表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/49

第23話 操り人形

かなでよ、祈りを。さすれば闇は祓われん』



 子を抱く聖母に迫る災厄から、天使〈イスラフィル〉は剣や弓ではなく硝子のラッパを吹いて彼女らを守ったとされている。


 故に音楽は魔を遠ざけ、美しく透き通った響きでもって人々の心を豊かで穏やかにする力を持っているのだ。



 そして、スウィンザはこの偉大な天使を模して造られたAIエーアイだと聞いている。


 しかし本来は、科学と宗教は相反する位置にある。



 互いに擦り寄ることのできない関係。


 科学とは神を冒涜する悪魔の力だという古い考えが今も根強く残っている。



 だから教会にAIが足を踏み入れることは禁止されているのだ。


 この超科学に先導される世界にあっても。



 どうしてあの狂博士が、自身が最高の技術力でもって手がけたAIの姿をこの天使に見立てたのか。


 そこにどんな意味があるのか。


 天才でありながら狂気に呑まれてしまったあのインジバ博士が望んだものは何だったのか。


 アリエスには何も分からない。



 ただ、確信していることが一つだけある。


 これは、間違いなくあの白衣の男が描いたシナリオなのだと。



 そして自分は彼の手のひらで虚しく踊る操り人形。


 スウィンザと共に弄ばれている。



「少しだけ……悔しい、かな」



 左胸に手を当てて、アリエスは小さく呟く。


 確かに伝わってくる鼓動の音。


 規則正しく体内へ血液を送り出してくれている。



 この装置のお陰で生かされているというのに。


 けれど今は……ちょっぴり疎ましい。



「胸がどうかしたのかね?」



 ジレンマに翻弄されそうになるアリエスに、嗄れた声がかけられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