第4話 ★悪魔★
いやあ自分でも思いました……急展開すぎると、
もう少し、スマートに話を進めたいなぁ……
★7520♪
「「いただきまーす!」」
シルバー王国国内に入ってから三日。
今日もフィーの住んでいた村を探す旅をしています。
フィーが自分が住んでいた村の名前を知らなかった……はたまたそもそもその村に名前すら無いのかもしれないので、地図を見ようが、魔法を使おうが、全く意味はありません。
街などによると、一応この辺りの村などを聞いて回りましたが、名前も分からない。名前すらないかも知れない所などで、どう聞いても手がかりは掴めませんでした。
そして、地道にシルバー王国国内を探索していると、あっという間に三日が経ってしまいました。
そして今は丁度、昼食を食べている真っ最中です。
僕が今いる街は【商業都市ホムルクラン】といい、シルバー王国の中でも上位に入るほどの有名な都市です。
【商業都市ホムルクラン】は、その名の通り、商業……特に食べ物で有名で、各地方から特産物を取り寄せているので、海の幸から山の幸まで、様々な食べ物がここには揃っています。
今は、ホムルクランの中央部に位置する大通りにある海鮮系で有名なレストランで“リトル・クラーケンのゲソ焼き”を頼み、食べている真っ最中なのです。
流石に三日間朝昼晩全ての食事でのドラゴンステーキは僕とフィーも合わせてやはりキツかったです……
リトルクラーケンは、
そしてこの街、ホムルクランは他に訪れた街よりはるかに発展しており、街は綺麗に塗装されており、ガラス張りの建物が多く、中央の噴水広場を中心に、東西南北の四方向に、大通りが真っ直ぐと通っており、レンガを意識した道と高級さを意識した家や店が道沿いにズラーっと並んでいます。
流石、商業都市といったところでしょうか、店の数も街の雰囲気といい他とは群を抜いて素晴らしいものだらけです。
景気が良いのか、品揃えが良く、街の住人の表情は明るく、笑顔で満ち溢れており、僕がこれまで寄って行った街のどこよりも素晴らしいと思える街です。
これよりも王都は凄いのか……楽しみで仕方がありません!
「「ごちそうさま!」」
海の幸を意識した料理店から出た僕たちは再び、フィーの村探しへと向かいました。
今日までフィーと一緒に過ごし、色んなことを話し合い、経験した中で分かったことがいくつかあります。
まず、フィーに眠っていると思われるスキルのことです。
この街に来る前の街で鑑定業を営む初老のおじいさんがいたので、その店へと寄り、フィーのスキルを鑑定してもらいました。
成功確率は丁度五十パーセント。
鑑定が終わったおじいさんから聞かされたスキル名。
その名も…
ーーー【夢人格】
そのおじいさんが言うには、どうやら自分の鑑定スキルではスキル名しか鑑定できず、そのスキルの説明などはされないそうでしたが、どうやらそのスキルはユニークスキル何だそうです。
果たしてこれが当たっているかは、まだ分かりませんが、それを聞いたフィーは自分にユニークスキルがあるということに喜んでいたような、驚いていたような……
それに、このスキルがフィーがあの森へと来た理由かどうかはまだ、分かりません。
そして、僕たちはシルバー王国国内に入って、まず、国を一周し、その後はずーっと西方向へと進んでいきました。
王都は中央にあるので、恐らくですが、少しずつ王都には近づいていると思います。
この三日間で有力な手がかりはまだ見つかっておりませんが、国中を探し回っていたおかげか、シルバー王国のこともだんだんと分かって来ました。
一番驚いたことは、どの街でも白銀の勇者を崇めているということです。
どの街にも必ずといっていいほど白銀の鎧を身に纏った白銀の勇者の銅像が大きく立っており、五英雄の銅像もその周りに必ずありました。
フィーの村にも小さいながらもあったと言っているので、その信仰心は凄まじいものでした……
自分のお父さんなだけあって、少し引いてしまったのは、仕方のないことです……仕方のない…ことです。
★★★★★★★★★★
「あの村は違う?」
「うん。あの村じゃありません」
「じゃあ次へと向かいますか」
フィーを背中で抱えたまま、小さな村を横目に見て、その村を通り過ぎ、ダッシュで次の村を探す。
この三日間何回も何回も繰り返した行動です。
大きな街でさえも、王国国内には、二十箇所以上。小さな村ともなれば、その数は百をも超える数があるのです。
その村を今、一つ一つしらみつぶしに見て行っているので、周りから見れば、無謀と思われても不思議ではないことです。
だとしても必ず村は見つけますし、一日に小さな村も合わせて約二十箇所程まわっていっているので、まぁ……なんとかなるでしょう!
