21. エドワードの僥倖と誓い
2025/9/26 修正済
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ロバート王子と妹のマーガレット嬢の婚約が決まってすぐに、ルービンシュタイン公爵家はバレンホイム侯爵家のエリザベス嬢を、エドワードの妻にと婚約を申し込んできた。
エドワードにとっては、思いがけない幸運が突然舞い込んできた。
エドワードは知らなかったが、一昨年亡くなった父親のジョージ公とバレンホイム家のパリストン侯は旧知の仲だったらしく。
昔から『いつかお互いの息子と娘が生まれたら、姻戚関係になろう』と家同士で決めていたそうだ。
ちなみにバレンホイム家の先代パリストン侯はエリザベスの祖父である。
エリザベスを過去に戻した黄金の砂時計を与えた御仁だ。
バレンホイム家には3人子供がいた。
嫡男の兄のカーラルとエリザベスとマーガレット。
兄がバレンホイム侯爵の家督を継ぐ予定なので、実家の跡継ぎ問題はクリアしている。
妹のマーガレットは今春にロバート王太子と婚約をする。
必然的に残った長女のエリザベスが、ルービンシュタイン公爵家に嫁ぐこととなった。
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エドワードは初めエリザベスとの婚約話を勧めた王妃からこの話を聞いた時は、嬉しさよりも戸惑いが強かった。
エドワードはエリザベスが王太子妃になれなかった失意もあり、内心すんなり自分との婚約を承諾するとは思えなかったからだ。
だが思いがけなくバレンホイム家に赴いた使者がすぐ戻り、エリザベス嬢があっさりと承諾したと聞いた時は信じられない思いだった。
『まさかエリザベス嬢が私のフィアンセになるなんて!こんな夢みたいな僥倖があっていいのだろうか?』
エドワードは思わず自分の頬をつねった!
とても痛かった!
その後、二人の婚約は両家を交えて成立し結婚式の日取りも、とんとん拍子に決まっていった。
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婚姻にあたって、エドワードは一つだけ己の中で誓いをたてた。
それは王子に失恋した傷心のエリザベスを、とことん自分が気遣いながら癒していこうと愚直に決めた。
エドワードがエリザベスに惹かれたのは、もちろん見た目の華やかな美貌に魅せられたのはいうまでもないが、けっしてそれだけではなかった。
エリザベスの態度は高位貴族特有の上から目線の高慢さはあるものの、常に猪突猛進型、ストレートな物言いだけで底意地がけっして悪い女ではない。
彼女と話してみて気付いたのだが、裏表のないタイプ、いわゆるバカ正直すぎるだけである。
よくいる陰湿でネチネチ系の徒党を組んで、下級貴族の令嬢を虐げる令嬢ではない。
それでいて奸計をはりめぐらす狡猾なタイプでもなかった。
──兎に角、周りの空気が読めない誤解されやすいが、常に自分に正直なレディなんだよな。
とエドワードはエリザベスの性格を見抜いていた。
まだまだ此の時のエドワードは、生涯エリザベスを大切に愛し抜くと心に固く誓っていた──。




