第36話 誓い
それもそのはず。
どんどん不穏な気配がこの場に近づいてきているのだ。
もし今見つかってしまったのならば、二人とも一瞬で消されてしまう。
アリエスの胸にある制御装置もろともに。
留まることなく溢れてくる嫌な予感を、しかしアリエスは必死で抑え込んだ。
もう後がない。
ここで駄々をこねていても意味などない。
異を唱えてみたところで彼を困らせるだけ。
それに、もう自分はここまで来てしまったのだ。
逃げることなどできないし、犬死にするなど以ての外。
覚悟を決めたアリエスは、唇を引き結ぶ。
「……うん、待ってる。スウィンザ、あなたも気をつけて」
もっと言いたいことがあったはずなのに。
今のアリエスにはこれだけを言うのが精一杯だった。
「ええ、約束します。最後まであなたの傍にいることを」
その時、淡青色の瞳に慈愛の光が宿ったのを、アリエスは確かに見たと思った。
「スウィンザ、待っ――」
アリエスの声を置き去りにして。
素早く壁を離れたスウィンザが、凄まじい速度で通路の向こうへと駆けていく。
漆黒の衣装を纏ったスラリとした姿、月光の白金髪。
どちらも視認できないほどの超高速な動き。
驚異的な身体能力をもってして真っ白な通路に残像だけを残していく。
『侵入者発見……排除セヨ……』
偵察ビットの機械音声と共に、進行妨害ビットの激しい攻撃の音が聞こえてくる。
レーザー銃の射撃音。
それに続く爆発音。
施設内の照明は赤く点滅を始め、警戒水準を最高位〈レベル7〉へと引きあげた。
『全館……緊急警戒態勢ニハイル……』
通路内を警告音が響き渡る。
同時に所々に設置されている防護扉が動き始めた。