「フィーここは?」
「ううん。ここも違います…」
「分かりました。それじゃあまた次に進みますか」
フィーが村を確認し、自分の村じゃないことが分かると、首を振り、否定する。
これの繰り返し。何回も見た光景が今日もまた、これまでみたく繰り返されています。
僕も、当初はなんとかなると思っていましたが、次第に入学試験の制限時間が迫って来て、少しの焦りが出て来ました。
村は見つからず、ただただ、王都に近づいていきます。
今日は、魔物があまり出ない場所で野宿をして、明日朝早くから探そうと思います。
街というのは、大きな壁で円状に囲まれているところもあれば、四角形。五角形。不規則な図形など、さまざまな形でしたが、必ず壁は建っていました。
魔物は基本。夜の方が活発になるものなので、人通りの少ない夜に攻められないために、壁を建てることが普通です。それに、昼でも、壁があるのとないのでは、やはり大きく違います。
小さな村でも、柵を作っているなどの配慮は必ずしていました。
そして、魔物と遭遇する確率が高い地域には、どれほど危険なのかが分かるように“指定ランク”というものが作られており、最高ランクが指定ランクS
通常の草原や馬車などが通る道などは最低ランクの指定ランクEとなっています。
そして、街に入るには、自分の身分を証明するものか、お金を払う必要があり、身分を証明するものがない場合は、犯罪歴限定の鑑定士に見てもらい、犯罪を犯したことがないことが分かれば、お金を払い、中に入ることができます。
僕たちはお金にも困っておらず、身分を証明するものがないので、いつもお金を払って、中に入っています。
身分を証明する主なものは、冒険者ギルドで発行してもらえるギルドカード。そして、学園に入ると発行してもらえる学生証。そして、何かしらの仕事に就けば必ず職業書と呼ばれる自分の仕事が何なのかが見れば分かる様になってある紙も、身分を証明できる代表となっています。
★★★★★★★★★★
「はぁ〜、結局今日も見つかりませんでしたね」
「うん。でも明日こそは見つけてみせます!」
「はいっ!」
結局。この日もフィーが住んでいた村は見つからず、夜を過ごすこととなりました。
入学試験の日も近いので、早いところ見つけて、王都へと向かいたいのですが……
それに、シルバー王国の半分以上の面積をこの短期間で見回ったのです。いくら休憩を入れているとはいえ、僕もフィーもへとへとです。
そして、今日は野宿です。
魔物は、魔力濃度の高い地域を好む習性があるので、過去に大規模な戦争が起こった跡の場所などは、魔物が住み着きやすいというわけです。
なので、人が集まる街などは魔物に狙われやすい……と思うかもしれませんが、それは大丈夫です。
国から派遣された、結界師と呼ばれる職業の人が、魔力を外へと漏れ出さない結界を街の周りに張ってあり、魔物にはバレないというわけです。
ただし、三ヶ月に一度、結界の中に溜まった魔力を放出しないといけない日があるので、その日が近づくと、冒険者ギルドの方で、冒険者たちが収集され、魔力につられてやってきた魔物を狩り尽くすのです。
さすがに、国全体を囲うほどの結界は張れないので、必ず魔物はどこかに集中してしまうのですが……
そして、国の規定により、指定ランクA以上の場所を国内に入れてはならない。というものがあります。
これは、もちろん危険を回避するためのものです。
なので、言葉の意味合い的に
『俺、国の外に出てきたんだ!』
というのは、
『俺、指定ランクA以上の場所に行ったんだ!』
という意味になります。
逆に言うと、例外がない限り、指定Aランク以上以外の場所は必ず何処かの国の国内に位置するということとなります。
ちなみに、僕がきたあの森は…どこの国の国内にも位置していませんでした……
そして、魔物が魔力濃度が高いところにやってくるというその習性を活かした罠もすでに使われており、人為的に、魔力濃度を上げて、釣られてやってきた魔物を倒すという方法が冒険者では使われております。
しかし、魔力濃度を上げ過ぎて、想像以上の魔物が襲ってきて、そのまま亡くなってしまったという例もあります。
