第14話 何故
善悪を見極めるために法という基準を用い、引っかかればそこに定義されている対処方法を執行するのみ。
それがAIというものだ。
「罪を犯した者を罰してはいけない? あなたは被害者なのに、何故加害者を庇う? 何故、何故、何故……」
いけない――。
とアリエスが焦った瞬間。
シューッと音がして、スウィンザの首から白煙が溢れ出る。
熱暴走したのだ。
「は……早く冷却剤を」
少年のもう片方の腕からウエストポーチを取り返し、慌てて冷却剤を取り出す。
スプレータイプのそれを一気にスウィンザの首筋へかけてやる。
と、すぐに白煙はおさまった。
しかし驚いたことに、それでも彼は少年の腕を放さなかった。
「分かりません。私はあなたのために加害者を罰そうとしています。なのに、あなたは私ではなく犯罪者の方を庇う。今出会ったばかりのこの小さな人間の味方をする。それは何故? 何故、何故、何故……」
再び熱暴走しそうになるスウィンザ。
これ以上長時間暴走し続けると、回線がショートしてしまうだろう。
そうなったら目的を果たせない。
焦ったアリエスは、咄嗟にウエストポーチから財布を引っ張り出した。
「こっ、これ、その子にあげてっ」
そう言ってみたが、スウィンザの混乱状態はおさまらない。
なおも暴走を繰り返そうとしている。
「何故、何故、何故……」
表情をなくした彼の唇が単調な言葉だけを紡ぎ続ける。
アリエスの額に冷たい汗が浮かんだ。




