普通のお母さん
あなたの「普通」は何ですか?
私は普通に生きてきた。
普通の両親の元に生まれ、普通の友達に囲まれ、普通に大学を卒業し、普通の会社に就職し、普通に結婚し、普通に子どもを産み、今は普通に主婦をしている。
でも、普通ってこんなに難しかったかな。
「ユウジ、もうやめて。」
どうしてこの子は「普通」じゃないのだろう。
「お前・・・お前殺すぞ!」
ユウジは中学2年生。とても明るくて、友達も多い子。
そんなユウジは、お母さんには似なかったのね。
「おい、お前、なんとか言えよ!」
ユウジは、幼い頃から周りを笑顔にできるとても素敵な子。
「なぁ、なぁ!なんなんだよ!」
ユウジはとてもとてもかわいい顔をしていて、女の子にも人気。
「・・・おい!もう、もう、やめてくれよ!母さん!」
ユウジは私の子。
「母さん・・・」
ユウジは私の子。
「母さん・・・」
ユウジ、お母さんね、普通に生きてきたの。そして、それはこれからも変わらないの。
「ユウジ、普通ってなんだろうね?」
「かあ・・・さん・・・」
ユウジ、お母さんね、あなたが私に似てないって、本当は最初からわかってたんだ。
あなたが生まれたのは、どこの女かも知らないお腹。
私は普通に子どもを産んだ。はずだった。でも、それは「普通」じゃなかったね。
知らない女のお腹の中で育って、今度は知らない女がお母さん。
ユウジ、あなたは「普通」じゃなかったね。
「ごめんね、ユウジ。」
私、もう、普通にお母さんやめるね。