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クリソプレーズの瞳 ~ルービンシュタイン公爵夫人は懺悔して夫と娘を愛したい!  作者: 星野 満


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46. エリザベスの執念

※ 2025/5/2 修正済

※ ※ ※ ※



4月に入り、丘陵地帯の日照時間もだいぶ長くなり、雪解け間近となってきた。


新年からのエリザベスのダイエットは続いている。


とにかくエリザベスのダイエット執念は、傍から見ても凄まじいものがあった。


お陰でダイエットを開始してから3カ月以上、エリザベスは、だいぶスマートな体型になってきた。だが本人は納得せずに、以前の体型にとことんこだわっていた。


何よりも衣裳部屋の独身時代に、購入したお気に入りの()()()()()()()()()が、全く着れなくなったことに癇癪(かんしゃく)を立てたのは他ならぬエリザベス本人であった。


今日も、かれこれ60分ほど必死に、駆動式自転車のベダルを漕いでいた。


エリザベスの体は汗だくだ。


トップに(まと)めた銀髪を振り乱し、白いブラウスと紺のキュロットスカートと軽装だが、すでにブラウスは汗にまみれて身体にべっとり張り付いていた。


『奥様、そろそろお止めになられた方が良いかと。この()()()()()()のせいで、昨日もやりすぎて、泡を吹いてお倒れになりましたでしょう……』


サマンサは気が気でない。


『はぁ、はぁ、サマンサ、今日は大丈夫。あと少しだけさせて頂戴。このお母様の痩身用駆動式自転車(フィットネスマシーン)とても効くのよ、マラソンよりずっといいわ。元のサイズのコルセットを付けられるまでの辛抱よ!』


『奥様………わかりました。あと少しですよ』


サマンサは根負けした。


ちなみに痩身用駆動式自転車(フィットネスマシーン)は当時王都の貴婦人たちの間で、一時大流行した時期があり、母親のセーラも中年太りを気にして購入した。


しかしセーラには、『こんなものとても無理よ!』

と運動が辛すぎたのか3日坊主で止めてしまった。


そのままバレンホイム家の、倉庫の(ほこり)まみれになっていたものだ。


エリザベスは痩身器具があったのを思い出して、母親のセーラ宛に手紙を書き、わざわざ本邸まで荷馬車で送ってもらった。


※ ※



エリザベスは運動で身体を酷使しながらも、同時にダイエットの基本である食事も、徹底的にカロリー管理もした。


大好物のチョコチップクッキーや、ケーキの間食も一切とらなかった。


ティータイムはお茶だけ、たまにデザートの果物を一切れか二切れくらい。


朝晩の食事も料理長に頼んで、自分だけ別メニューにしてもらった。


ディナーのメインの肉料理は牛や豚よりも鶏肉。

肉よりも魚料理に変えたりと、魚も脂身が少ないタラやカレイと徹底した。


時折り、自分が魚料理を食べてる時に、エドワードが肉料理、特にエリザベスの大好物のほろほろ鳥のステーキを食してると、肉の甘いソースの匂いが漂ってきて(よだれ)がでそうになる。


そこをぐっと我慢をしているエリザベスは、物欲しそうにエドワードをじっと見つめる。


エドワードはなんだか妻に申し訳なく、鶏肉のステーキを食べても味が良く分からなくなるほどだった。


※ ※



涙ぐましい努力のかいあってか、エリザベスは4月の中ごろには、以前のすっきりとした体型になりつつあり、二重顎も消えて若々しくなりとても細くなった。



しかしエリザベスは、()()()()満足はしていなかった。



ある日、エリザベスは部屋の天蓋ベッドの太い柱に捕まり、サマンサにコルセットの紐を、きつく結んでもらうよう指示した。


『ひぃいいーー!!』


エリザベスは痛さのあまり絶叫した!

このコルセット縛り時の苦しさったらない!


『サマンサ、もっときつく締めてちょうだい!』


苦しくても、エリザベスは容赦なく自分のウエストを締め付けようとする。


『奥様、これ以上はさすがに無理でございます!』


『ハァ…ハァ……そんなことないわ。あと2センチきつくできるわ』


息が荒く苦しそうなエリザベス。


『奥様は一度赤ちゃんを産みなさったのだから、仕方がないですよ……』


『うう……赤ちゃんなんて、産まなければよかったわ!ウエストは淑女(レディ)の命よ──!』


この2人の会話を、もしもエドワードが聞いてたらと思うとゾッとしただろう。



しかし、美を追求するエリザベスにとっては海馬(トド)の体型は、食欲に溺れ自分でも酷く惨めで“あんな思いをするのは二度とごめんだ”と、心に言い聞かせていた。


サマンサが心配だったのは、エリザベスがこのところダイエットに夢中になりすぎて、リリアンヌを乳母のミナにまかせきりになっていたことだ。


最近は赤子を抱くことすらしない、エリザベスは母親らしいことは何一つしていなかった。



──確かにリリーは可愛い、あの天使の笑顔をみてると心は癒される。


エリザベスは思った。


それでも男の子なら良かったのにと。


だって出産が一度切りで済ませられたんだもの。


それに旦那様は相変わらず私よりも娘にべったりだし。なんだか旦那様を取られたみたいで、悔しくてたまらないわ!


でもエリザベス、もう少しの辛抱よ。

あと3キロ痩せたらまた旦那様と……うふふ。


エリザベスは意味深な不敵な笑いをする。



『サマンサ、お願い、もう一回きつく締めてちょうだい!』


エリザベスは再度、コルセットの紐をきつく結ぶようサマンサに依頼した。





※今日はサイトのリニューアルでストックした文章がなかなか修正できず大変でした。(ToT)/~~~

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― 新着の感想 ―
出た!フィットネスマシーン!自転車…?と思いながら読んでいたら…w それにしてもリズの執念はすごいですね!3ヶ月でそんなに痩せるなんて!僕も一時すごく太ってた時があって、健康のためにもですが、痩せよう…
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