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第6話 石の街

 簡素な四角い建物が並ぶ街――コアデザート。



 広大な白砂漠の中で、ひっそりと蜃気楼のように佇んでいる街。


 まるで神々にさえ忘れられてしまった、かの小さな小さな楽園エデンのよう。



 しかし一歩足を踏み入れてみれば、そこには確かに人間の住まう世界があった。


 土と石で造られた白い家々や様々な店が、ずらりと大通りを挟んで並んでいる。



 パッと見た感じでは雑多な印象を受けるが、よくよく見てみれば碁盤目状に整備された街であるようで。


 地図がなくとも方角さえ見失わなければ迷うことはないだろう。



 今にも白砂漠に呑み込まれてしまいそうな小さな街だが、通りには多くの人間が行き交っていた。


 皆一様に、銀の刺繍に縁取られた白い民族衣装を着用している。



 露店には鮮やかな色彩の野菜や果物が並べられ、新鮮な香りを飛ばしていた。


 しかし、砂漠で採れる類のものではない。


 恐らくは地下の農園施設で人工栽培されているのだろう。



「アリエス。あなたは少しここで待っていてください」



 久しぶりに訪れた人間の住まう場所。


 緑色の瞳を大きく見開き観察していたアリエスに、スウィンザはいつもの抑揚のない声でそう告げた。



「スウィンザ、待って。何処へ行くの?」



 石造りの正門を潜った広場で。


 置き去りにされる不安に襲われたアリエスは、堪らず大きな声で呼び止めた。



 アリエスの返答など待たずさっさと街の中へと歩を進め始めていたスウィンザが、彼女の声に足を止めゆっくりと振り返る。


 しかし、AIである彼の顔には何の感情も見られはしない。



「安全かどうか調べてきます」


「ま……待って! ひとりにしないで……」



 一言理由を述べただけですぐに離れていこうとするスウィンザに、アリエスは懸命に食い下がる。


 目的地へ着いてしまった今、どうしてもひとりにはなりたくなかった。



「? どうしたのですか? 情緒不安定のようですが?」


「――いいよ、もう……安全かどうかなんて調べなくてもいいんだよ、スウィンザ」



 小さく声を落としたアリエスを見て、スウィンザが愁眉を開く。


 表情筋を器用に動かし、意図的に驚いた表情を作ったようだ。



「何故ですか? あなたは恐くないのですか?」



 彼の言葉にアリエスはぐっと喉を詰まらせた。


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