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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満


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57. グレース・ローズ登場

※ここからはエリザベスが分家に舞い戻ったので、王都編が始まります。なかなか過去に戻れなくて申し訳ありません。<(_ _)>

※エドワードが娼館を叩く回はこの3話後となります。

※エドワードファンの方、申し訳ありません。<(_ _)>


※ 2025/5/4

  

※ ※ ※



王都の公爵別邸タウンハウス


エリザベスの豪奢な部屋。



『ラララ~ララ~ラララァ~♪』


鼻歌を歌いながら、この夜、エリザベスはとてもご機嫌だった。



※ ※



タウンハウスで暮らし始めたエリザベスは、アクアマリンブルーの澄んだ海中で泳ぐエンゼルフィッシュのようだ。


腰まであるウェーブのかかった銀髪は、部屋の灯りで煌めいている。

寝間着姿といっても、薄緑色の足首が見えるシルクのネグリジェドレス。


エリザベスのエメラルド色の瞳とよく映えて、その瞳は歓びで輝いていた。


とても子持ちの公爵夫人とは思えない姿である。




セルリアン領の公爵領本邸ホームハウスから、ここ王都の公爵別邸タウンハウスへエリザベスが別居してから既に1年が過ぎた。



エリザベスは20歳になった。


ようやく本来の明るさと、以前のような傲慢さも戻ってきた。

一時、娘のリリアンヌを産んだ後の、海馬(トド)のように太った体型も、娘のケガで気落ちしてやつれた姿も今はどこにもない。



タウンハウスへ来てからのエリザベスは、憑き物が落ちたように食欲も戻り、王都の社交生活を満喫していた。


おかげで胸元の膨らみも戻り、ウエストは(くび)れて嫁ぐ前の理想体型に戻った。

最新流行のドレスも、難なく着れるようになったので、お洒落なエリザベスにはとても嬉しい事だった。



夫のエドワードとの別居生活は、この春までと約束だったが、エリザベスはあっさりと無視した。



王都に戻って、何年振りかで再会した独身時代仲間の令嬢たちと、会えたことも嬉しかった。



エリザベスは彼女らと連れ立って、茶会や王都の街へ出てショッピングをしたり、夜は観劇や晩餐会へ行く。



今は王都の社交生活が楽しくて仕方がないエリザベス。



彼女は奥底に、嫌な思い出、忘れたい出来事を封印した。


ここは静かなクイーンズ市とは違う。

王都のエネルギッシュな喧騒の中に(たたず)むと、娘のリリアンヌの足の怪我も難なく忘れられる。


外に出れば、何かしら新しい話題や面白いものに出くわした。


本来のアグレッシブなエリザベスの性分と王都は最適なマッチングだった。



※ ※



『ラララ~ラララランラン~♪』


髪をブラシで()かしながら、ずっと鼻歌を歌いご機嫌であった。



『奥様、本当に今夜は楽しそうですね、何か良い事でもがありましたか?』


『ああ、サマンサ、ここ(王都)では“奥様”は禁止といったでしょう。前みたいにお嬢様かエリザベスでいいわよ』


『わかりました、ではエリザベス様』


『そうそう、あのね、今日はとっても素敵な殿方とダンスをしたのよ! もう最高だったわ!』



『はぁ? 殿方ですか──』


サマンサは少々戸惑った。



『あ、殿方といっても、男装の麗人よ』


『はあ男装?』


エリザベスは満面の()()()()()()()をしながら、今夜の夜会を思い出していた。 





※ ※


この日のローズ公爵家の晩餐会でエリザベスは独身時代の取り巻き夫人達と参加した。


王都の高位貴族の屋敷でも、とりわけ豪華で華やかな屋敷の晩餐会だったが、立食パーティーだったので比較的若い成人以降の男女たちが多かった。



取り巻き夫人たちも、皆それぞれ既に結婚して家庭に入っていた。

彼女たちの中にも、出産して子供がいる夫人もいた。



だが皆、高位貴族夫人なので乳母に任せきりで夜会にも安心して参加できる。

エリザベスが王都に戻ってきてくれて、一番喜んだのは取り巻き夫人たちだ。



彼女が結婚してセルリアン領へ行った後は、華やかなエリザベスが恋しくて仕方がなかった。



エリザベスは傲慢で身勝手なところはあっても、仲間思いの()()()的なところがあって一部の令嬢たちからは大いに羨望されていた。



『エリザベス様、今日のターコイズブルー色のドレス、銀髪の御髪おぐしに映えてとても素敵ですわ』


