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第12話 手刀

 その時、偶然目にしたのだ。


 緩やかな風に靡く、若草に覆われた草原の姿を。



「痛いっ! 放せよ!」



 旅の思い出に浸るアリエスの耳を、激しい少年の悲鳴が打つ。


 我に返って見あげると、そこにはスラリとした見知った姿が。



「な……何をしてるの。スウィンザ」



 状況を見てバッと勢いよく立ち上がったアリエスは、少年の腕を捻りあげている白金髪の男へと問うた。


 顔にうっすらとソバカスを浮かべた少年は、長身のスウィンザに腕を掴まれ激しく悶えている。


 かなり強く握られているせいか、子供の腕はすでに血色を失っていた。



「スウィンザ! 早く放してあげて、腕が、腕が――」


「窃盗です」



 叫んだアリエスの声が冷徹な一言に打ち消された。


 言われて気づく。


 腰に提げていたポーチがない。



 周りを見回すと、自分を囲んでいた子供たちの姿は綺麗に消えていた。


 スウィンザに捕らえられた少年ひとりを残し、非情にも全員逃げ去っていたのだ。



「現行犯ですから言い逃れはできません」



 一言冷淡に述べたあと、スウィンザはスッと右手を挙げた。


 迷いのない動作に、アリエスの頭が混乱する。



(これは――)



 手刀の構え。



 多機能を搭載したAIの腕は〈可変合金〉を素材としており、様々な武器として機能する。


 見た目は普通の腕で何ら危険な変化は見られない。


 しかし振り下ろした瞬間、鋭利な刃物同様の効果をあげる。



 それがスウィンザの――AIの手刀だ。



 不吉な構えを視認したアリエスの喉がゴクリと大きな音を鳴らした。


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