそお招きありがとう。──アンナ、リリーを呼んできてちょうだい。アーサー様にご挨拶を致しましょう』


エリザベスがリリアンヌを呼び寄せる。



リリアンヌは、アンナと少し離れた花壇の側にいた。


リリアンヌは花を愛でるのが大好きだった。

今見てるのは、赤や薄ピンクのツツジや、黄色のモッコウ薔薇が満開だった。


リリアンヌは花を眺めてるだけで楽しそうだ。面白い事に彼女はよく花の近くでブツブツ独り言をいっている。


まるで見えない花の妖精とお話でもしてるかのようである──。



ヨチヨチ歩きでリリアンヌがアンナとエリザベスの所に歩いてきた。

今日のリリアンヌは“水の小妖精”とまごうほど可愛すぎた!


ドレスの色は父親の好みの青色、白い水玉模様の目立つロマンチックドレスだ。

先日リリアンヌが消えた騒動の時、購入したグレースの子供服である。



『はじめまして、りりあんぬ・るーびんしゅたいんです、()()()()()()()()()ありがとうございます』


と、リリアンヌは下っ足らずだったが、可愛く挨拶とカーテシーもできた。



グレースは目を見開いていった。


『まぁ、なんて可愛いカーテシーでしょう。こんにちは。リリアンヌちゃん。ドレスも良く似合ってるわね。さあ、この子が息子のアーサーよ』


『初めまして、アーサー・ローズクォーツです。(ちまた)では皆さんはローズ公爵っていうけど、正式名称は()()()()()()()です。どうかお見知りおきください』


と、アーサーはなかなか公爵の嫡男らしい、ハキハキして良いが、生意気そう性質が見て取れる。



エリザベスは『あら、アーサーご子息はお母様にそっくりですわね、ずい分11歳にしてはとっても大人びてますこと』

と、彼女は彼女で正直な感想をいってしまう。


『はい、エリザベス様。僕は良くそういわれます。ね、父上!』

といって、アーサー坊やは父親のゲーリーにウインクをする。


『はは、見た目はともかく、まだまだ子供でヤンチャですよ』


とゲーリー公爵は嬉しそうに顔をくしゃっと笑った。




──まあ~ゲーリー公ったら、跳んだ親バカって顔してるわね。でも本当に母親に似てる。まるでグレースを少年にしたみたい! ふふ、なんだかリトル・グレースじゃないの。


エリザベスがそう思うのも無理もない、


金褐色の髪、目ははしばみ色のグレースと同じで、目の色が七色に変化するとこまで一緒だった。

服も紺のスーツと白シャツ。赤紺ストライブのネクタイと11歳にしては大人びていた。



そして突然、アーサーはリリアンヌに向かって子供らしくない、突拍子な発言をした!!


『ねえ、リリアンヌ。君ってさ〜すっごく可愛いね、本物の妖精さんみたいだよ! 決めた、君は僕の婚約者になってよ!』



大人一同たち『はあ?』と一瞬呆けた。



『アーサーしゃま、()()()()()()()ってなあに?』


リリアンヌは理解できず、キョトンとした顔で聞いた。



エドワードにいたっては、それまで子供の話に穏やかに聞いていたが、アーサーのとんでも発言を聞いてエドワードの顔はピキッっと氷のように固まった。




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