近くの空と遠きスクエア
「あいつ、何だって?」
「うん……キスしたら? って言ってた。それで済ませればふんぎりがつくだろう……だって」
「つくわけないじゃん。何だよ、それ……俺は――」
『……っ! ん、はぁっ……ん、ん……』
諦められない恋を、諦めさせるように……彼女は俺にキスをした――
「これでおしまいです。もういいよね? わたし、年上だし、姉だし……君の友達の姉なんだよ?」
涙なんて流さない、そう決めたのに……俺は、彼女の笑顔で諦めた……。
高校に上がる前、俺、都ノ木コウキは、親友の姉を好きになった。
彼女の名前は、皆瀬二千翔。一つ、年上。一つだけ年が離れている。
出会いは単純で、親友である皆瀬一翔を迎えに来たお姉さんを、一目見て好きになったこと。
それからは受験直前まで、一翔の家に遊びに行っては二千翔さんの様子を見に行ったり、話しかけたり。
そんなことばかりしていたけど、何とか高校に受かって、彼女と親を安心させた。
一つだけの違いと、親友の姉……ただそれだけ。それだけなのに、好きが続いて終わらなくて、彼女のキスで終わりを告げられた。
「中学の時は学年違いで会えないのに、高校に上がると会えるのな」
「そりゃそうだろ! コウキ、お前まだ姉貴のこと?」
「んなわけないだろ……たぶん」
「俺は応援するけど、一つだけって言っても一年間とか、どっちも見えてない時間があるんだし、彼氏とか出来てるかもだから、そこは覚悟しとけよ?」
「分かってるっての!」
姉を好きな親友なんて、本当なら『やめとけ、マジで』で終わる話。
一翔は無駄と分かっているのか、応援してくれているいい奴だ。高校でも『よろしく』そんなことを言いながら、俺たちは同じ高校に進む。
一つ上、一つだけの違い……そして、親友の姉である二千翔とまた会える……そう思いながら。
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