つまりこの方法は一歩間違えると死んでしまう諸刃の剣なのです。
★★★★★★★★★★
「おやすみなさい」
「うん。おやすみ…」
僕は土魔法や岩魔法などといった魔法を使った即席の家?のようなものを作り、そこに自然魔法で集めた草などを敷いて、寝床を作りました。
気配探知の魔法をあらかじめセットしておき、僕も、フィーと同じく眠りにつきました。
★★★★★★★★★★
「……ん?」
僕はセットしていた気配探知に反応があり、体を起こしました。
寝ていた時間はおよそ四時間ほど、時刻は二時といったところでしょうか…
気配探知にひっかかったのは、人族…それも……
「ーーーフィー?」
霊魂魔法を使った気配探知には、たしかにフィーの気配がひっかかっています。
その証拠に…今、僕の横にいるはずのフィーがどこにも居ないのです。
場所は把握しているので、とにかくその方へと向かうことにします。
(フィー…どうしたんだろう……何もなければいいけど………)
僕は後々後悔した。この瞬間、お父さんから教えて貰ったことの中でやってはいけないことをしてしまったと……
……………………フラグを立ててしまった。と
★★★★★★★★★★
「ーーーきましたね……」
気配探知に導かれ、着いた場所は、平均的な魔力濃度より、やや高いと思われる、森の中部にある、少し開けた場所でした。
「フィー…いや、お前は誰だ!?」
「僕は正真正銘フィーです……他の何者でもない。フィーです。まぁ…君のよく知る僕とは違うけどね…」
僕は、『どういうことだ』と、言おうとしたところで、その言葉を一度しまいました。何故ならハッキリと分かりきっているからです。
何故フィーが…フィーがこのようなことになってしまったのか……
「夢…人格……」
「うん正解。僕はフィーであっても、フィーではない。全く別の存在……
ーーー私の名は【ゾルラ・ナイトメア】悪魔の生き残りです……」
「!?……」
その瞬間。フィー…もといゾルラが不敵に笑った。黒かったフィーの目の色が紅く染まった。空気がピリピリとするような存在感に、僕は少し後退してしまった。
悪魔。かつて魔王軍に従えて居たという異界の存在。
夜になると活発になり魔力量も増える。
主に洗脳などといった精神的攻撃や死霊術…つまり霊魂魔法を得意とする厄介な化け物。
「何故…なぜ、悪魔なんかが……」
「私もこの時を待って居ましたよルフィスくん……いや、勇者の息子よ…」
フィーには似ても似つかわない口調で僕のことを勇者の息子と断言したゾルラは、ふわりと体を宙に浮かせ、こう言った。
「私は今、あの闘いにより魂だけの存在になってしまったのですよ。故に、私は体を探していたのです。私の代わりとなる存在を、そして、体に徐々に憑依していき、私のものにするのです…」
あの闘いというのは、魔王軍が進軍をした【大厄災】のことだろう。
「どういうことか……全て説明しろ」
「慌てない慌てない……元々そのつもりですよ。私はですね、とにかく自分の身体が欲しかった。私に馴染む完璧な身体を…何年もかけて身体を捜し求めた結果…遂に見つけたのだ。
私の代わりとなる物を……」
ーーーブワッ
そのとき僕は、何者かに背中を撫でられたかのような感情に陥った。
一つ一つの手の動き、仕草がとにかくウザったらしく、同時に一つのことに気がついた。
まるであいつは、人を自分の物としか見ていない。
不敵に笑う様はまるで、道端に落ちているゴミを見ているかのようだ。
そこまでしていてるのは、圧倒的な自信。自分が君より強いという象徴。
でも、この時僕は逆にラッキーだと思った。
嫌、思ってしまった
僕はまだ知らなかった。この闘いにより、僕は自分の中に込められた一つの呪いのことに気づくことに……
僕は、一瞬。殴りかかりそうになりながらも、その前に確認しないといけないことをまず、確認することにした。
「お前の狙いはなんだ?」
「復讐。勇者一行への復讐です…」
その言葉を待っていたかのような、迷いのない返答に僕は、次の質問へと移った。
「それじゃあ…夢人格というスキルは元々あるものなの?」
