第3話 八面玲瓏
スウィンザと呼ばれた青年は、揺れる船体をものともせず上手い具合にバランスを取りながら彼女の後ろでそう解説した。
月光のような白金髪に淡い青色の瞳。漆黒の衣服に身を包んだ、驚くほどに美しい男だ。
眉目秀麗、明眸皓歯、八面玲瓏。
どんな美辞麗句を並べたところで彼の容姿を表すのに十分とは言えないだろう。
砂船に乗った二人は、白く輝く砂丘の向こうに見える小さな街に向かっていた。
恒久的信頼性を誇る中枢演算処理装置〈ニュークリアス〉。
永続的正常機能を約束された、極めて優秀なこの装置が世界を治めるようになって早二〇〇年が経つ。
惑星ひとつ丸ごと全部の管理を担うこの装置は、人間の生活を支えるだけでなくあらゆる存在を制御していた。
動物、植物、水や大気、天候まで、全てにおいて干渉し、調整しているのだ。
故に、赤道に近いこの場所でも、空からは燦々と太陽光が降り注いでいるというのに、肌を焼くほどの暑さはない。
〈ニュークリアス〉が自身の存在を隠すために施しているプログラムなのか何なのか。
ときどき激しい砂嵐で旅人を悩ませるけれど、頬を過ぎる風も、乾いてはいるものの身体の水分を奪ってしまうほどではなかった。
「そう……かぁ。とうとう――」
――着いちゃうんだ。
真っ直ぐ砂船を進めるアリエスは、感慨深げに小さく呟いた。