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第22話 大聖堂

 一歩。


 教会に足を踏み入れた瞬間。



 アリエスの体はまるで硬い石の彫刻にされてしまったかのように固まってしまった。



「すごい……」



 白砂漠の中心にある小さな街、コアデザート。


 総面積約一三平方マイルの世界から忘れられた場所にある。



 ひっそりとした砂漠の街で用がなければ誰も訪れようとはしない。


 第一、いざ訪問しようにも、広大な砂漠には砂嵐が吹き荒れ容易には近づけない。



 なかなかに難攻不落な場所で、実際アリエスたちもこの土地に辿り着くまでに半年を要した。


 そんな辺境にある極小の街だというのに、街の中央に鎮座する教会は見事なものだった。



 外観こそ風景に似合った簡素な石造りだが、室内は驚くほどに広大で、特に大聖堂は人を圧倒させる荘厳な空間だった。


 半球形の天井は鮮やかな色彩で宗教画が生き生きと描かれている。


 側壁の高位置には採光用の高窓が設えられ、低位置にはきめ細やかな装飾が施されたステンドグラスがはめこまれている。



 正面の祭壇では、聖母の彫像が緩やかな微笑みを放っていた。


 ふと我に返ったアリエスは、ゆっくりと円天井を見上げる。


 そして、予想した通りその場所に描かれている絵を認め、ぐっと息を詰めた。



「スウィンザ……」



 金絹糸のような髪とまるで最北の海に沈む氷結晶のような瞳。


 抜けるような白い肌に細く端正な鼻梁を持つ美青年。



 それは音楽の天使〈イスラフィル〉の姿。


 瞳と揃いの色をした楽器を片手に、聖母に微笑みかけている。



 しかし無情にも。


 音楽というものが消去されてしまった今となっては、描かれた絵の意味は幻でしかない。


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