『ありがとう、今夜の夜会の為に新調したのよ』


エリザベスのデコルテのドレス姿はとても華やかで、エリザベスの瞳の色と銀髪を引き立てていた。


『本当、とてもお綺麗ですわ、その見事なドレスはどこのお店でお作りになられたの?』


『あ、これ実はプレタポルテ(既製服)なのよ。ご存じかしら?ほらタウンモード街に新しくできたお店 "Queen Bee"(クイーンビー)のものよ』


『まあ、オートクチュールではないのですね?』


『エリザベス様ったら、ローズ家の晩餐で"Queen Bee"(クイーンビー)のドレスをお召しになさるとはさすがですわね』


『え、なぜかしら?』


『あら、ご存じなかったのですか? "Queen Bee"(クイーンビー)のマダムはローズ公爵夫人ですのよ』


『まあ、そうなの?』


エリザベスは驚いた。


何も知らずに偶然にも、今夜の夜会でこのドレスを選んだからだ。



その時、大広間の入り口付近で歓声が聞こえた。



『あ、ほらいらしたわ、ローズ公爵夫人よ』


『まあ、いつもながら()()()()()()()()()()!』


『本当、うっとりしますわ!』



取り巻き夫人たちが扇で口を隠しながら、ローズ公爵夫人を見てざわめく。


エリザベスもそちらに眼を向けると──。




グレース・ローズ公爵夫人は、周りの独身令嬢たちに囲まれながら現れた。


彼女の出で立ちは、黒いビロードのタキシードで、紫のシャツに同じ色のタイ。

白いブーツを履いて、手には銀色のステッキを持っていた。


金褐色のロングヘアをたなびかせて、颯爽と歩くその様は、まさに()()()()()であった。




──まあ、なんて素敵な方なんでしょう!


ローズ公爵夫人は、エリザベスたちに気付いて笑顔で近づいてくる。



そして、エリザベスの前に立ち、男性が淑女レディにする挨拶をする“ボウ・アンド・スクレープ”を軽やかにした。


『今晩は、美しいご婦人方、我が家の晩餐会によく来てくれましたね。夫に代わって礼を致します。どうか楽しんでいってください』


とはきはきした生命力のある声で語る。


エリザベスも取り巻き夫人たちも、膝を曲げて丁寧なカーテシーをする。


『お招きいただきありがとうございます、ローズ公爵夫人。夫人が以前から会いたいと申してたルービンシュタイン公爵夫人をご紹介致しますわ』


一人の取り巻き夫人が、エリザベスをローズ公爵夫人に紹介した。


『初めまして、エリザベス・ルービンシュタインと申します。本日はお招き頂きましてありがとうございます』と挨拶をするエリザベス。


『ああ、貴方がルービンシュタイン公爵夫人ですね、お会いしたかった──あら? そのドレスはうちの店のモノですね。とってもエレガントに着こなしている。とてもお似合いですよ』


『あ、ありがとうございます。実は公爵夫人のお店とは知らずに購入いたしましたの、試着した時にぴったりだったので、びつくり致しましたわ!』


エリザベスは、ドレスに気付いてくれてドキッとした。


『まあ、そうでしたか? 私どもの服をピッタリ合う夫人は中々いません、たいていは直しますからね。あなたのスタイルは、マネキンと同じ理想体型なのでしょうね』


とローズ公爵夫人は豪快に笑った。


『──あ、ワルツがかかりましたね。ルービンシュタイン公爵夫人せっかくですから、よろしかったら私と踊ってくれませんか?』


『え、わたくしと?』


『ええ、ぜひあなたと』


とローズ公爵夫人の整った顔立ちは、真っ直ぐにエリザベスを見つめた。



──面白いわ。それにこの方本当に女性なの?


エリザベスは率直に思った



ローズ公爵夫人は男装のせいか、不思議な中性的な魅力があった。

彼女のはしばみ色の瞳が、シャンデリアの光の加減でオレンジ色に煌めいている。



その差し出された手を、エリザベスは無意識にとっていた──。



そのまま2人は、ワルツのかかる大広間の中央へ行き一礼してから踊り始めた。




軽やかなワルツのリズムに乗ってエリザベスをリードする男装の麗人。


エリザベスは彼女が女性なのに、なぜか高揚した心持でドキドキ胸がときめいてしまった。






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― 新着の感想 ―
元通りの元気なリズに戻ってくれたのはいいけど…もうそのままエドワードとリリーはほったらかしになっちゃうんでしょうか…ローズ公爵夫人は、カッコいい男装スタイルなんですね〜(^^)
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