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第1章 〜笑えない〜 ep.2 『捨てる覚悟』
辺りは暗闇に包まれていた。照らす明かりは点滅している電灯と所々に見える家のあかり、そして雲に隠れた月明かりだけだった。
「ここか…。」
地図を確認し顔を上げる。
既に蔦に覆われた鳥居の奥に、目立ちたく無いかのように本殿が立っている。その本殿のすぐ側に祠があった。
祠の隣には何やら看板が立っていた。
『貴方が望むもの、なんでも捨てられます。この祠に祈りを捧げれば、天からのお告げがあるでしょう』
と、還暦のある文字で書かれていた。
「おいおい、結構本格的じゃねぇか。弱ったなぁおい。」
だが、目的を持って来た以上、何もせずに帰る訳にはいかんだろう。試しに祈ろうと思ったが…。
「って、何を祈ればいいんだ?自分の捨てたいものかなんかか?」
そこで少し捨てるものについて考えてみた。
自分が捨てたら人生が楽になるものはなんだろうか。希望?絶望?怒り?悲しみ?その全て…。
俺が辿り着いた答えは『感情』だった。