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第5話 人工知能生命体

「うっ、嬉しいよ! ほら、わたしは喜んでる! ああ、やっとコアデザートに着いたんだね、良かった! ――だからお願い、スウィンザ。それ以上深く考えないで!」



 慌てたせいでつい棒読みになってしまった。


 逆効果だったかもしれない、とすぐにアリエスは後悔した。



 けれど幸運なことに。


 スウィンザの方はなんとかアリエスの言葉に納得してくれたようで。



 あっという間に混乱は収束し、平静さを取り戻していく。



「……そう、ですか。それは良かったです」



 満月の夜、砂漠に咲くという黄金の花。


 そんな花を連想させるような輝く笑顔を見せるスウィンザを、今回ばかりは恨めしく思う。



 けれど彼に罪はない。


 ほんの一欠片さえも悪意はない。


 だから彼を責めるのはお門違いなのだ。



 そう分かっているのに、それでもアリエスの心は苦しかった。


 だから。



「ねぇ……スウィンザ。また歌ってくれる?」


「? 昨夜も歌いましたが?」


「うん。でも、今夜もお願い。ほら……最後になるだろうから」



 背後へと身体を捻った状態のアリエスが、上目遣いでお願いすると、



「……はい、分かりました」



 少し間をおいて、スウィンザは静かにそう答えた。



 そんな彼の態度についいろいろな反応を期待してしまう。


 もっと淡々とした返答をしてくれたのならば、無駄な願望を抱くこともなかっただろうに。



 時々、アリエスはこう思ってしまうのだ。


 この優れたAI(人工知能生命体)は、本当は普通の人間なのではないのか、と。



 ――そんなわけないのに。



 意味のない願望を断ち切るかのように。


 軽く頭を振ったアリエスは、次第に輪郭をはっきりさせてきた街へと砂船サンドボートを進ませた。


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