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住宅営業『斎藤』の物語

『お願いしま~す』



ここは市役所の3階。




都市計画課があるこのフロアいっぱいに田中さんの声が響き渡った。




この体のどこからこんな声が出るんだろうといつも思う。




『はい、はい~』




そういって、受付っぽい女性が窓口にまで歩いてきた。





『えーと、中区のここ。ここで住宅の建築を希望されている方がいるのですが、




この土地の法的なものを教えてもらいに来ました!』





『法的なもの?』




『あー建ぺい率とかです』





『あーはいはい。ちょっとお待ちくださいね・・・』




そういうと市役所の女性はカウンターを離れて、何やら資料がまとまっているとことまで行くと、A2サイズの大きな資料を持ってやってきた。




『えっと、希望地はどこでしたっけ?』





『はい!中区の消防署に近い・・・・えっと番地はここです!』




『はいはい・・・・ちょっとお待ちくださいね・・・・』




そういって女性は大きな資料をパラパラとめくりだす。




『大丈夫ですかね・・・・』




俺は田中さんに耳打ちするように話した。




『なにが?』





『なにがってあの人受付の人でしょ?奥にもっと詳しそうな人がいるじゃないですか。





あの人に聞かなくて大丈夫ですか?』




『あぁー・・・・





大丈夫だから、今日は黙ってもらっていていいかな?』




『・・・はい』




そんな会話をしていると、受付の女性が声をかけてきた




『ありました、ありました、ここですね』




それを田中さんが応える。




『そうです、そうです。ここですね。




では教えてもらっていいですか?お願いします。』




俺は内心大丈夫かよ?なんて思いながら聞いていると・・・





『まず、建ぺい率、容積率は60の200で、ただ角地ですので、緩和措置が受けられますね。




その他、日影と隣地はありません。




ただ、全面道路が狭いのでセットバックと、道路斜線も気を付けなくてはいけないかもしれませんね。』





『そうですね・・・・




準防火エリアが近いのですが、ここは大丈夫ですか?』



『えっとちょっと待って下さいね・・・・防火、防火・・・・あった、あった。




ここは大丈夫ですね。法22条での指定になっています。




あと、第2種の風致地区内ですね。




届け出が必要になってきます。』





『風致地区の届け出はこちらで良かったでしたか?』




『いいえ。風致地区は別の管理になっており、都市整備課での検討になります。




都市整備課への案内は必要ですか?』




『大丈夫です。ここの4階でしたよね?以前行ったことがあるので分かります。




あとどうでしょう?




埋蔵物なんかは大丈夫でしょうか?』




『埋蔵物の管理は同じ3階の教育課の担当になるので、そちらで聞いてみてください。




あと、道路の幅員等は道路管理課へ、水道、下水は水道課までお願いします。』





『分かりました。ありがとうございます。




それではまたお願いします。』




ここまでの会話、俺には半分も分からなかった・・・




短い期間ではあったが、教育も受けてきたし、自分なりに問題が無いように色々調べてきたのに・・・・




『じゃあ、いこっか』




そういって、田中さんは教育課の方に向かっていった。




そこでも俺は会話の半分もついていけなかった。




そこの担当も明らかに受付の女性だったのにだ。




受付の女性にも負ける知識しかない俺・・・




その日の俺は田中さんの後ろをついていくだけで、何もすることが出来なかった・・・・

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