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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満


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51. リリアンヌの入院

2025/5/3 追加修正済み

※ ※ ※



リリアンヌが怪我をした後、すぐに王都で小児科の専門医に診てもらう運びとなった。


エドワードは、リリアンヌを王都へ大切に幌馬車で運んだ。



日頃利用している自家用馬車ではなく、幌馬車にしたのは、幌馬車の車輪が木製でなく、鋼鉄ホイールで出来ており、車輪の故障や田舎道では揺れが少ないと判断した。



それでも舗装されてない田舎道である。

少しでも揺れを少なくする対策として、幌馬車の床に厚手のマットを敷き、ベビーベッド用に固定位置も設置した。


ベビーベッドの底に、厚手のマットやクッションや敷いて、少しでもリリアンヌの負担が軽減するように徹底した。



おかげで、同行したエドワードや護衛騎士や看護婦、メイドたちまでも、通常の王都への旅よりは快適であった。



セルリアン領が、春の季節であったことも幸いした。


これがもし雪深い冬の時期なら、無理であっただろう。

領地を出るまで天候が悪化して、吹雪や大雪で道が阻まれたら、王都へ行くこともままならなかったのだから。


王都周辺に来ると舗装された道が多くなり、クィーンズを経ってから、1週間あまりで無事に辿りついた。



エドワードは一刻も早く、王都の専門医に見せたかったので、公爵別邸タウンハウスへ寄らず真っ先に病院へ向かった。


とにかく娘の足が気が気でなかった。



エドワードは仕事も、執事のアレクと領地の代行管理者たちに任せた。


付き添ったのはエドワードと、護衛騎士数名、看護婦と乳母の臨時のメイドのみであった。



エリザベスは娘の足のケガの話を聞いて、気が動転してしまって同行できる状態ではなかった。


その夜から不眠が続き、主治医が精神安定剤を処方するようになった。


ミナも同様、心が不安定になってしまい、片手も捻挫してるので、本邸から一端、家族の住む別邸へと帰省させた。



※ ※




王都の国立病院は、主に貴族や裕福な家庭が利用する予約制の病院である。


内科、外科と、各病状に分かれて専門の担当医がついている。この時代まだ希少な小児科外来もあった。

早速、小児科外来でリリアンヌの足を医師に診察してもらった。



専門医師の触診や打撲痕、腫れ、内出血と丁寧に診察して総合的な判断などから、やはり右足首の骨が折れてるとの見解だった──。



専門医が言うには、このまま病院で骨が癒合ゆごうするまで入院させた方がいいだろう、また、病院には小児科専門の医者や看護婦がいて、完全看護をしてくれる。


家で養生するより、リリアンヌの回復も早いだろうと入院を勧められた。


エドワードは医師のいう通り、リリアンヌを入院させた。




──ここには、クリソプレーズ王室御用達の名医がいる。


エドワードはリリアンヌを預けても、安心できる病院だろうと判断した。




※ ※




夏が過ぎ初秋を迎えた頃、リリアンヌの骨折は無事に完治した。


この間、エドワードがセルリアン領と、王都と行ったり来たりしていた。


リリアンヌの足の経過は順調で、笑顔でつかまり立ちもできて、なんとか歩けるようにもなった。

ただ、残念ながら歩行の時、右足を少しだけ引きずっていた。


医者が言うには、歩く分には心配ない。

だが、膝の靭帯を痛めており、足を引きずる後遺症の可能性はあるので、退院しても定期的に健診して欲しいと云われた……。



エドワードが医師の話を聞いて、落胆したのはいうまでもない。



※ ※



少し時を(さかのぼ)る──。


火事の数日後、公爵領本邸ホームハウスの納屋の小火(ぼや)の原因を調査したところ、一人の若い従者が飲酒時に、煙草の不始末によるものだと発覚した。



その若い従者も故意ではなかっために、()()()()()処理した。


それでも注意義務を怠ったため、過失責任として、エドワードは働いた分の給金と退職金を渡して解雇とした。



厩舎の責任者のキースも、今年の夏に支払う特別手当ボーナスは無しとなった。



エドワードはキースについては、お咎めなしにするつもりだったが、それでは厩舎長として示しがつかぬとキース自らが(かたく)なに拒否したのだ──。




乳母のミナは、リリアンヌの右足の後遺障害が残ると知らされて、更に精神的ショックを受けてしまう。


終いには、お乳も出なくなってしまうくらい気を病んでしまい、ミナとその家族は途方にくれた。




※ ※



エドワードと、夫の護衛騎士団長のドナルドが、ミナのことで相談していた。



『困ったもんだな、ミナのお乳がでないとなるとリリーもだが、ミナの赤ん坊まで困るだろう……』


『本当に申し訳ありません、旦那様。多分リリアンヌ様のケガで、妻は一時的にショックを受けたのではないかと……』


 ドナルドが、申し訳なさそうにいう。




『気にするな、だが困った⋯⋯う〜ん、なにかいい方法はないものか……』



『あの……実は旦那様、妻の姪なんですがアンナという今年10歳になる娘がおりまして、この子を妻が非常に可愛がってるんです。できれば短期間でもいいのでアンナを、妻の側におけば心が休まるかもしれません』


『ああ、それはいい考えだ! その女の子をミナに付き添わせろ、その後もリリーの専属メイドにすれば、将来、娘の遊び相手にもなろう!』



エドワードは早速、ミナの姪のアンナをリリーのメイドにして彼女の傍に置いた。



ほどなくしてミナもアンナが来てくれたおかげで、大分心が慰められたのか、母乳もスムーズに出るようになった。



結局、アンナはその後も本邸に移り住み、後にはリリアンヌの筆頭メイドになった。




だが、ただ一人まだリリアンヌの怪我から、心を病んでいる者がいた。



母親のエリザベスである──。



あの日以来、好きな乗馬もせずに部屋に1日中部屋に引き籠るようになってしまった。





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― 新着の感想 ―
これが原因でリズは変わってしまったのかな…可哀想ですね…
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