実はこれが一番聞きたかったことだったりする。
スキルというのは、元々、創造神から授かるものと、考えられています。そして、これまでのゾルラの発言を聞いていると、ゾルラは自分の最高の身体となるであろうフィーを見つけ、自分の魂をフィーに憑依した。
その最高の条件が、果たして夢人格というスキルを持っていることだったのか。
嫌、それは余りにも可能性が低すぎる。
そんなスキルがあることをゾルラは知っていたとしても、夢人格はユニークスキルなのだ。
それなら得意の霊魂魔法を使えば……とも思いますが……
そこでこの選択肢が登場します……
あまりにも世間離れしていて、この解答を待っていた自分を疑いたくなってしまうほどの極僅かな可能性。
「いえいえ、そんなものこの世界にはありませんし、私が元いた世界にも有りませんでしたよ。私があのスキルを創ったのです。もっとも自分が体に馴染む方法がフィー殿にスキルを与え、そのスキルの力でフィー殿の身体へと憑依することでたからねぇ…霊魂魔法でもいいのですが、それには少々意味があるもので……」
第三の選択肢…ゾルラがスキルを創った。
簡単に言うと、ゾルラは自分の力でフィーの身体の中に憑依したのではなく、
まず、フィーを悪魔が憑依できる身体にしてから、憑依した。
ということです。
そして、その際創ったスキルが【夢人格】というわけです。
つまり、ゾルラは自分で自分のためのスキルを創り、それを自分以外の者へと与えた。ということです。
「無茶苦茶ですね…」
「ふふっ……この程度で無茶苦茶などと吐かれるとは…やはり、魔王様は素晴らしいお方です……」
「魔王様…?」
「いえ、何でも有りませんよ」
少し気になる発言も残しましたが、今わかっていることはというと、とにかくヤバイ。ということです。
これまで、創造神にしか出来ないとされていたことを簡単にやってのける。つまり、創造神と同等と言っていいほどの力が必要になるわけです。
「私がフィー殿の体を見つけ、夢人格を与え、憑依したその日に、私は、勇者と、風の英雄が一緒になって暮らしている森へと向かったのです」
「それって……」
あの日だ。僕が、初めてフィーと会った日。すでにフィーはゾルラに憑依されていた。そして、その日に、フィーはゾルラに憑依された。
それに、どうやって僕のこと。それと、お父さんとお母さんのこと、さらには家の場所まで。
どうやって知ったのかはわかりませんが、こいつは只者では有りません…
「しかしですね。、スキル上の問題と、私の力量により、あのスキルでは夜、それもフィー殿が寝静まり夢を見ている夜にしか活動でき無いのです。故にフィー殿の夜の記憶は全て無いのですよ…」
さらに新情報。
ゾルラはどうやら、夜にしかその本性を現せないらしいです。それと…フィーには、夜の記憶が一切ない。
「お前には…昼の記憶があるのか?」
いつのまにか強めの口調になっていたのですが、僕はゾルラに問いただした。
「ある」
「……だったら何故、こんなことまでして復習をしたいんだ……昼の記憶があるってことは、フィーがどれだけ家族に会いたいか、そんなことも当然知っているんでしょ」
「ええ当然。ですが、その質問は少し愚問ですね……もうこの体は私の物ですよ」
しかし、ゾルラの返答は冷酷かつ無表情で、その姿は三日間ですでに何回も見たあの笑顔に満ち溢れているフィーとは百八十度違う表情でした。
「まぁ、『もう』と、言いましたが、まだ完全に馴染んでいないので今の解答は少し、適切ではなかったですが、折角ですし……ルフィスくん
ーーー闘いましょう」
紅く染まる目をギラつかせ、ゾルラはこちらを見た。この瞬間。既に、ゾルラの周りにはこれまでに見たことのないほどの魔力が漂っていた。
ゾルラは終始笑っていた。ゾルラにとってこれは勇者たちへの復讐劇の始まりでしかない。ただの前菜。
明日のことも考えると、今日で決着をつけなければなりません。
そして、勝負に結果は二つしかありません。
勝つか、負けるか。
生きるか、死ぬか。
―…
「闘いましょうか。悪魔」
「かかってきなさい。ルフィスくん」
ブクマヨロォ!