音楽会当日 その1
音楽会 その1です。
まだ続きます。
それから毎日練習が始まりました。
葉っぱの楽譜を何枚も何枚も用意しました。
いたずら好きのリスさんが時々いたずらをして、みんなの葉っぱの楽譜が色あざやかな葉っぱに変わっていたり、マラカスの中身のドングリを食べてしまって、中身がスカスカになったマラカスから、カラカラと音がしたりしました。
尺八からアオムシが出てきた時は、アライグマさんが怒ってリスさんを追いかけてましたが、それでもリスさんはこりずにいたずらをしかけていました。
向こう側チームも一緒に川のこちら側の、根っこ広場で練習しました。
根っこ広場にはたくさんのドングリの木の根っこがあります。シイにカシ、ブナにナラ。
わたしはそれらドングリの木たちの根っこに宿る、木の精霊の意思なのです。
向こう側チームは、ほんとうならもっとたくさんの動物たちが来れたのですが、今年は雪解け水がいつもよりも多く、川の水があふれてしまいました。
そのため、川にかかるオンボロ橋が、いよいよボロッボロのオンボロロンになってしまい、かろうじて橋の形をなしているだけになってしまいました。
コマドリさんは空を飛べますし、ヘビさんはスルスルと上手にロープを渡れます。
怖がりのクマさんは、もともと怖がりのため、オンボロ橋を渡る時は、お人好しのキツネさんにはげまされて、コマドリさんの歌う方を見ながらおそるおそる渡っていました。
でも今年は、どうしても橋が渡れません。
そこで、わたしの出番です。
根っこ広場で嘘をつくものを、根っこでつかまえるのがわたしの仕事でした。
しかし、逆さ虹の森には嘘をつく動物はおりません。力を持て余したわたしは、やがて、根っこを広場よりももっともっと遠くへ伸ばせるようになりました。
それでも川の向こう側にいるクマさんまで伸ばすのは大変です。ですので、怖がりのクマさんに、嘘をついてもらいました。
「ぼくは勇敢なクマだ!こんな橋、ぼく一匹で渡れるさ!」
クマさんが大きな声でさけぶのを聞き、わたしが精いっぱい根っこを伸ばして、クマさんをぐるぐる巻きにして、なんとか支えながら、ヘビさんにクマさんの目隠しをお願いして、コマドリさんが歌って気をそらし、そしてキツネさんに励ましてもらい、毎回向こう側からこちら側へ、こちら側から向こう側へと、クマさんを運んでいました。
食いしん坊のヘビさんには、わたしからお礼に毎回、根っこの側で取れたトカゲをこっそり渡してました。こうしてヘビさんに練習の前と練習の後にトカゲを渡しておくと、ヘビさんがコマドリさんを、お腹が空いたなぁとじいっと見上げずに済むのでした。
コマドリさんには、よくよく太ったミミズを渡しました。つるんとして、のどに良いそうです。
キツネさんは、いつも丁重にお礼を断るのでした。
そうそう、クマさんは、冬の寒い時期に入る前に、とっておきのはちみつを、お礼としてみんなにおすそ分けしてくれるそうです。
そうして、クマさんを運び、練習を重ね、とうとう音楽会の当日になりました。
本番のために、みんなで衣装を準備しました。
わたしは根っこの一本一本に、リボンを結びます。ラメ入りのきらきらするピンクのリボンと、シフォン生地の透け感のある、白いリボンを組み合わせました。
キツネさんは上は白と青のグラデーションが見事な狐紋付、下は縞袴姿です。三味線と、赤い和傘も持っています。
リスさんはハンチング帽に、黒い蝶ネクタイに、白いシャツを着ています。夕陽に照らされて、ハーモニカがぎらりと光ります。
アライグマさんは本格的です。虚無僧、という人たちがかぶる天蓋というかごを編み、作り上げたのです。目の部分が大きめに空いており、アライグマさんの模様で黒く縁どられたが目がのぞいています。服は全体的に黒くて長い服で、足はわらじを履いています。
そうして尺八を持った姿は、まるで昔話のたぬきが人を化かそうと変身した姿のようです。
こちら側チーム『環天頂アークロック』の準備が整いました。