もうすぐ音楽会
冬の童話祭2019 逆さ虹の森の企画作品です。
https://marchen2019.hinaproject.com/
逆さ虹の森の場所設定
ドングリ池、根っこ広場、オンボロ橋
動物たち
歌上手のコマドリ、食いしん坊のヘビ、暴れん坊のアライグマ、お人好しのキツネ、いたずら好きのリス、怖がりのクマ
を出して物語を書くことに挑戦しました。
※小学校中学年〜を想定して書きました。
初出の漢字には、時間がある時にルビを振っています。
あるところに、逆さの虹がかかる森がありました。
いつしかそこは逆さ虹の森と呼ばれるようになりました。
その森の真ん中には、大きな川が流れています。森を二つに分けるほど大きな川なので、その川を渡れるように、吊り橋がかかっておりました。とてもボロボロで、今にも壊れそうな橋です。
森のみんなに、オンボロ橋と呼ばれておりました。
そのオンボロ橋のこちら側で、なにやら音が聞こえます。
川のこちら側には、森の動物たちが集まって、音楽会の練習をしていました。
川の向こう側とこちら側でチーム分けをして、夏の満月の夜にドングリ池のほとりで演奏会をするのです。
どちらか上手だった方に、金色ドングリが進呈されます。
金色ドングリをドングリ池に投げ込むと、願い事が叶うのです。
今年は向こう側チームもこちら側チームも、まだ願い事が決まってませんでしたが、上手に演奏ができるよう、一生懸命に練習していました。
「根っこさん、根っこさん、なにしてるの?」
キツネさんがやってきました。キツネさんの楽器は三味線です。得意な曲は、じょんがら節だそうです。
「せっかくだから、音楽会のことを書いているのよ」
こちら側チームはわたしこと森の木の根っこ、お人好しのキツネさん、暴れん坊のアライグマさん、いたずら好きのリスさんです。
向こう側チームは歌上手のコマドリさん、怖がりのクマさん、食いしん坊のヘビさんです。
「なあるほど、それは記録になるし、よさそうだ。ところで、楽器の練習の調子はどうかい?」
「そうね、マリンバもシンバルも上々よ。あとは太鼓かしら。久しぶりに出したから、慣らしておかないとね」
わたしのパートはパーカッション、打楽器全般です。
「それにしても、ほどよいチーム分けね」
「コマドリさんが、ジャズを歌いたかったみたいだよ」
「なるほどね。そうしたら怖がりのクマさんは体が隠れる大きなコントラバス、ヘビさんは笛が得意だから、サックスかしら?」
「そうそう、あとはフクロウさんに頼んで、トランペットを吹いてもらうみたいだ」
「素敵!」
夜の音楽会ですから、フクロウさんも起きています。彼はトランペットの名手なのです。もしかしたらニワトリさんよりも、朝を告げるトランペットが上手かもしれません。
森のこちら側では、チーム分けをした動物たちが、それぞれ楽器の練習をしたり、打ち合わせをしたり。追加メンバーを募集するかを決めています。
こちら側チームはわたしがパーカッション、キツネさんが三味線、リスさんがハーモニカまで決まったのですが、アライグマさんの楽器をどうするかがなかなか決まらないのです。決まるまで、個別に練習をしています。さっき打楽器の確認をひと通り終えて、こうして書き物をしていたのです。
「先に、音楽会のジャンルを決めるのはどうかしら?そうしたら、楽器をどうするかも、決めやすいかもしれないわ」
「それはいい考えだね」
わたしもキツネさんも口には出しませんでしたが、アライグマさんはとても暴れん坊の怒りん坊。下手なことを言うと、すぐ怒り出して大暴れしてしまいます。楽器をいつ決めるの?なんて聞こうものなら、たちまち怒り出すでしょう。
「リスさん、アライグマさん、ごきげんよう。良かったら音楽会のジャンルを決めませんか?」
「いいねいいね〜決めちゃおう!」
「ふん、ジャンル決めか。まあいいだろう」
リスさんとアライグマさんが言いました。
「向こう側チームはジャズを歌うそうだよ。こちら側チームは、パーカッションの根っこさん、ハーモニカのリスさん、そしてボクが三味線を弾く。いい機会だから、和楽器のロックバンドを組んだらどうかな?」
「和楽器の、ロックバンド?」
「なんだそれは?」
キツネさんの提案に、リスさんもアライグマさんもきょとんと小首を傾げます。
「和楽器を取り入れて、今までの曲と雰囲気を変えるんだ。上手くハマれば、かっこいいと思うよ!あと出てないのは、箏、尺八、琴があるけれど。アライグマさんは尺八はどうかな?アライグマさんは果物を洗う手つきが繊細だから、向いていると思うよ。尺八はすっごく難しいかもしれないけれど、でも、もしやって、このメンバーでロックを演奏したら、きっとカッコいいと思うんだ!」
キツネさんが、いつもは細い目を大きく開けて、熱く語りました。
「いいねいいね〜やろう!」
「ふん、尺八か、いいだろう!」
アライグマさんは、カッコいいという言葉と、難しいかもしれないという言葉に、ピクピクと反応してました。彼はそんな難しいことできないよと言われると、かえって反発して、やってみようと思うようです。
「ではわたしは、和太鼓と鼓を用意しましょうか。ドラムセットも要ります?」
「それはいいね!根っこさんのスネアはリズム感がバッチリだもの」
「いいねいいね〜」
「ふん、根っこさんのスネアなら悪くないな」
みんなに褒められて、嬉しくなりました。
楽器も決まり、曲目も決まりました。葉っぱの楽譜を準備して、みんなでああでもない、こうでもないと、アレンジを考えました。