第13話 無慈悲
――スウィンザは、本気だ。
窃盗の現行犯は、罰として利き腕を切断される。
その法に則って、彼は少年の腕を切り落とそうとしていた。
AIは法に忠実だ。
もちろん情など持ち合わせてもいない。
だから一欠片も躊躇うことなく行使するだろう。
「まっ……待って、スウィンザ!」
慌ててアリエスが二人の間に割って入るも、スウィンザは少年の腕を放さない。
それどころか余計に腕に力を入れたようで、少年の口から苦痛の声が漏れ出ている。
耐え難い痛みと利き腕を切り落とされる恐怖とで、少年の目尻には涙が滲んでいた。
「やめて! 放してあげてっ!」
「何故止めるのです? あなたの荷物を盗んだのですよ?」
食い下がるアリエスに無表情な顔で涼しげに答えるスウィンザ。
何一つ悪びれた様子が伺えないのが、恐ろしく本気である証拠だ。
「そうだけど――ダメ。お願いだからやめて!」
「お願い? 法にはそんな言葉はありません。この小さな人間は〈窃盗〉という罪を犯しました。刑法二三五条により、私はそれを公然と罰するだけです」
「でも、まだ子供なんだよ……」
「残念ながら、現在の刑法には年齢による制約はありません。青少年保護法とは遠い過去のもの。よってこの小さな人間も、平等に罪を償わなくてはなりません。秩序とはそういうものです。そうでしょう?」
「で、でも……ダメ。絶対にダメ!!」
容赦なく少年の腕を引っ張るスウィンザの薄青い目を見て言い放つ。
ここでアリエスが少しでも気を緩めたら、その隙に少年の腕は飛ばされる。
彼の頭脳には恐らく〈慈悲〉という概念はない。




