シーン1
感想、訂正などありましたら教えて下さい。
がんばります。
「おはようございます。」
おれは、最近この芸能事務所に入った新人役者だ。
名前は神谷剛。
高校時代は何かと悪いことばかりをし、みんなと見たVシネマに憧れて高校卒業後いくつか履歴書を送り、今の事務所に見事合格したのだ。
「おぅ、神谷!社長が呼んでたぞー。」
事務員の前山さんだ。
前山さんはよくご飯に連れていってくれたりする面倒見の良い中年男性(41)だ。
ただ単に、独身で寂しいだけっていう噂もあるけど、実際この人に助けてもらっている人は多い。
「わかりました、すぐに行ってきます!」
おれは社長室に向かいノックをした。
―コンコン
「神谷でーす。」
『おう、入れー。』
ガチャ。
ドアを開けると事務所の社長がイスにもたれて、どっしり構えていた。
「神谷、突然だけどお前に映画主演の話がきてるんだが。」
「まじっすか!?やります、やりまーす。」
おれは、チャンスとばかりに食いついた。
事務所に入ってエキストラやチョイ役なんかやってきたがやっとまともな仕事が映画主演なんて、やっぱ見る奴が見るとわかるんだなー。
「それで、映画を撮るにあたってオーディションがあるらしんだが…大丈夫か?」
「なーに言ってんすか、たとえ根性焼き100束されたとしたって耐えてみせますよ!」
「…よし、じゃあ明日の朝9時に向こうの映画会社に面接行ってきてくれ。」
「わっかりました!はりきって行ってきます!…じゃ、失礼しまーす!」
ガチャ。
おれはハイテンションで社長屋を出た。
(くぅー、映画主演なんて最高じゃねーか!どんな映画なんだろー。ここでヒットしたらオレも名優の仲間入りだな。くくくっ!)
社長屋の前でたまらずガッツポーズをした。
すると前川さんが前から歩いてきた。
「何だ神谷、うれしそうだな!良い知らせだったのか?」
「前川さん、おれ映画主演決まるかもしれません!くくくっ。」
「何!!?お前それ・・・ヒットしたら飯連れてけよ!!!絶対だぞ!!!」
「何でも食わしてあげますよ!!ふふふふふっ。」
それからしばらく舞い上がって話し続け、明日のために早めに寝た。
そして、次の日の朝おれはその映画会社に向かった。
「東勝プロダクション…ここか。案外小さい会社だな…。」
入り口付近には警備員らしき人がいた。
「あの、映画の依頼で来たんですが…。」
おれはその人に通行書を見せた。
「確認しました。どうぞ。」
当たり前だが、すんなり中に入れてもらった。
ここからが正念場だ、オーディションとやらで監督に気に入られて映画主演をゲットするぜ!
「えーっと…2階の応接室03…おっ、あったあった。」
ドキドキ。
―コンコン。
「す、すいませーん。今日オーディション受けさ、させてもらいます神谷剛です。」
「………おう、入れや!」
「は、はい。」
ぶっきらぼうな返答に戸惑いつつドアを開けた。
そこには30代半ばの男がいた。
見た目はまぁ…やんちゃ好きそうな強面の…まぁ、ぶっちゃけヤーさんみたいな人だった。
おれは、映画主演とかそんな事は吹っ飛び、一気に帰りたくなった…。
「おー神谷くーん、来てくれてありがとうねー、いやいや履歴書見て気に入っちゃったよー。高校時代とかやんちゃだったらしいねーペラペラ…」
いきなりその人のマシンガントークが始まった。
「はぁ…えぇ…そうですね…。」
(なんだよコイツ、早く監督をだせ!!…いや、もしかしてコイツが―)
「ペラペラあっ、遅れてごめん僕が監督の平塚力でーす。」
(―やっぱりかーーーい!!!)
「で、あのオーディションは…。」
「おぅ、そうだったそうだった。今回僕さぁ、任侠もの撮りたくてさぁ…若くして組をまとめる主役の人が欲しかったんだよー。んで、売り込みに来てもらったときにキミの履歴書とかいろいろ気に入っちゃってね。キミならリアルな映画撮れると思ってオファーしたんだよー。
で、オーディション内容なんだけど、この町を統一して欲しいんだわ。」
「あー…はい?」
「まずは、ここから始めてもらうから。」
そういうと、平塚監督は紙袋を渡してきた。
中を見ると高校?の制服が入っていた。
「あ、あの、これは?」
「高校の制服だよ。すぐそこの青空高校の。まずは高校制覇してからハバ広げた方がやりやすいかなと思ってね!」
(えーーー!!!!それって最終的にヤーさんになれってこと!!?………。)
「…あの、やっぱりこの話は―。」
「おい!今更できねぇじゃ話になんねーぞ!!もう、ギャラは払ってんだ!!」
(この人やっぱ本物だ!!!あのバカ社長ーーー!!)
「や、やります。」
おれは半ベソ状態で返事をした。
断ればこの場で殺されそうな気がした。
いや、本気で…。
そして、おれは高校生に戻ることになった。