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テンコの部屋からの脱出  作者: カーヴィ
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第一話 番組出演

「はい、一旦CM入りまーす」


 銅の鎧の頭のADが声をかける。頭以外は皮のズボンと皮のシャツを着ている。

 僕は銀色の鎧を着て剣を持っているが、ほとんど重くはない。

 どちらかというと五十センチはあるロケット型のヘアスタイルの女性、テンコさんの頭の方が重そうに見えた。

 ワインレッドのローブをまとったぽっちゃりの子が「小声でやっと休憩」と言う。この子はブリスという僕の相棒だ。相棒と言うと怒るかもしれない。この世界に連れて来てくれた天使だ。


 ここは一つの街のような巨大なテレビ局のスタジオ。中世のヨーロッパに近代アートが入り交じったような街並みがスタジオの中に存在する。

 ここはスタジオであるが、普通に人が生活していた。それは野球のスタジアムより大きいテレビスタジオで、中にはショッピングモールや密林、そして湖まである。

 このドでかいスタジオの中央にメインMCのテンコさんの部屋があり、L字に設置された5人掛けのベージュの皮のソファとMCのテンコさんが座る2人掛けのソファがある。


 テンコさんの座っているソファの右手側には花を咲かせた巨大な食虫花が活けられている。僕の右隣にはブリスという天使。ブリスは座っている姿勢でいながらも分からないようにその一般人より大きめのお尻を宙に浮かせている。

 CMの最中に皮のパンツとレースの服を着た女性のメイクアップアーティストがテンコさんの化粧を治す。

 化粧を直すメイクさんと一瞬目があった。メイクさんはクラスメイトの篠崎由佳さんに似ていた。

 篠崎さんを銀髪にして瞳を青にしたら篠崎さんそのものかもしれない。

 メイクさんの名札には「ダリア」と書かれていた。篠崎さんがコスプレをしたらこんな感じになるのかと思うと少しどきどきした。


 僕とブリスは、置かれたお茶をストローで吸い込み口の中の乾きを癒す。

 今流れているCMは「ドラゴン損保」の生CMだ。謝ってドラゴンに襲われて怪我や死亡事故に遭った場合、保険が下りるというものだった。最小で月々五十グリから加入できるらしい。日本円で大体五千円程度だ。


 CM中、昼食を摂っていなかったテンコさんはドラゴンの焼き物を食べている。これは数分前にフライパンの生CMで作ったドラゴンの肉の料理だった。


 ファイアードラゴンを倒してから僕らの名前はすぐにこの街に知れ渡り、この世界に来てすぐにこの番組に出ることになった。

 その番組名は「テンコの部屋」。千年続く恐ろしいほどの長寿番組だ。


 この星で最も有名なテンコさんが司会のトーク番組だが、この番組には「尺」というものがない。

 テンコさんが飽きるまで続くのだ。ゲストは延々出演させ続けられる。

 睡眠も食事もとってもいいトーク番組で、今のところ最長十年以上単独で出演し続けた有名人も数人いるらしい。

 そのうち多くのゲストが精神に異常をきたとブリスが言っていた。老衰して死んだものまでいる。その回の放送を死をもって終了を迎えたという。


 なぜ出演者達は途中で意地でもスタジオを出ないのか。

 それはスタジオに入ってから知ることとなった。


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