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第4話 少女とAI

 スウィンザと一緒に研究所を発ってからそろそろ半年が経つ。


 長いようで短かった日々を思い出すと、なんだか寂しい気分になる。



 ここへ来た理由を鑑みたならば当然とも言えるのだが、それ以外の理由でもこの旅が終わってしまうことに寂寥感を抱かずにはいられない。


 実際、何度もアリエスはこう願ったものだ。



 永遠に辿り着けなければいいのに――と。



 けれどそんなアリエスの思いなど、背後で美しい白金髪を風に靡かせているスウィンザには届くわけもなく。



「おかしなことを。私たちはずっとこの街を目指してきたのですよ」


「そっ、そうなんだけど……」


「そうなんだけど、何なのですか? 私には喜ばないなど理解できません。アリエス、まさかあなたは――この街へ辿り着きたくなかったなどと思っていたりしませんよね?」


「うぅっ」



 まったくもって遠慮無く、スウィンザは非難めいた言葉でアリエスを責め立てる。


 研ぎ澄まされた氷のようにきつい視線が背後から投げかけられ、堪らず小さく肩を竦めた。



「……ううん。そんなことないよ、スウィンザ。わたしはただ……」


「それは嘘ですね」



 必死に吐こうとした嘘は見事に見破られ。


 ただただアリエスは更に小さく身を竦めるしかない。



「あなたはまだ分かっていないのですね。嘘などこの私には通用しないということを」


「そっ、そうだったっけ……」


「白々しいですね。心拍数、呼吸数、共に速くなっていますよ。それに言動もおかしい。あなたの脳には、現在混乱が見られます。正と負、相反する二つの感情が激しく衝突コンフリクトしていて、極めて不安定な状態です。何故ですか? 何か問題でも? 何故、何故、何故……」



 突然。


 スウィンザの声は抑揚をなくし、「何故?」という疑問副詞を反復し始めた。


 壊れた機械のように延々と。



「い、いけないっ――」



 焦って振り返ったアリエスは、彼の思考を遮る方法を懸命に考える。


 背後でひたすら首を捻っているこの男をこれ以上混乱させてはマズイのだ。


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