01. ホームハウスに戻ってきた!(1)
2025/4/21 修正
◇ ◇ ◇
「奥様、エリザベス奥様………」
エリザベスは聞き慣れた、メイドのサマンサの声で目を覚ました。
「ようやくお目覚めですね、昨日はお疲れだったようですね。もうお昼過ぎでございますよ」
サマンサはバルコニーの窓を覆っている、金銀糸を織り込んだ錦織のクロームグリーン色のカーテンをゆっくりと開ける。
部屋のバルコニーから差し込む日差しは眩しく、太陽は既に高い位置へと昇っていた。
天井にはクリスタル硝子が輝くシャンデリア。
白壁には大きな木彫りの梟の形をした飾り時計が、1時半を指している。
「…………!!」
エリザベスはハッとして、すぐさま身体をベッドから起こした。
今は初夏なのだろうか──。
窓からカラッっとした爽やかな涼風が、吹いていて心地よい。
エリザベスはフカフカの柔らかな天蓋ベッドの上にいた。
どこかうっすらと記憶のある、豪奢な部屋と眩しい白いバルコニー。
エリザベスはベッドから跳び起きて、ぐるりと周りを見渡した。
──ここって、わたくしの部屋だわ……よね?
いや……でも、何か違うような……?
エリザベスは外へ飛び出して、2階のバルコニーの手すりから外の風景を見渡す。
「ああ、ここは……!!」
見渡す風景は、初夏の日差しが注ぐ光の中で、輝く新緑の木々に囲まれた広大な敷地。
邸内には彩り豊かな花々や、木々が生い茂る芝生の広大な庭園がある。
屋敷の大きな門の外には、そのまま続いていく赤茶色の大きな道があり、辺り一面には丘陵の田園風景が見える。
丘陵の農作地帯から少し離れた左側に見える街はクイーンズ首都だ。
王族の避暑地の城や、市街地の家々や教会の屋根が見える。
更にその先には蒼い山々が覆われており、丘陵の穀物畑の金褐色や、夏の花々の赤や紫色などで見事なコントラストを見せている。
「……ああ、やっぱりセルリアン領の公爵領本邸ね!!」
「はい奥様、昨日は王都から何日も馬車で揺られましたから、さぞや今朝はお疲れでしょう」
──そうだわ、ここは夫のエドワードの領地・セルリアン領クィーンズ市街から少し離れた場所にあるホームハウス。
王都ではルービンシュタイン公爵家は、王宮に近い公爵別邸に滞在するが、本来はセルリアン領地に公爵領本邸がある。
わたくしも年に一度、夏の合間だけは北の涼しい避暑地に来てたのよ──。
「ああ、やったのね、成功したんだわ、過去に戻ってこれた!!」
エリザベスは砂時計の魔法が叶えられたのが、嬉しくてその場で天にも昇る様な気持ちになった!
エリザベスはなんとか過去に戻れたようです。