3-7-① 青きフクロウと深慮の部屋
青い扉を開け、4人は部屋の先に進む。
「そのチビは参加しないんだな。」
ヴァラキがそう言ってエッツェルと一緒にいた子狼に目を向ける。
子狼は部屋の中心に残り、扉を進む4人を見送っている。
「この子はお留守番。」
エッツェルがそう言う。
「行くぞ。」
キールがそう言って足を踏み出す。
他の3人も前を向くと、キールに続きように扉へ入っていくのだった。
▽ △ ▽
扉の先には巨大な空間が広がっていた。
半球状の空間は広く、その直径は50m程の距離があるようだった。
静寂の中、エッツェルが最初に反応を示す。
「上にいるっ‼」
エッツェルの声に3人が上を見上げた瞬間、“それ”は姿を現す。
鋭い瞳、尖ったクチバシ、そして鋭い鉤爪。巨大な青いフクロウが4人を見下ろしていた。
≪hooooooooooo‼≫
フクロウは一鳴きすると羽ばたいて4人に向かい合う。
次の瞬間、フクロウの周囲に尖った氷柱が発生し、4人に向かって放たれる。
「魔法を使うのかよっ‼」
ヴァラキが驚いたようにそう言う。
4人は散らばるように飛来する氷柱を避ける。
しかし、今度は4人を取り囲むように氷の壁が出現し、4人は再び1箇所に集まる。
その時には、フクロウが4人に向かって突進しており、鋭い鉤爪が迫ってくる。
「任せろ‼」
モンタックがそう言って前に飛び出すと、大盾でフクロウの攻撃を受け止める。
鍛えられているだけあり、モンタックはフクロウの突進を待っ正面から受け止める。
「今だ‼」
ヴァラキがそう言って槍を突き出す。
キールとエッツェルもフクロウに切り掛かるが、すぐにフクロウは上昇してしまう。
上空に飛び立ったフクロウは再び鋭い氷柱を発射する。
4人は先程と同様に攻撃を避けるが、出現する氷の壁によって進路を塞がれる。
「さっきと同じだっ‼」
そうヴァラキが呟いたように、再びフクロウが突進を始める。
モンタックが盾役として突進を受け止め、3人が攻撃を仕掛けるが避けられてしまう。
今度は、キールが炎魔法を飛ばすが、フクロウはそれを易々と避け、再び氷柱を発射する。
ループのように同じ攻撃が繰り返され、4人はそれに対応を続ける。
延々と続く攻撃は4人の体力を徐々に奪っていく。
同じ攻撃が何度続いただろうか。キールは必死に現状の打開策を考えていた。
▽ △ ▽
「何故この攻撃方法に固執するんだ?」
キールが小さく呟いて、何度目かの飛来する氷柱を避ける。
本当はもっといい戦い御方があるんじゃないか。そんな考えがキールの頭をよぎる。
「きっとこの攻撃方法である必要性があるんだ。」
上空にいるフクロウを攻撃するためには、魔法以外ではフクロウが攻撃する為に武器の届く場所まで降りてきているタイミングを狙うしかない。その意味では、4人が待ち構えている場所に突進する今のフクロウの攻撃方法は最前種には思えない。
キールはそんなことを考えながら、モンタックの陰に隠れる。
何度目かの突進をモンタックが受け止める。その額には汗が滲み、モンタックは肩で息をする。
「そろそろ、どうにかしなければ。」
そう言ってキールがフクロウを見上げる。
氷柱が飛来し、それを避けた先に氷の壁が出現した時、キールはシンプルな答えに辿りつく。
「そうか。奴は俺達に散らばられたくないのか。」
ただ攻撃するだけなら、わざわざ氷の壁を出現させる必要はない。
氷の壁は4人が散らばるのを防ぐことだけに機能している。
「なら、すべきことは1つだ。」
キールはそう言って笑うと、モンタックの盾の陰に隠れるタイミングで3人に耳打ちをする。
3人は無言で頷くと、フクロウに攻撃するふりをして、そのまま四方に散らばる。
フクロウは攻撃がくると思い上空に退避する。
そのまま氷柱を出現させようとして、、、それを取りやめる。
四方に散らばった敵を見たフクロウにキールから炎魔法が飛来する。
キールは相手を挑発するように魔法を放ち、フクロウの注意を引き付ける。
フクロウがキールに氷柱を集中砲火するが、キールはあっさりそれを躱す。
それを見たフクロウはイラついたように鳴くと、キールに向かって急降下し突進する。
「これを待ってた。」
キールはそう言うと、こっそりモンタックから借りていた大盾を構える。
大盾にフクロウの鉤爪が襲来し鈍い音が響く。
キールは大盾で攻撃を受け止め切ると、そのままフクロウの足を掴む。
フクロウは驚いたように飛び上がろうと翼を羽ばたかせる。
「今だ‼」
キールが叫んだ瞬間、フクロウの右翼の付け根をモンタックのメイスが打ち砕く。
フクロウは悲痛な叫びをあげるが、さらに左翼をエッツェルの剣が切り裂く。
「これで、どうだっ‼」
そんな叫びと共にヴァラキの槍がフクロウの胸を貫く。
フクロウは光の粒となって飛び散る。
その場には1欠片の大きな青い魔石が残る。
「終わったのか?」
モンタックがそう呟く。
「案外あっさり片付いたな。」
ヴァラキがそう言って魔石を拾い上げる。
魔石は深い青色をしており、その形はキール達を閉じ込めた扉の溝と同じ形をしていた。
「取り敢えず、最初の部屋に戻ろう。」
キールがそう言い、3人も頷く。
最初の試練が終わった。
▽ △ ▽
部屋に戻った4人を子狼が迎える。
気のせいかもしれないが、少し子狼が大きくなったように感じる。
「扉の溝に魔石を嵌めてみよう。」
ヴァラキがそう言って魔石をキールに渡してくる。
キールは魔石を受け取ると、そっと扉の溝に魔石をはめ込む。
その瞬間、魔石が輝きを放ち、部屋の反対側の壁に文字を浮かび上がらせる。
浮かび上がった文字列は、1つの文章を表していた。
「深慮の先に断罪はない。断罪の先には深慮なき己への断罪が訪れるであろう。」
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