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第34話 別れ

「アリエス、今のあなたは、まるで体毛が白く耳が長い哺乳類のようです。それも色素欠乏症のため目が赤く、後ろ脚の跳躍力に優れた――」


「それ……白ウサギだよね」


「正解です。ちなみにウサギには肉球がありません」


「えええ!?」



 思わず大声が漏れそうになったアリエスの口をスウィンザの大きな手が覆い隠す。


 背にした壁の向こうで偵察用のロボットがざわめく気配。


 アリエスの手が緊張に震える。



「アリエス、声が大きいですよ」


「え、だって、そんなぁ……」



 少しだけ。


 ほんの僅かなことだけれど。


 見上げた彼の顔が悪戯に微笑んだ気がして。



 ――今、笑った?



 彼の表情が美しすぎて。


 人間的な温かみを感じてしまって。


 勘違いだと頭の中では分かっているのに、心は勝手に躍ってしまって。



 人工心臓だというのに、アリエスの胸がトクンと早鐘を打ち始める。


 ああ、わたしは――。



「スウィンザ、わたし……」



 その瞬間、通路の向こうで多くの気配がした。


 物々しく空気が動く。



 人ではない。


 金属の摩擦音、静かだが確かなモーター音。


 今二人がいる場所に危険が迫っている。



「アリエス、よく聞いてください」



 顰められた彼の声には逼迫感が伴っていた。



「あなたは先に奥の制御室へ」


「そんな……」


「私は〈ニュークリアス〉を欺いてから向かいます」



 壁に背をつけ気配を消したスウィンザが、側面に隠れているアリエスにそう指示を出した。


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