さよなら夏休み・1973
もう二度と経験できないこんな懐かしい夏休み。
あの長かった夏休みに「さよなら」を告げてみました。
手の届きそうな入道雲
緑色に光る木陰
麦わら帽子 浮き輪 海水パンツ 駆け出すビーチサンダル
広がるスイカ畑
おやおや坊主。どこへゆく。帰りに寄っていきなさい。
冷やしたスイカを差し上げよう
ありがとう。必ず寄るよ。待っていて。
あぜ道 出店 松林
灼ける白砂 広がるブルー
拍子のとれない波の音
打ち寄せる泡 大音響
しょっぱい舌ベラ ペッペッペッ
黒光りの肌 楽園の浮き輪
火照った体は 海の家
砂まみれの茣蓙 かき氷
爪先の砂 扇風機
うたた寝の顔 通り抜ける風
そうだスイカだ!忘れてた!
松林 出店 あぜ道 スイカの畑
おやおや坊主。来なすった。
バケツの中で冷えている。ガブリガブリと召し上がれ
おなかいっぱい おじいさん ごちそうさまだよ皮もらう
軒先に揺れる南部鉄
打ち水 朝顔 向日葵の花
まだまだ凍らぬシャービック
ストローと 冷えた濃縮カルピス
算数ドリルと書き取り帳 夏休みの友とヘチマ日記
栞代わりに挟んだプールカード 椋鳩十の文庫本
おがくずを敷いた水槽 カブトムシ いただいたスイカの皮
簾 縁側 オレンジの色の夕立ち
カナカナカナ 夕刻の蝉時雨
日没間際にかかる虹
蚊帳の鳥かご 線香の香
明日の朝も あの娘に会える 7時半
枕元のラジオ体操カード
キリギリスの奏 五線譜の天の川
まだまだ長い夏休み
※ただ単語を並べただけの詩ですが、お読み頂き誠にありがとうございます。