第46話 破滅
「い……や、どうして、あなたも……」
淡い空色の瞳を陰らせて、スウィンザは緩く首を振る。
「私の中にある制御装置は……アリエス、あなたのものとは違って現在作動していません。〈ニュークリアス〉に感知されないために完全停止した状態なのです。起動させるには、私の全動力を注ぐ必要があります」
スウィンザが持つ制御装置。
それは彼の生命活動を引き替えにして動き出す。
まさに〈破滅〉を意味していた。
「いや、い……や!」
泣き叫ぶアリエスを立たせ、制御室から退出させようとするスウィンザ。
アリエスは小さな体に精一杯力を込めて抗う。
「いやだよ、スウィンザ、スウィンザ……スウィンザ!」
こんな形で別れるなんて嫌だ。
彼を犠牲になんてできない。
スウィンザはAIなんかじゃない。
誰かを思う心を持った人間だ。
自分と同じ大切な――。
「お願い、スウィンザ!!」
駄々をこねる子供のように、ただひたすら首を激しく振り続ける。
白い床を踏みしめて、力の限り拒否を示す。
しかしAIである彼の腕力に勝てるはずもなく。
アリエスの身体は引き摺られるようにして出口へと連れていかれる。
「時間がありません。今この瞬間も、〈ニュークリアス〉は人間を殲滅せんと動きだしています。早く制御装置を取り付けなければ」
「いや、やめて……お願い……」
ずるずると出口へと容赦なく引かれていきながら、アリエスは考える。
考えて考えて、そしてぐっと強く目を瞑った。
「お願いだから――RD505!!」
狂ったように首を振り、自分の喉を引き裂く勢いでアリエスは叫んでいた。
ただただ彼を止めたくて。
無我夢中で声を嗄らしていた。
真名を呼ばれた彼は、ピタリと動きを止める。
全ての動きを拘束する力にAIは力を奪われてしまうはず。
けれども――。
それは一瞬だけで。
自我を持ってしまったスウィンザを止めることは適わなかった。




